仲直り
控室に入った途端、ユーゴは声を荒らげた。
「何やってんだ……!?」
ガラスのせいで切れてしまった手を取って魔法で治すユーゴ。
そして、染めていた赤が落ちてしまった部分の髪をまた赤に染めはじめた。
そのどれもが優しい手つきで、不覚にも目の奥が熱くなる。
「何だよ、今更……。あの偽物を選んだお前と話すことなんか何もねぇ」
「違う。俺はいつだってお前を選んでる」
……は?
こいつどの口で……!
「俺の頼み断っといてよく言うな。電話もすぐ切りやがったくせに」
「あれだって結局はお前のためだ。毎回俺を選んでくれないのはレイの方だろ」
「何の話だ」
「俺のことなんて考えずに、どうせ予言の子を殺そうとでも思ってたんだろ?」
「…………」
図星を刺されて思わず言葉に詰まった。
そんな俺を見てユーゴは深くため息をつく。
「お前が死ねば俺も後を追うってこと、分かってるくせに。だから俺を選べって言ってんのに」
悲しそうな声でそういうユーゴに、頭のどっかがブチッとキレた。
「お前が突き放したんだろ?!利害関係が一致しただけとか言って!」
「だってお前が……!!」
そこでユーゴはぐっと言葉を止めた。
何か言いたそうに口を開いては閉じるを繰り返し、やっと出てきたのは小さな声の謝罪だった。
「……それは、悪かったよ」
「なんだ、悪いって思ってたのかよ」
「俺がキレたときの言葉が信用ならないことくらい知ってるだろ。それをお前従順な犬とか腰抜け王子とか煽ってきやがって」
「だって事実だしって、イテテテ!」
グイーと染めかけの髪を引っ張られ頭をのけぞらせた。
バチっとユーゴと目が合う。
しん……。
束の間の静寂。
耐えきれず切り出したのは俺の方だった。
「悪いって思ってたならなんでさっきの通信でいってくんねぇの?俺あれで結構萎えたんだけど」
「…………お前が助けてって縋り付いてくるの待ってたんだよ」
「はぁ?」
「それなのにお前ときたら、こんな誰にも見えないとこで壊れかけやがって」
(誰のせいだと思ってんだこの野郎)
ペシっ。
「ほら、染め終わったぞ」
バキバキに割れた鏡で確認すると、髪色は確かにすっかり元に戻っていた。
「お前、意外と赤似合うよな」
「何だ?バカにしてんのか?」
「おう」
「このやろ」
…………まあ、確かに?
赤も意外と悪くない。
「さて、レイ」
ガシッ。
俺の両肩をつかむユーゴ。
顔近っ。
「一応俺にも悪いとこはあった。だから――俺をほっといてあいつを殺そうと思ったことは許してやる」
「上からだな」
「でも」
ゴツ
額をくっつけ、いや、打ち付けられる。
ユーゴの顔は真剣だ。
「次は絶対間違えるな」
「……?次?」
コンコンコン
ノックの音が響く。
慌ててユーゴを引き剥がし扉の近くへ行った。
ガチャ。
小さく開けてスッと顔だけだすと、そこにいたのはガゼルだった。
「なんだ」
「そろそろ時間だからメイクとか衣装の準備をしに行った方がいいと思うよ」
「あー、分かった。すぐ行く」
一瞬で会話は終わったが、ドアを閉めて後ろを振り向くと、もうすでにそこにユーゴの姿はなかった。
何も言わずに転移しやがったな、アイツ。




