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流星飛行

この空にはヒトの数ほどの星がある。かつての俺たちが星を指標にしていたように、星というのは遠いように見えてかなり近しい存在だ。


ジル「………」


ただずっと子守唄の中にでもいるかのように夜空を

見つめる。鬱屈としているけれども、その一欠片が

俺自身の過去と相対する。


エフィリカ「主上様、夜に一体何をしていらっしゃる

      のですか?」

ジル「……天体観測」

エフィリカ「雲ひとつない空ですから見えやすい

      ですよね。ですが寝る時間です。明日も

      早いんですよ?あと早くご飯奢って

      ください」

ジル「解雇したい…」

エフィリカ「正直言ってここまで期待通りに私を

      扱ってくださるヒトは他にいないので

      解雇しないでください」

ジル「じゃあ…もっとマシな態度をしろ」


星が煌々と輝く中に、走っている宝石があった。


エフィリカ「あ、流れ星ですよ」

ジル「緑だな」

エフィリカ「何か意味があるんですか?」

ジル「かなりの昔から…色には様々な意味が…

   込められている……ある時は預言者なんかが…

   こうした色のある流星を……大切にした」

エフィリカ「緑の意味は?」

ジル「…「成長」と「嫉妬」がある。カザンヌ・アル

   マロスの著書…『カザンヌ円環術』でいうと…

   「暴食」なんかもある……」

エフィリカ「物知りですね。私にはそういった学が

      ないので知りませんでした。…もしよろ

      しければまた色々教えてください」


エフィリカは俺と背中合わせになるように座る。

黙って空を見上げているだけで、お互い結局何も

言わないままだった。俺の記憶に残る顔が眠るこの墓の側で、流星の光が消えるのを見守った。


ジル「ここは…誰の墓だと思う?」

エフィリカ「誰のって、ここに名前が刻まれている…

      あれ?ないですね。主上様はご存じなん

      ですよね?」

ジル「…知らない」

エフィリカ「そんなことあります?」

ジル「名前を聞く前に死んだ…」

エフィリカ「本当に知り合いなんですよね?」

ジル「同じ学校の生徒だった…知り合いだ」

エフィリカ「それで名前を知らないなんて、貴方

      学生時代にどれだけ他人に興味が

      なかったんですか」


ヒトとの関わりは確かに苦手だ。アイツみたいに勝手に死んでいくのだから。命なんて軽いんだから。何も変わらない。関係性を作るだけ厄介が増えるだけなんだから。


エフィリカ「はいはい、貴方が社交性を欠如している

      のは分かりきっていましたから、早く

      帰りますよー」


…そうこういうことにもなるからな。

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