英雄パーティーを追放された料理人ですが、毒も絶望も癒す一皿で世界を変えてみせます 〜銀竜の姫と始める英雄食堂〜

かつて、王国最強と謳われた《勇者一行》には、ただひとり——剣も魔法も扱えぬ“料理人”がいた。

名はアレン・フェルヴィル。
仲間たちの傷を癒し、気力を満たし、絶望の淵にある者に希望を灯す一皿を作る、静かな天才。

だがその功績は、誰にも評価されなかった。
「お前は、ただの雑用だ」
そう言い捨てられ、アレンは一方的に追放される。

居場所を失った男が辿り着いたのは、人里離れた森の奥、古竜の眠る廃都の遺跡。
そこで彼が出会ったのは、傷を負い、封印を施された《竜の姫》リュシアだった。

絶大な魔力を持ちながら、世界から忘れられた少女。
孤独を抱き、言葉も力も失いかけていたその彼女に、アレンは料理を振る舞う。

それは、かつて英雄たちを支えた“伝説の味”——

一匙ごとに温もりが宿り、記憶が蘇り、忘れていた「生きること」の意味を、再び教えてくれる食事だった。

「もう一度……その味を、我にくれ」

——これは、追放された料理人と、滅びかけた竜姫が、世界の片隅で始めた“英雄食堂”の物語。