表
聖塔に数ある会議室の中で、最も大きな一室。
エアフェスタに向けて今までの会議より大規模な場が設けられた。
しかし、皆天井の隅を見つめて放心していた。
そんな彼らの中心にいるのは言わずもがな。
「ほぉ。随分杜撰な提案だな。それを実際にするのは誰だと思っているんだ?」
「杜撰?酷い言いようですねぇ。細かい指示だとやりにくいと思っての配慮でだったんですが……やっぱり貴方には伝わらなかったか」
月と太陽だ。
わざわざ1番遠く席を離されているにも関わらず、立ち上がって口論を続けている。
そんな2人を見て、隅の方にいた新人記者、ヒロが思わず小声で隣の先輩に声をかけた。
「先輩、あの2人っていつもこんな感じなんすか?」
「いや、いつもはこんなに喋らないな……。お互い全く会話しないのも珍しくないくらいだ」
「えー、めちゃくちゃ言い合ってますけど」
「あのお二人があんなふうに感情を出すのは珍しい。特に太陽様がこんなに批判的になるなんて……。普段はもっとふわふわした口調に皮肉を混ぜる程度だったのに」
(それはそれでどうなんだ……)
新人記者はそう思いつつも口には出さなかった。
「おい、お前ら記者か?」
先輩の隣の男が会話に割って入る。
その無遠慮さと、周囲に聞こえてしまいそうな声の大きさに思わず眉を顰める。
「だったら何ですか?」
「あの太陽の喧嘩の様子、記事に書いてくれよ」
「今回の会議を記事にすることは許可されていないのでそれはできかねます。あと、どうして太陽様だけ?」
「いや、だって今代のあいつ酷いだろ?顔も出さねえしメディアにも全然出ねえし。いつもヘラヘラそれらしいことしか言わねえ」
今もなお口論中の太陽を見据え、その男は大きな声でそう言った。
ヒロは焦ってワタワタし、見かねた先輩は「ちょっと、もう少し静かに……」
と声をかけるが全く聞かず続ける。
「時期太陽に予言の子様がなるってもう神託降ってんだから、さっさと辞めればいいものを……」
「お、おい」
ポン
「あ?誰……ヒッ」
その男は肩に手を置かれて振り返る。
相手の顔を見た途端、黙り込んだ。
「ラズ様っ……」
彼は特に何も言わずそっと唇に人差し指を当てるだけだった。
しかしその目に温度は一切ない。
「も、申し訳ありませんでした……」
ーーーーーーーーー
ふー。
会議が終わり自室に戻った途端レイは大きくため息を吐きながらベッドにダイブした。
「太陽様、流石にやりすぎですよ。周囲からどう見られるかわかっているでしょう」
「あー、そうだな……」
「そうだな、じゃないですよ。何で今日はそんなに不機嫌なんですか?」
「何で……」
『利害関係が一致しただけだ』
昨日のあいつの言葉がずっと脳に反響している。
そしてそのたった一言にここまで頭を悩ませる自分自身も気持ち悪い。
「……別に何もねえよ」
「……そうですか」
ラズはそう言って口を閉じた。




