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嫌味な奴への嫌がらせ

冷たい海の風に、乱れた精神を鎮める波の音。

白く輝く砂の上をリリアは歩いていました。


リリア「あの子が『神の子』を勧誘する間に、私の方

    でも動こう。体調は良さそうだからできる

    うちにやってしまおう」


リリアが海の方を見ると、陽の光が反射している

ドーム状の建物のような物体があります。


リリア「あった。あれが『水の国』ね」


『水の国』を見つけたリリアは海辺からかなり離れていることに気づきました。しかしリリアはこれを大胆に乗り越えます。


リリア「水の魔術なんて久しぶりに使うわね。この

    場合は風の魔術を使えば効率も上がるから…

    こうしちゃえば…」


リリアはそう言うと海に向けて手を翳します。

水の轟音と共にリリアの目の前の水が割れます。

海底を歩いてリリアは進みます。


リリア「そうしたら後は浮いて入ればいいわね。

    …思った通りこの隙間を塞ぐことはできな

    かったみたいね」


建物に入ると3つの大穴を見つけます。リリアは躊躇いなく水で満たされたひとつの穴に潜って行きます。


リリア(聞いた通りね。ここは海中都市。3つの管

    から伸びている様々な球体に部屋がある。

    居住区域や食料品場みたいに系統で分かれて

    いるのよね。私が入ったのは『福祉場』。

    医療施設が入っていたり介護所があったり

    するところね)


リリアは受付にいるヒトに話しかけます。


リリア「すみません、ナンス・マスティアさんに用事

    があるのですが」

受付「少々お待ちください…リリア・ベルナエル様で

   お間違いありませんか?」

リリア「ええ、大丈夫です」

受付「それではご案内いたします」


リリアは落ち着いた装飾の部屋に案内されます。

流れている沢の音色は安寧の意味が込められて

います。


ナンス「お前がリリアか?」

リリア「その通りです。初めましてマスティアさん」

ナンス「いやいいってそんな口調。俺に対してそんな

    敬意はいらねぇよ」


ナンスはそう言うと泡が出ている飲み物を渡します。


リリア「これは…『サガミ水』?」

ナンス「そうだ。口にしたことないだろうから

    ありがたく飲めよ」


リリアの舌に少しの刺激が襲います。それでも後味はすっきりしています。


ナンス「で?わざわざ時間を合わせて話したいこと

    ってなんだ?」

リリア「えっと、私たちの仲間になってほしいの」

ナンス「仲間?部下の間違えじゃなくてか?お前の

    ようないい身分のやつがわざわざ俺を仲間に

    するって、どんな風の吹き回しだ?」

リリア「貴方たちが今までたくさんの血と汗を流して

    自治を確立したのは知ってるわ。だけど

    それだといつか破綻する。だから私たちと

    一緒に働いた方が、貴方たちを守ることに

    繋がるわ。それを踏まえて代表の貴方はどう

    思う?」

ナンス「へぇ悪くねぇな。なんて微塵も思わねぇよ。

    お前のように部屋で利口にできるなら、俺は

    苦労しねぇってもんだ。口出しは不要だ」


するとリリアは書類を持ち出します。


リリア「いくら自治を貫き通したところで、不満を

    持たない民がいないなんてことはないはずだ

    けど」

ナンス「…これ1から調べたのか?」

リリア「調べる必要なんて私にはないわよ」


リリアはさらにたくさんの紙を取り出します。

そこには『水の国』のほぼ全てのデータが揃ってい

ます。人口、産業状態、政治形態、地理、挙げ句の

果てには戸籍まで揃っています。


ナンス「なぜお前がこんな情報を知っているんだ?

    3人に分裂したりでもできる化け物の

    末裔か?」

リリア「そんなことをする必要はないわ。私には物事

    の『真実』が見えるから」

ナンス「…悪い冗談だな。舌が肥えていないから、

    俺にはお前の価値がわからないだけだと

    思ったのに、そもそも口にしなくて正解

    だったな」

リリア「そんなこと言わないでほしいけど…貴方は

    そういうヒトだったわね」

ナンス「お前相手だとふざける暇も与えられないん

    だな。せっかちな奴だ。…返答は是だ。

    やり方は愚の骨頂だけどよ、それ(莫大な事実)を持てる

    くらいの実力なら、ご助力してもらおうか」


頭を下げることが不服そうなナンスにリリアは申し訳なさそうな顔を浮かべます。


ナンス「俺らに不利益になるような状況を作るのは

    お前らの権力の賜物か?法の整備をもっと

    マシなもんにしてくれよな…ここまでするか

    普通はよ」

リリア「貴方相手に交渉するのはかなり緊張したし、

    労力をたくさんかけて正解だったわ。

    改めてこの書類に署名をしてもらえる?」

ナンス「じゃあこれで…」


するとリリアが渡した契約書にナンスは手を切って

紙面に血を垂らし字を書きます。


リリア「ちょっと貴方…!」

ナンス「はい契約っと。じゃあ俺はこれで。帰りは

    正規のルートで帰れよな!」


ナンスは部屋から出ていってしまいました。仕返し

だと言わんばかりに。因みに血で字を書く行為は、

契約に対してだと、『血を垂らすのはこの限りだ』と

相手を軽視する意味が込められています。




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