新任務
「それにしても、お前がその格好してんの久しぶりに見たな。学院はどんな感じだ?任務は上手くいってんのか?」
「んー、まあぼちぼち」
訳あって俺は今学院に潜入中だ。
太陽の仕事は平日中、コピーの俺に任せてるが、今日みたいな休みはこっちに戻ってくる。
「レイ」
布団に寝そべってるとユーゴが上から覗き込んできた。
「何?」
「お前確か1週間休みだったよな?」
「そうだけど……何?どっか行くの?」
「いや、残念ながら今回お前には重大な任務がある。」
「またかよ。今度は何?」
「盗み」
盗み、ねぇ……。
「何を?またあのクローネのケーキとか言ったらぶん殴るぞ」
高級ケーキ屋で起きたゴタゴタはだいぶ記憶に新しい。
しかも盗ってきたの俺なのにこいつ全部食いやがった。多分一生恨む。
「違う。魔剣だ。今週末の予言の子を祭るエアフェストで剣舞を披露する儀式があるだろ?その剣を盗め」
……ん?
「……エアフェスト?」
「おい、まさか知らないとかいうなよ?散々今まで会議してきて……あー、そうか。さてはコピーと情報共有してないな?」
「……てへ」
「きっしょい顔すんな」
「見えてねぇくせに!」
そう言って俺は頭に被りっぱなしだったベールをユーゴめがけて投げつけた。
くしゃっと傷んだ髪が軋む。
「冗談だって。お前顔だけが取り柄だもんな」
「はっ、何だそれ。もっと素直に褒めろよ」
俺の顔もそれ以外も良過ぎて認めたくないんだろ。
まあしょうがねぇことだ。
「いやぁ、美しいって罪だなぁ」
「エアフェストってのは」
聞けよ。
「まあさっきも言った通り予言の子ばんざーいっていってお祭りすんだよ。俺とお前は予言の子の護衛」
「へぇ?あのガキ、俺を護衛なんかに使おうとはいい度胸だ」
「言っとくけど同い年だからな」
「それはお前もだろ」
「俺は自分の年齢弁えてるからいいんだよ」
「へー、そうですかそうですか。」
予言の子のを祭るねぇ……。
正直めちゃくちゃにしてやりたい祭りだな。
「そんな不貞腐れた顔すんなって。モチベ上がるいい情報を教えてやる」
「あ?」
ここには俺らしかいないのに、ユーゴは秘密ごとを話すかのように俺の耳にそっと口を近づけて言った。
『その魔剣、なんでもあの気色悪い予言の子の魔法を切れるんだってよ』
「…………まじ?」
「おおまじ。それであいつの心臓突き刺してやろうぜ」
頭によぎったのは、あいつの数年前の下卑た満面の笑み。
あの瞬間俺は全てを奪われた。
顔を覆って俺だと気づかれないよう過ごしてきたが、太陽として接しながらもチラチラ見えるあいつの笑顔を見て何度殺してやりたいと思ったか。
やっと殺せる。
「……やばい、興奮してきた」
「ハハ、まだ早えーって。剣盗ってからも、あいつ殺すために俺らにはすることがまだ山ほどあるんだからな?あと、学院の任務もまだ始まったばっかだろ」
「分かってるって。待ち切れないだけだ」
「……俺のぶんもとっておけよ?あいつには俺も貸しがある」
「気が向いたらな」
「は?おい、誰のおかげでこの情報……」
プルルルルルル。
ふとポケットの魔石が鳴り出した。
「悪い、電話だ。ちょっとでる」
「……どーぞ」
狭いこの家では1人になれる場所なんてもんもないからユーゴに背を向けた形で魔石を耳に近づける。
「誰?」
『もしもし、レイ?』
「なんだ、ガゼルか。切るぞ」
『ええええ、ちょ、ちょっと!まだ何も話してないよ!』
裏でユーゴが『学院の奴?』って口パクしてるのが見えた。
小さく頷いておく。
「じゃあとっとと話せ。今人といるんだよ」
『え、えーと、あの、どこから説明したらいいか』
「チッ」
『ひっ、ご、ごめん!端的にいうとその、君に今週のエアフェストで剣舞の舞手になって欲しいんだ!』
「「……………………は?」」




