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先輩、コロシです!ver.3 交通課編  作者: 双鶴


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第4話『先輩、当事者が全員ウソついてます!』

朝イチから、交通課の相談室は騒がしかった。


事故の当事者二人が向かい合い、

その間に相馬と先輩が座っている。


相馬は汗だく。

先輩は無表情。


相馬「先輩……あの……

当事者が……全員……ウソついてます……!」


先輩「だろうな」


相馬「なんでそんな落ち着いてるんですか!?

ウソですよ!?全員ですよ!?

真実ゼロですよ!?」


先輩「事故の当事者は、基本的に全員ウソをつく」


相馬「基本なんですか!?」


先輩「人は自分を守るためにウソをつく。

それは悪意じゃない。生存本能だ」


相馬「名言出た!!」


先輩「名言じゃない。現場の常識だ」


当事者Aが叫ぶ。


当事者A「私は青信号でした!!絶対に青でした!!」


当事者Bも叫ぶ。


当事者B「いやいやいや!こっちが青でしたって!!」


相馬「先輩!

青が二つある交差点なんて存在しませんよね!?」


先輩「存在しないな」


相馬「ですよね!!」


先輩「だが、二人とも“自分は悪くない”と思ってる。

だから青になる」


相馬「心理の話ですか!?」


先輩「現場は心理戦だ」


相馬は頭を抱えた。


相馬「じゃあ、どうやって真実を見つけるんですか……?」


先輩「ウソの中に“共通点”がある。

そこが真実に近い」


相馬「探偵みたいなこと言い出した!!」


先輩「探偵より地味だぞ」


相馬「そこは否定しないんですね!!」


先輩は書類をめくりながら、淡々と質問を続ける。


先輩「お二人とも、ブレーキ音は聞こえましたか?」


当事者A「聞こえました!」


当事者B「聞こえました!」


先輩「ほら、共通点だ」


相馬「そこですか!?」


先輩「ブレーキ音があったということは、

どちらかが“気づいていた”ということだ」


相馬「……深い」


先輩「深くない。事実だ」


当事者Aが泣き出す。


当事者A「私、本当に悪気はなかったんです……!」


当事者Bも泣き出す。


当事者B「私だって……怖かったんです……!」


相馬は動揺する。


相馬「先輩!

加害者も被害者も泣いてます!!

どうしたらいいんですか!!」


先輩「事故は“誰も幸せにならない”んだ。

だからこそ、俺たちが冷静でいなきゃいけない」


相馬は息を呑んだ。


相馬「……先輩、なんか今日の先輩、いつもより哲学多くないですか?」


先輩「寝不足だと哲学が増える」


相馬「寝不足の副作用なんですか!?」


先輩「そうだ」


そのとき、当事者Aが震える声で言った。


当事者A「……私、もしかしたら黄色だったかもしれません」


当事者Bもつぶやく。


当事者B「……私も、完全に青だったかは……」


相馬「先輩!

ウソが剥がれてきました!!」


先輩「ウソは“責める”ものじゃない。

“ほどく”ものだ」


相馬「名言出た!!」


先輩「名言じゃない。事実だ」


相馬は深くうなずいた。


相馬「……先輩。

俺、白バイに乗りたいけど……

こういう“人の気持ち”を扱う仕事も、悪くないですね」


先輩「白バイに乗りたいなら、なおさらだ。

白バイは“人の人生の分岐点”に一番早く着く」


相馬「……重い」


先輩「現場はいつも重い。

だから、お前みたいな奴が必要なんだよ」


相馬は目を見開いた。


相馬「……先輩、それ……褒めてます?」


先輩「寝不足だからな」


相馬「副作用で褒めないでください!!」


だが相馬の胸には、確かに何かが灯っていた。


白バイへの憧れは消えない。

だが、今日またひとつ――

**“人はウソをつく。でも、その奥に本音がある”**

という現実が刻まれた。


こうして相馬の4日目は、

ウソと涙と哲学にまみれながらも、

確かな成長の一歩となった。


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