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土と縄と  作者: 老川


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第4話

 客間に戻った澪はカバンを下ろすと、カメラを取り出し記録カードをパソコンに差し込んだ。撮影された映像は集落の外れの道を進んでいく様子から始まっている。


 異変が起きたのはそのあとだった。道を進んでいき小屋が映った瞬間、映像にわずかなノイズが混ざった。カメラが小屋を捉える間、ノイズは次第に増していく。あっという間に画面はノイズまみれになってしまい、何を映しているのか分からないところまでいってしまった。画面を埋め尽くすノイズは、澪が扉を叩くことを決意しカメラを止めるそのときまで続いた。


 映像をもう一度見返すが結果は変わらなかった。小屋を記録する様子は撮影できていなかった。気がつけば、パソコンの画面にのめり込むように体に力が入っていた。肩の力を抜き、深く息を吐くと、澪はパソコンの画面を閉じた。


 目を開くと外はすでに暗くなり始めていた。パソコンを閉じたあと、少し眠ってしまったらしい。自分で思う以上に昼の体験は緊張感を与えていたのかも知れない。


 パソコンを開き、忘れないうちに今日の記録を残しておく。そうこうしていると、伊原が部屋を訪れ昨夜と同じように風呂の案内をしてくれた。


 入浴を済ませ部屋に戻った澪は、部屋に一人立ち尽くしていた。外はすっかり暗くなっていた。行き交う人はなく、虫の声だけが聞こえている。昨夜と同じならば、きっとそれが見られるはずだ。そう思うと気を抜くことはできなかった。


 澪は部屋の灯りを消し、夜闇に目を慣らすことにした。続いていた虫の声が一つ二つと聞こえなくなっていく。いつの間にか、澪は静寂と暗闇の世界にいた。


 じっと窓の外に目を向け続けていると、とうとうそのときが訪れた。昨夜と同じ動く物影が見えた。目を慣らしておいたおかげか、あるいは心の準備をしていたからか、今日はそれが人影であると確信できた。人影はゆっくり道を進み、集落を外れ山の方へと歩んでいく。暗闇の中でぼんやりしているはずの影が、なぜか澪の目にははっきりと分かった。


 そのときだった。集落の外れに向かっていた影がその歩みを止めた。何も見えないはずの暗闇の中で、影がこちらを向いた気がした。そして、確かに澪と目を合わせた。


 こちらを向いた影は再び通り沿いに向きを変えると集落の外れへと歩み去っていった。


 それを見届けた澪は深く息をついた。いつの間にか緊張で息を止めていたらしい。暗闇の中でこちらが見えたはずもない。しかし、確かに目があったという確認があった。


 再び外に目を向けるが影が通り去ったあとの道にはただの暗闇が残されているだけだった。いつの間にか、虫の声が響き始めていた。


 澪は体に滲んだ汗を拭き取ると、布団に潜り目を閉じることにした。眠りを妨げるように響く虫の声が、今は子守唄のように思えた。

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