断罪された聖女、隣国で幸せになる。〜人工聖女を大量生成して送りまくった結果、乗っ取りに成功しました!!
俺はテクノ帝国の第一王子、ジェルミンだ。
「でーきた♡」
俺は、王子でありながら、魔道具製作の第一人者である。
――これまで、様々な魔道具を作ってきたが、今回の魔道具はその中でも最高傑作である。
「…ジェルミン様。
今度は何を作りましたの?」
心配そうな顔で俺の事を見つめる儚げな美人は俺の婚約者であり、隣国から逃亡してきた聖女、ノーラである。
「これー?聞いて驚け。
――人工聖女量産装置、『GPTOS』だ。」
俺の言葉にノーラは目を見開く。
「…まあ。」
――なぜ俺がこの人工聖女量産装置、『GPTOS』を開発したかと言うと、話は二ヶ月前に遡る。
◇◇
「ノーラ!君との婚約を破棄する!
この偽聖女めっ!実は君の義妹のアナが本物だということはわかっている!!
私の妃になりたいが為に、神託を捻じ曲げた悪女め!」
その一言でパーティー会場の空気は一瞬にして張り詰めた。
――国外からの来賓客も多く、せっかく和やかムードで皆が交流していたというのに。
そんな場で断罪を始めたこの男はテクノ帝国の隣国、プラト王国の王子、クラウドである。
チラッと見ると糾弾されている聖女ノーラはカタカタと震えていた。
「そんなっ!捏造など私はしておりませんっ!それにアナは治癒魔法など…。」
その言葉を遮ってクラウド王子は怒鳴る。
「五月蝿いうるさいうるさい!早く僕の目の前から消えろっ!」
その言葉に俺は思わずニッコリと笑う。
そして、クラウド王子に近づいていった。
「すんませーん。
じゃ、この子、俺が貰っちゃっていいっすか?
だって偽物って言ってたし、もう用ないんすよね?
見たら結構タイプだったんで♡」
――ちなみに半分本当で半分嘘だ。
確かに見た目はきちんとタイプだが、きっちりと打算があった。
実は俺はこの子が聖魔法を嘘偽りなく使うのをたまたま慰問の時に見た事があるのだ。なんてったってプラト王国は隣国だからな。
それに俺はその時から、ノーラを見初めていたのでる。
――つまり。
(はい、聖女兼好きな女の子、ただでゲットー!!)
こういうことなのである。
俺は、クラウド王子の隣の聖女ノーラの義妹、アナを見る。
彼女は王子にしなだれかかってオッパイをバレないように押し付けている。
そして王子はそんなアナの尻にさり気なく手を当てている。
(いや、あの二人デキてんじゃん!!
つまりノーラは嵌められたって訳か。
まあ、大方神託を捏造したのも向こうなんだろな。)
とりあえず、俺はノーラをテクノ帝国に連れて帰り、大切に大切に愛でることにした。
「ほら、もっと食えよ。
――こんなに可愛い子のことを手放すなんてバカな男だな。」
最初は怯えて震えていたノーラも徐々に俺に心を開いてくれるようになった。
「…ありがとうございます。」
「んーん、全然♡それより、俺の事、早く好きになって?」
俺がニッコリと微笑むと彼女が息を呑む。
「――っ。」
「可愛い。これからもっともっと甘やかすかんね。」
――だが。
一ヶ月もすると、さすがのクラウド王子もノーラが本物だったと気づいたようだ。
「聖女を返せ!」
しつこくしつこく手紙や魔道具での通信、はたまた使節団まで派遣してくるウインド王国。
嫌気がさした俺は、僅か一ヶ月で『GPTOS』を作り上げたのである。
◇◇
『GPTOS』を作り上げた俺は、隣国の上位貴族好みの容姿・性格条件を密偵から集めたデータから分析しまくり、色んな人工聖女を生成しまくった。
「はい! 処女、巨乳、ピンク髪の聖女、いっちょ上がり〜!」
「次は、緑目、金髪、ツンデレ、ツインテールね!」
「こっちは、銀髪、碧眼、儚げ美少女っと!」
「仕上げは、天然、童顔、可愛い系ー。いやー、自信作っすわ。」
――最低限の条件さえ入力すれば『GPTOS』は俺の思い通りの人工聖女を生成してくれる。
そんな俺の事をノーラは心配そうに見ている。
「ジェルミン様、大丈夫ですか?こんなに人工聖女を製造して。」
「大丈夫大丈夫ー!俺にも考えがあるから!
それよりほら。
ノーラ、お前ちゃんと飯食ってんの?
だめだぞー。向こうで全然食ってなかったんだからこっちではちゃんと食わなきゃ!」
俺がそう言うと、ノーラは顔を赤らめる。
「っ、ちゃんと食べてます!
もう!ずるいですわ。そんな事言われたら何も言えなくなってしまいます。本当に心配してるんですよ?」
「ははっ!大丈夫だから!それよりお前を虐げた隣国に一泡吹かせてやるからちょい待ってて?」
その言葉にノーラは黙り込んだ後、呟いた。
「無理はしないで下さいね?」
その言葉に俺はニカッと笑う。
「平気平気!愛してるよんっ!」
するとノーラが今度は耳まで真っ赤になった。
「もうっ!」
「…ねえ、少しは俺の事、好きになってくれた?」
すると彼女は上目遣いで俺を見た。
「――っもう!わかってる癖に!」
「いやー、ごめんごめん!
ちょっと可愛すぎて揶揄いたくなっちゃった♡
明日からプラト王国にちょっと行ってくるからさ。
帰ってきたらイチャイチャしような。」
すると彼女は恥ずかしそうに頷いた。
「…はい。」
――こうして俺は大量の人工聖女を引っ提げて、プラト王国へと向かうのだった。
◇◇
クラウド王子は俺が大量の人工聖女を連れてきたのを見て驚いていた。
「こ、こんなに聖女を送って貰ってもいいのか?」
「もちろんです。
で・も!!
