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平安幻想  作者: karon
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 死罪にさえしなければ怨霊は生まれない。そう信じて疑わぬ。

 平将門がたたったとて、それは討ち死にしたから、殺められたからこそ。

 殺しさえしなければ、殺しさえしなければ。

 なれど流罪になった菅原道真。怨み死んだまま雷神となって祟り内裏を焼いた。

 殺さずとも怨み死ぬ。それでは怨霊は増えるばかり。

 人を恨まず怨まれず円満に。

 ないないそんなものはない。

 公卿を目指せば人を呪う。

 だけどそれはない。誰も見ない、見ないものはないから。

 見ない見ない京洛の外など。見ない見ない、見ないものはない。

 京を離れた受領たちはただむさぼる。むさぼったものはすべて京に。見ない見ないそんなものは見ない。

 見ないからない。

 だから知らない。日ノ本すべてを覆いつくす怨嗟を。

 殺すべきものを殺さぬゆえに起きた惨劇。繰り返される徒労。

 そんなものは見ない自分の足元すら。

 公卿に使える者たちは、殺戮に走る。

 なぜなら自らの主は公卿、天に近いものばかり。ならばそれに仕える我らは天に仕えているに等しい。

 有象無象の命など取るに足らぬ。

 殺せや殺せ。

 血を流せ。

 そんなものは知らない。誰も見ていない。

 気づけば一度も使われない朱雀大路。ただ吸い取った税を空費するのみ。

 歌を歌うその術でだませているのは自分だけ。

 見ない見ないなにも見ない。日ノ本で何が起きているか。なにも見ない、見ないからない。

 帝が投げ捨てた武力を拾ったは討ち捨てられた皇子の末裔。

 その武力を何に使うか何も知らない。だって見ていないから。

 それでもどうしても見えてしまうひび割れがある

 そのひび割れを見てしまった老尼がいる。

 ひび割れは膾にきざまれた男の姿をしていた。

 兄の躯を呆然と見ているその尼はかつて清少納言と呼ばれていた女。

 天に近い場所にいた女。

 むさぼり怨嗟を買った男の死骸をただ見ていた。

 そしてひび割れを広がり続ける。

 宮中にて殺気を全身に浴びながら平の忠盛銀を光らせにたりと笑う。



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