無理です
「端折りすぎだろ。ちゃんと説明しろよ」
『君が早く言えって言ったんじゃないか!』
「あ?」
『スミマセン』
「そういうのいいから説明」
『ハイッ』
(……レイの学院生活が透けて見てるな)
ユーゴは聞き耳を立てながら通話相手が気の毒になった。
『俺の家が剣舞を代々伝えている名家ってのは知ってるよね』
「知らね」
『……なんだ。で、今回の祭りは本当なら家が選んだプロに舞わせる予定だったんだけど、彼女怪我しちゃってしばらくできなくなって。でも、他の人は俺の父が納得できないから出せないって』
「だから俺に?意味わかんねぇ。俺は顔がいいだけの一般ピーポーだぞ」
『……実は、その、前レイ君が授業の時ちょっと剣舞舞ってるの見てたんだ俺』
「…………」
『正直君、今回する予定だったプロより上手いと思う。俺は舞うのは下手だけど見る目はあるんだ。君なら……』
「剣舞ってのは、お前も知っての通り、誰かにに向ける物だ。剣舞中はその相手に全てを捧げる気持ちでいなきゃいけない」
『……うん』
「今回は特に、予言の子を祭るイベントで、なおさら。俺は誰かに捧げるとか好きじゃねぇんだよ。技術は一丁前でもわかるやつが見たらそこに敬意がないことくらい分かる。炎上して終わるだけだ。だから俺はやめとけ」
『…………』
ガゼルはしばらく何も言わなかった。
俺も何も言わない。
………………。
切っていいか?これ。
でも確か電話ってのはかけてきたほうが切るのが礼儀だよな?
(なぁユーゴ。これ切っていいと思うか?)
(いいわけねぇだろ!馬鹿かお前)
(誰が馬鹿だ!)
『……わかったよ』
そうだ、まだ繋がってたんだった。
「わかったならもう切……」
『君が予言の子に敬意を払えるようにしたらいいんだね!?任せて!特に僕ら学院生はみんな予言の子大好きだから他の第三隊メンバーにもお願いして君に予言の子の良さを』
ブツッ
………………。
無言で俺とユーゴは見つめ合う。
「………………吐きそう」
「無理もない」
ユーゴはそういいながらそっと吐き袋を渡して俺の背中を優しくさすった。
「あー、でも……。追い打ちをかけるようで悪いが、剣舞が中止になると魔剣も手に入れられなくなるから何がなんでも代わりの舞手が必要だってことは伝えておく」
「俺に剣舞の数十分間、予言の子に全て捧げろってのか!?無理。絶対に無理。なんならそのまま刺す自信あるわ」
「あり得そうで怖ぇよ」
てかそもそも、剣舞自体いい思い出がないんだよな……。
「あっ、でも俺魔剣盗むって任務があったんだったわ。これじゃ剣舞は舞えねぇーなー」
「剣舞で使う剣だから、舞手になった方が格段に盗みやすくなると思うぞ」
「ぐっ、」
度重なるショックに俺は崩れ落ちた。
「……でも、それでも俺は無理だ。あいつのために舞うとか……。誰か他のやつを探す方向でいくぞ」
ユーゴは何かいいかけたが口には出さなかった。
鑑賞してた側のお前にはわかんねぇだろうよ。
感情全て取り繕って舞う剣舞がどれほど苦痛か。
「……そうだな。俺も正直お前があいつのために舞ってるの見たくない。月のコネで色々あたってみるわ」
「わかった。俺は一回ガゼルの家に行って舞手候補見てくる。原石がいるかもしんねぇ」
あと俺に予言の子の良さを語るなんていうバカなこともやめさせる。




