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先輩、コロシです!ver.3 交通課編  作者: 双鶴


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3/11

第3話『先輩、ドラレコって万能じゃないんですか?』

事故現場の片付けが終わり、署に戻ったのは昼前だった。


相馬は椅子に座るなり、机に突っ伏した。


相馬「先輩……俺、今日だけで人生の三倍くらい疲れました……」


先輩「三倍で済んでよかったな。新人の初日は十倍疲れるやつもいる」


相馬「その人、今どうしてるんですか?」


先輩「辞めた」


相馬「重い話やめてください!!」


先輩はコーヒーをすすりながら、淡々と書類を整理している。


そのとき、当事者から提出されたドラレコ映像が届いた。


先輩「よし、相馬。ドラレコ確認するぞ」


相馬「来ましたね、真実の瞬間!

これで全部わかるんですよね!」


先輩「……お前、ドラレコを神か何かだと思ってないか?」


相馬「え、違うんですか?」


先輩「違う」


相馬「えっ」


先輩は映像を再生しながら言った。


先輩「ドラレコは“事実”は映す。

だが、“真実”は映さない」


相馬「名言出た!!」


先輩「名言じゃない。現場の常識だ」


映像には、交差点に進入する車、急に飛び出す自転車、ブレーキ音――

だが、肝心の“ぶつかった瞬間”が映っていない。


相馬「先輩!肝心なところが切れてます!」


先輩「だろうな」


相馬「なんでそんな落ち着いてるんですか!?」


先輩「ドラレコは前しか映さない。

横から来たものは映らない。

当たり前だろ」


相馬「当たり前ですけど!当たり前ですけど!!

なんか納得できないです!!」


先輩「納得しなくていい。現実を知れ」


相馬は頭を抱えた。


相馬「じゃあ、どうやって判断するんですか……?」


先輩「人の話を聞く。現場を見る。痕跡を読む。

ドラレコは“補助”だ。

お前みたいにドラレコ信者が一番危ない」


相馬「信者じゃないです!ただのファンです!」


先輩「変わらん」


そのとき、別の当事者が提出したドラレコ映像も届いた。


相馬「よし!今度こそ決定的瞬間が!」


再生すると――


相馬「……先輩、これ、空しか映ってません」


先輩「ドラレコの角度が悪いな」


相馬「なんで空撮してるんですか!?ドローンですか!?」


先輩「ドラレコの取り付け位置が悪いとこうなる」


相馬「そんなのアリですか!!」


先輩「アリだ。現場は“アリ”だらけだ」


相馬は机に突っ伏した。


相馬「先輩……俺、白バイ乗る前に心が折れそうです……」


先輩「折れてもいい。

ただし、折れたままにするな。

事故処理は“折れた心を立て直す仕事”だ」


相馬は顔を上げた。


相馬「……深いです」


先輩「深くない。事実だ」


そのとき、無線が鳴る。


『交通課、至急。ドラレコ映像と証言が食い違う件で当事者が署に来庁』


相馬「え、またですか!?」


先輩「行くぞ。

ドラレコより厄介なのは“人間”だ」


相馬は立ち上がり、深呼吸した。


相馬「……よし。

俺、ドラレコに頼らず、ちゃんと人を見ます」


先輩「その意気だ。

白バイに乗りたいなら、まず“人間”を理解しろ」


相馬は小さくうなずいた。


白バイへの憧れはまだ強い。

だが、今日またひとつ――

**“現場は機械じゃなく、人間でできている”**

という現実が胸に刻まれた。


こうして相馬の3日目は、

ドラレコと現実のギャップに振り回されながらも、

確かな成長の一歩となった。


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