もういい
「あー、クソ!!!ムカつく!!あの腐れ〇〇が!」
「ヒッ」
場所は再びガゼルの稽古場。
休憩時間にいきなり叫び出したレイの側をガゼルはピュッと飛び退いた。
何で俺があいつのことでこんな悩んでんの?
女かよ。
自分が気持ちわりーわ。
「レ、レイくん?」
いやでもおかしいのあいつだろ。
何だよ利害関係の一致って。
お前が言ったんだろ。
『もし失敗したら全部ぶっ壊して一緒に死のう』って。
利害関係が一致しただけのやつにそんなクソ重発言するか?普通。
あー、あいつはフツーじゃねぇーって?
そうだな、魔族の王子様がフツーなわけねぇわな。
「え、えーと……」
「あいつの機嫌が悪い時の発言が信用なんねぇーのは分かってるけどこれは流石に……ブツブツブツブツ――――――」
「ダメだ、レイくんが壊れた。父さんが勝手にレイくんに決定するって書類出しちゃったから……」
「す、すまない。本部の方に催促されて思わず……」
地面にあぐらをかいて座り1人ぶつぶつつぶやくレイを親子はハラハラ見つめていた。
「それはもういい。もうどうでもいい」
「あっ、戻った?」
「お前ら親子の土下座で勘弁してやるよ」
「「……え?」」
もう書類を出してしまったからには太陽の権力を使って候補を探すこともできない。
俺がやるしかないわけだが、もうどうでも良くなってきた。
屈辱を受けようが、敬意がないのがバレようが知ったこっちゃない。
これは俺の任務だ。
俺1人で何とかできる。
「ど、どけ……」
「そ、そんなことよりレイくん。君の振り付けの案見たんだけど、ちょっと難しすぎない?剣舞中はやっぱり余裕を見せた方が……」
「いいんだよそれで」
余裕がない方が何も考えなくて済む。
「そっか……。いやー、それにしても楽しみだな。第三小隊のメンバーがみたらびっくりするだろうね。特にハウルなんか……」
「そのことだが、俺は顔を隠すベールでもつけて舞おうと思う。学院のやつにバレるのは厄介だ」
ガゼルはえっと目を見開いた。
「もったいないよ!綺麗な顔だし、ありのまま見せた方が絶対映えるって」
「でも赤髪は隠すんだろ?」
ハズレ色の赤髪は見せるわけにはいかねぇもんな。
「……それは」
「ちょっとくらい融通きかせてくれ。こっちにも事情ってもんがある」
そばで黙って聞いていたジジイはすくっと立ち上がり何か言おうとするガゼルを遮って口を開いた
「分かった。無理を言ったのは我々の方だ。君の正体は本部以外の人に公にしないようにしよう」
そうだ。
俺が何かしでかそうが責められるのはこの親子。
予言の子なんかスルーで舞ってやる。




