変人というより狂人
ダッ、ダッ、ダッ、バン!!
俺はトイレの個室へ逃げ込んだ。
ユーゴのことや剣舞、予言の子……。
のしかかってくるものが多すぎてとてもじゃないがあの祭りの場にはいられない。
「なんだよ、選べって……」
引っかかるのはユーゴの呟いたあの一言。
『お前が俺を選べよ』
選ぶ……そういや前にも同じようなことを言ってたような……。
なんだっけ。
ドンドンドンドンドン!
トイレのドアを乱暴に叩く音で考えてたことが一旦中断された。
「な、なんだ!?」
「開けて開けて開けて!漏れるぅーーー!!!」
「!?」
ガチャ
慌ててドアを開けるとその人物は押し除けるようにトイレに入っていった。
「……ん?お前、フォーレン?」
確か第三小隊で同じ一年の……。
ズボっ
フォーレンは返事をせずズボンとパンツを下ろした。
…………待て。
なんでドアを閉めない。
お前のゾウさんが丸見えだぞ。
「おいちょっと、お前ドアを……」
「ふんっ!!」
ブリブリブリブリ――――。
「……うそだろ」
その後もフォーレンはお構いなく音を立てて扉を開けっぱなしにしたまま用を足した。
見ていられず背を向けて耳を塞ぐが、それすらも意味がないほどの爆音。
変人って聞いたけど、これはもはや狂人じゃねぇか。
「ふぅー。スッキリした〜」
「……まさかとは思うがお前、今までもドア開けっぱなしでトイレしてんのか?」
「えーなわけないじゃん。さっきは時間なくて仕方なくだよー。面白いこと言うねレオンくん」
「誰だよレオンって……イタッ。……ちょっと待て今お前洗ってない手で叩きやがったな!?」
「よし!そろそろ予言の子の挨拶が始まるよ!戻ろレオン!」
全く聞かないフォーレンはそのまま手も洗わず外へ出ようとする。
ガシッと掴まれた右腕にゾワッと鳥肌が浮かんだ。
「いや俺はいい、っぐ……」
こいつ力強……!
半引きずり出されるようにトイレの外へでた俺は再び人混みに飲まれた。
フォーレンはトイレを出るなりどっか行くきやがるし。
クソが。あいつのスピーチなんか聞きたくねぇって。
人の進む方へと流されていき、たどり着いたのは大きな広場。
その中心にはマイクやライトなどが用意されて、記者たちもズラリと並んでいる。
どうやらここでスピーチするみてぇだ。
(どこかこの人混みから抜けられる所は……)
辺りを見渡す。
学院の生徒や屋台の店員、通りすがりに見かけた奴の顔が揃っている。
第三小隊の連中の姿も見えた。
ここにいる全員……いや、人間は全て予言の子の狂人者だ。
(それが洗脳だってことも知らないで、馬鹿な奴らだ……)
この状態でここから立ち去れば目立つ。
もう大人しく聞くしかないみたいだ。
俺が諦めた時、月もといユーゴと俺のコピー、太陽の姿が見えた。
その後ろからゆっくりとマイクへ向かうのは、ベールに包まれた予言の子だ。
パサッ
予言の子は顔にかかっていたベールをとる。
現れたのは彼のキラキラと輝く金色の髪に、吸い込まれそうなほど深い紫色の瞳。
(……やばい、吐きそう)




