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月と太陽 〜人類の希望は問題児〜  作者: なぎ
1.エアフェスタ編
7/21

曲者


稽古場の入り口へ着くと、中から微かにシャラ、シャランと鈴の音がした。


その優しい音に俺はスッと目を閉じる。


………………音ちっさ。


こんなに鳴らせないとなるともう基礎からできてないだろ。


出だしから気を落としつつ、同時に指導者は何を教えてんだと若干の苛立ちがわいた。


しかし、爆音の怒号がそれを浮き飛ばす。


「鈴の音小さすぎるだろぉが!!もっとちゃんと振らんかい!!!」


うるさ!

鼓膜がっ……!


「父さーんうるさーい!入るよー!」


そう言いながらガゼルは稽古場のドアをガラッと開けた。


そこは広々とした畳の部屋で、生徒らしき人が壁に沿ってずらっと座っていた。


そしてさっきの声の主だろう人物は木刀を肩に担いで1人の生徒の剣舞を吟味している。


ガゼルより少し濃い茶髪に白髪の混じった中年の男は、その厳つい顔をこたらに向けて、目線は俺にとまった。


シュッ


一瞬だった。


「……っぶねぇ」


音もなく目の前から消えたジジイは俺の背後からその木刀を振り下ろした。


間一髪で避けたはいいものの、そのままそのジジイは追撃する。


動作ひとつひとつが綺麗で音もなく気配も感じない。


「おい、ジジイ、俺は怪しい者じゃ……」


ドンッ


ジジイは一歩踏み出した。


シュッ


俺のこめかみをかすった。


あーもう!


仕方なく壁に飾ってる木刀を手に取って、また今にも振り下ろさんとするその木刀を受け流す。


ガゼルの奴もなんとか言えよ!


チラッと横を見るとガゼルは口を開けたまま固まっていた。


(アホヅラ晒しやがって。ほんと使えねぇ……)


「よそ見をするんじゃない。もっと真剣にやれ」


「はぁ?」


やっと口を開いたかといえばなんだ。

真剣にやれ?

今自分が何させられてるかもわかんねぇのに?


ジジイは構わず続ける。


ただ、その一筋はさっきよりも重くはなかった。

間合いも一定だ。


(おいおい、勘弁してくれよ)


こんなのまるで……。


(連舞じゃねぇか)


連舞。

簡単にいえば2人で舞う剣舞のことだ。

一騎打ちをパフォーマンス化してお互いテンポを合わせないといけないから普通の剣舞よりも技術がいる。


俺からしたら楽勝だけど。


(ダメだ、癖で体が動く)


真剣でもない、魔法も使わない、誰に向けて舞うわけでもない、精神的に余裕のある今の状態なら尚更。


体は勝手にジジイの振りに呼応して、姿勢は糸を張ったようにピンと伸び足の運びは軽くなっていく。


軽い木刀は手の中でよく回る。


(あー、楽しい……)


そーだ。

剣舞ってやっぱ、できたら楽しいもんだったなぁ。

初めの頃は食べるのも忘れて夢中でやってたっけ。


「えっ」


ふと生徒の誰かが声を漏らした。

空中に一瞬、太刀筋が花のように浮かんで見えたからだ。


気のせいかと一瞬目を擦ってもう一度注視する。


今度はさらにはっきりと、剣先の残光が、大きな睡蓮を写し出した。


「すごい……」





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