困ります
「ハァッッ、!」
「!?」
ちょうど気持ちが乗ってきたタイミングでジジイが急に奇声を発した。
今度は何だ?
もしやこうやって油断させといて必殺技を繰り出す気か?!
鋭く目を細めてジジイの手足全てに注視する。
カラン。
急に剣を落とした。
かと思えば、手を広げてこちらに突進してくる。
グワシッ
目を向いて呼吸を荒らげながら両二の腕を掴んでくるそいつに俺は思わず喉からヒッと悲鳴が出た。
「君ィっ!!!その年でその技ができるなんてどんな鍛錬を、うっ!」
反射で剣を首に振り下ろした。
ジジイは地面に倒れ伏す。
いや、これ俺悪くないよな?
正しい判断だろ。
「反射神経も素晴らしい……。君、名前はなんという」
教えたくねぇ。
「レイだよ、父さん」
ガゼル……!
お前ってほんともう……もう!
「そうか……。レイ君、何も言わず急に切り掛かって悪かった。侵入者かと思ってな」
もうさっきの続きをするつもりはないらしいその様子を見て、俺は剣を下ろした。
「……まあそれは別にいいんだけど」
この髪色だし仕方ない。
仕方なくないのはその後の方なんだが。
「何となく動きが剣舞できそうだなぁと吹っ掛けてみたら、案の定経験者の動きをし出して、面白くなって見てたんだが」
「……はぁ」
「最後の君のあの技、俺は個人的に散華の一筆と読んでいるが、あれは動きの軌道、速度、角度が完全に均一じゃないとできない。相当な熟練者と見受ける」
…………待て待て待て、あれ別にそこまで難しくないぞ。
人間の基準だとそうなんのか?
「頼む。どうか君に来週のエアフェスタの剣舞に出て欲しい」
スッと頭を下げられて、俺は顔を引き攣らせた。
勘弁してくれよほんと……。
「父さん、ちょっと強引すぎ……」
「シッ。こういうとき大事なのは勢いだ。覚えとけガゼル」
聞こえてんだよバカ親子。
「悪いが本当に無理だ。そんなに丁寧に頼まれて困る。他にもいっぱい舞手がいるじゃねぇか。こいつらにやらせてやれよ」
「恥ずかしいながらここの者じゃちょっと……いや大分力不足というか……」
気まずそう生徒達の方へ視線をやるジジイに流されて俺もそっちを見る。
途端に生徒の顔がこわばった。
……確かに、パッと見た感じ強いやつは居なさそうだな。
「それに、俺は他でもない君に舞って欲しい。君にしかできない」
「……さっきの技見ただけのくせによく言う」
「それだけじゃない。あの技も凄いが君には人を魅了する何かを持ってる」
「何だよ何かって。まさか顔とかい言うつもりじゃねぇだろうな」
「顔もそうなんだが……何というか……」
………………。
黙り込むなよ。
気まずいって。
思わず舌打ちを漏らすと、ガゼルがビクッと体を揺らした。
「……もういい。わかった。そこまで言うなら一旦考えといてやる」
「!?」
もう舞手探しはユーゴに任せよう。
「いいの!?レイ君、あんなに嫌がってたのに」
「まだ舞うって決めたわけじゃねぇから勘違いすんな。他の舞手頑張って探しとけ」




