表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平安幻想  作者: karon
1/2

 怨霊にまみれた平城京。

 血の深泥はぬぐい切れぬ。怨嗟の声はこだまする。

 かような地がこの国の中央であってはならぬ、この穢れから身を離さねば。

 鎮魂の像は力を失い色あせた。

 甲斐なく滅んだ血族の屍をここに置いていく。

 怨霊をここに封じ新たな都を立てよう。

 我が、我が殺したのではない。兄、他戸親王も義母井上皇后もましてや同母提早良親王も。我のせいではない。

 同胞の怨霊を恐れ桓武天皇は新たな京を願う。

 そして逃れた長岡京は夢も無残に砕け散り。

 そしてたどり着いたは船岡山のふもと。そこより代理を作り新たな都を立てる。

 ここに怨霊は来ない。

 ここは救いの都。一切の穢れを祓いただ清浄である場所。

 もはや平城京を顧みることはない。

 ここは平安京。その名たたえよ永遠の平安の都。

 軍を解散せよ。この国にいらない。人を怨霊にする軍を解散せよ、怨霊こそすべての禍の源、怨霊を作らぬために人を殺してはならない。

 

 平城京は穢れた都、その都に戻るなどあってはならない。

 その都に、平城天皇を封じ、藤原仲成薬子兄妹をその平城京にその屍をうずめた。

 すべてを過去に封じ新たな平安京を、この永遠の平安のためこの国のために平安卿を守るため。

 見よ一切の穢れを排除した朱雀大路。

 都の前から皇居までまっすぐに続く。両脇には白亜の壁、壁の向こうに何があるか決して見ることはできない。

 そう貧しきものは醜いもの。醜いものなど見たくない。壁を壊せばむち打ちに。

 都を二つに両断し、互いに行き来はできはしない。

 これは異国の大使の通る道。この国で醜いものの姿など見せてはならぬ。見せてはならぬ

 美しく清められた道を見よ。

 内裏ではこの国を寿ぐ歌を歌う。

 歌をうたえ永久に続く平安のために。

 内裏に集う殿上人。それらは平安を歌う。

 たとえ遠く離れたその場所で何が起ころうと見なければない。見なければない。

 帝は皇子に姓を与えた。平と源、しかし、それは藤の蔓に阻まれ遠くに追いやられた。そして都は藤の蔓に覆われ、貴色の花が咲き乱れる。

 都からはるか東に平将門がいる。そして死んだ。

 将門が攻めてくる。その知らせを宮中は聞いた。そして詔が出された。

 将門は討たれた。宮中は詔を出しただけ、それであっさり討たれた。

 寿げ寿げ、帝の威光は照り輝いている。この都こそ聖地、ここは永久の平安の都。

 その戦がどれほどの悲惨を極めても見ぬものはない。見ぬものはない。

 牛車が揺れる。その時歌が聞こえた。

 ホトトギスを呪う歌。

 なぜあの鳥を呪うことに気づかない。田に苗を植える、それが何を意味するかも分からない。

 米は天から降ってくると思うのか。

 宮中に響くその名は清少納言。

 宮中は、宮中こそ地上の中で最も天井に近い場所。

 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