人工聖女を送るには条件があります!
各人工聖女が治癒魔法を一度使うごとに、報酬として1ゼニー、うちの国に支払ってくださいねっ!
あと返品不可です。」
するとクラウド王子はニヤリと笑った。
「そんなはした金、いくらでも振り込んでやる!」
「良かったー。
チョロまかそうとしてもダメっすよ?
ちゃんと生成した装置で管理してるんで。
魔道具で自動で引き落としさせて下さい。」
――この条件で同意のサインを貰った俺は、ホクホクしながら帰ってきた。
「たっだいまー。ノーラ!今帰った。
会いたかったよん。」
「ああっ。ジェルミン様!
無事でお帰りなられて本当に良かった。」
ノーラが俺に抱きついてきた。
「――っ、会えない間、寂しかったです。」
「…可愛い。そんなに可愛かったら食べちゃうよ?」
すると、ノーラが花が咲くように微笑んだ。
「…貴方になら、いいですよ?」
「――っ!!」
俺達の唇が重なり、しばらく無言で見つめ合う。
「…大好きです。無茶はあんまりしないでくださいね?」
そんな彼女に俺はニッコリと微笑む。
「俺も好き。でも、俺はノーラの為だったらなんだってやっちゃうよ?」
「もうっ!!」
――それから一年後。
俺とノーラは結婚して幸せをに暮らしていた。
この頃俺はプラト王国から支払われるゼニーでホクホクだった。
ノーラにもそのゼニーで豪華絢爛なドレスを購入して、豪華絢爛な結婚式にした。
ついでに国民に酒やご馳走も振る舞った。
「ジェルミン様っ!私、幸せですわっ!」
「俺もっ!」
――そんなある日、プラト王国から連絡が来た。
『人工聖女の治療魔法の手数料を少し安くしてもらえないか。』
という内容だった。
(…遂に来た!!)
俺はワクワクしながら訪問の準備をする。
「…ジェルミン様っ、早く帰ってきてくださいね。」
妻のノーラがギュッと後ろから抱きついてきた。
「…大丈夫大丈夫!ノーラの敵はとってやるからな!」
そう言って俺は喜び勇んでプラト王国へ出かけるのだった。
◇◇
「お久しぶりですっ!
あれ?なんだかちょっと王宮内が寂しい感じになりましたね?」
すると、クラウド王子に疲れた顔で言われた。
「いいから手紙の件はどうなった?」
「あー。あの件ですね!
いいですよー!!人工聖女を国内の有力貴族と結婚させてくれるなら、ゼニーを振り込まなくても、そのまま専属にしちゃっていいですよ?
その代わりー、一妻一夫でお願いしますねっ。
子供も産めますしね!」
俺がそう言ってニッコリと笑うとクラウド王子は食い付いてきた。
「何?本当か!もちろんだ!約束しよう。」
そして、プラト王国の高位貴族の令息はみんな人工聖女達と結婚した。
ついでにクラウド王子もさっさとノーラの義妹のアナを捨てて好みの人工聖女と結婚したようだ。
「いやー、可愛いし、胸も大きいし、聖魔魔法も使えるし子供も産めるし。
俺らにとっては人間の女か人工かなんてどうでもいいわー。」
「そうそう、可愛ければなんでもいいよな。」
そう言ってプラト王国の貴族の令息達は人工聖女にメロメロになっている。
――そしてその結果、こんな事が起こった。
「…家格が釣り合う結婚相手がおりませんわ。」
「隣国に嫁ぐしかありませんわ。」
「…私、修道女になります。」
隣国の有力な貴族令嬢たちはプラト王国内で軒並み結婚できなくなった。
その結果、国外に嫁いだり、家族で逃げ出してしまった家も多かった。
――それを俺は静観しながら内心ほくそ笑んでいた。
(よし。ガタガタになってきたな。ここら辺で仕掛けるか。)
そして俺は『GPTOS』経由で人工聖女たちにある指示を出す。
「はーい、みんな!隣国ではうまくやってるかな?
ねぇねぇ、うちの属国になったらお得だよ、って
君たちにメロメロの旦那様を説得してくんないかな。」
「「「はーい!」」」
するとすぐに、人工聖女にメロメロの宰相家を筆頭にプラト王国ではクーデターが起きた。
――そして。
プラト王国を完全に掌握した俺は彼の国を属国にし、見事領土を拡大することに成功したのだった。
「くっ、貴様!汚いぞ!最初からこのつもりで人工聖女をよこしたな!!」
顔を真っ赤にしたクラウド王子にそう言われたが俺はニッコリと笑った。
「えー、別に汚くもなんともないですよ?
だって自分の国の事を一番に考えるのは当たり前ですよね?僕は貴方の国や、貴方の国の令嬢達なんてどうでもいいんで!!」
その言葉にクラウド王子はがっくりと膝をついたのだった。
◇◇
「よし、ノーラ、お前の故郷に復讐しといたよーん。
属国にしといたから、行きたい場所とかあったら、好きなように遊園地とかホテルとか作ってあげるからねっ。
…ちなみにお前を嵌めたアバズレ義妹は、人工聖女に乗り換えられて、さっさと捨てられてたよん!」
俺の言葉に大好きなノーラが美しく微笑んだ。
「まあ!!…うふふ。
こんなに愛されてるなんて、幸せですわ。」
――こうして俺は愛するノーラを虐げた国に逆襲をし、いつまでも幸せに暮らしたのだった。
fin.




