嫌い
「は?今なんて言った、ユーゴ」
「だから、予言の子に大量の雑用を任されたから舞手探しは協力できる余裕がない」
家に帰ってくるなり告げられたそれに俺は思わず頭を抱えた。
「何でそんなことになるんだ……!」
「そんなの俺が聞きたい」
ユーゴは一切こっちを見ずに、あぐらをかきながら地面で何かカチャカチャと作業をしてる。
「何してんの?」
「壊れた剣のレプリカ治してる。材料も取りに行かないとならないから、尚更時間がない」
その手つきは荒くたまにガコッだかギリッだか、金属のぶつかる音が聞こえた。
まだだ。
またいつもの如くうまくいかないとことがあるとイライラする。そして、その態度を隠そうともしない。
俺はこいつのこういうところが嫌いだ。
「断れよ。予言の子にそこまで権限ないだろ」
「はぁ?無理に決まってる。このイベントの主役だぞ。あいつの頼みが第一優先だ」
……へぇ。
「俺よりあいつの頼み優先すんの?」
その問いにユーゴは一泊間を置いた。
口を開きかけたと思えばまた閉じて、そしてまた開く。
「……別にそういう話じゃない」
いやいや、そういうことだろ。
はっきり聞こえたぞ、『あいつの頼みが第一優先』って。
「気にくわねぇいい草しやがって」
「おい、今なんかいったか?」
「いや。ただ、お前も随分あいつの従順な犬になり下がったなぁって。さすが元『腰抜け王子』」
ドゴっ!
ユーゴが拳を床に打ちつけた。
その衝撃は造りの古いこの家によく響く。
「悪い。よく聞こえなかったわ。もう一回言ってみろ」
おぉー、怖い怖い。
そんな鋭い目で見ないでくれよ、魔族の王子様。
自慢の顔が台無しだぞ。
俺は肩をすくめながら言った。
「何に怒ってんの?従順な犬って言われたこと?それとも腰抜け王子?」
「チッ」
やっとユーゴは作業の手を止めた。
持っていたものを乱暴に地面へ放ると、立ち上がって俺の胸ぐらを掴む。
壁に寄りかかってた俺の体はその力に引き寄せられ若干持ち上げられる。
「何が気に入らない」
「何の話だ?」
「俺が予言の子を優先したことに拗ねてんのか?」
「よくわかってんじゃねーか」
「はっ。何だそれ。常に俺がお前のために動くとでも?」
「……実際そうだろ」
「いいや、違うな。」
そう言ってユーゴは俺から手を離し、代わりに俺の顔を鷲掴んだ。
さっきより顔が近づき耳元で声が聞こえる。
「忘れるな。俺らは友達でも親友でも、主従関係でも恋人でもない。ただ利害関係が一致しただけだ。」
………………は?
利害関係の一致だ?
「何言って………」
「もういい。今日はこれから材料を取りに行く。エアフェスタまではこの家にも帰らない」
「は?おい待てよ、話はまだ……」
ユーゴは手元で作業してた道具やら何やらを手にしそのままどこかへ移転した。
利害関係の一致って……。
「あいつ、そんなふうに思ってやがったのか……?」
行き場を失った、引き留めようと伸ばした手をグッと握りしめた。




