不安定な足場
(クソ、よりに寄ってこいつらかよ……)
先輩とガゼルの奮闘によりようやく解放されたレイは首元を正しながら内心悪態をついた。
地面に落ちていたリンゴを拾ったら誰かが買ったやつだったらしく吹っ飛ばされて、近くにいた自分以外のほとんどが揃ってる第三小隊メンバーの集まりに激突……。
災難すぎだろ。
ちゃっちゃと別れてユーゴと連絡を取らないと。
「にしても、なんでお前が吹っ飛んで来るんだ?なんかあったか?」
「別に」
「おぉぅ、タメ口ぃ」
「……チッ」
「え、今舌打ちした!?俺先輩だからな?!」
金髪と青のグラデーション……。
確かダウトだったか?
お人好しなのか空気が読めないのか知らねぇけどやたら絡んでくるな。鬱陶しい。
無視して横を通り過ぎる。
するとすぐに肩を掴まれた。
「おいおい、どこ行くんだよ。せっかく会ったんだし一緒に回ろうぜ」
…………ガチでこいつ空気読めねぇな。
そこの先輩らとハウルの顔ちゃんと見ろよ。
「嫌だ。そんな仲じゃねぇだろ」
「そんなのまだ会って間もないんだから当たり前だ。これから親睦を深めて……」
「俺はお前らと関わる気ねぇから。構ってくんな」
パッ。
肩に乗っていた手を振り解き足を進める。
ダウトは困惑した顔を見せた。
「なんだあいつ……」
「僕らが開いた新歓にも来なかったじゃん。そういう子なんでしょ。赤髪だし」
レイの背中を見続けるリオンの目は冷たく、ハウルも鋭く睨みつけていた。
場所は変わり、レイは人だかりから離れた物陰にしゃがみ込む。
ポケットから取り出したのは緑の魔石。
「………………」
そういや、この魔石ユーゴの目と同じ色だな……。
じっとその緑を見つめると、光沢とともに自分の顔が反射して見えた。
……ひっどい顔。
「…………ユーゴ、聞こえるか?」
口を寄せなるべく周りに聞こえないようつぶやく。
応答はない。
が、かすかにカッ、カッ、カッと足音が聞こえる。
場所を移動しているんだろう。
少し経ってから返事がきた。
「聞こえてるよ。で、何の用だ?」
「魔剣、どうやって盗めばいい?レプリカとか用意してる癖に全く指示出してこなかっただろ」
正直こいつに言いたいことは他に山ほどあるが、今は一旦魔剣に集中しなければならない。
昔からそうだ。
いくら喧嘩しようが任せられた仕事はきっちりこなす。
お互いその点において信頼は揺るぎない。
「………………」
「……ユーゴ?」
「……そのことならお前はもう何もしなくていい。魔剣をしまう箱に転送魔法をかけた。レプリカももう仕込んである。あとは魔剣をしまうだけでこっちに転送される仕組みだ」
…………は?
「この短期間でそこまでやったのか?」
「あぁ」
「でもお前、レプリカの修復と予言の子に任された任務で忙しかったて……」
「………………」
なんだよ。
なんで黙ってんだよ。
「利害関係の一致っていったのはお前の方だろぉが!!仕事すら与えねぇのか?!だったら俺らの関係ってなんなんだよ!!」
いろんな感情がブワッと押し寄せてくる。
周囲に気づかれるかもしれないということも今は考えられない。
「なんとか言えよ!!」
「そんなの、お前が……!」
ユーゴもさっきのすました態度は剥がれ落ち、同じく声を荒らげる。
が、途中でぐっとそれを押し込んで、深く息を吸った。
そして先ほどとは打って変わって沈んだ声で、少し苛立ちを滲ませながら呟いた。
「お前が俺を選べよ……」
「……は?どういう意味だ」
「……悪い。予言の子に呼ばれたからもういく」
まただ。
またこいつは俺より予言の子を優先する。




