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メアリの初恋談

今から何年か前のこと…


メアリ「本を読んでると度々思うけど、私もこの

    女の子たちみたいに恋をしてみたいな」

リリア「好きな人が欲しいの?」

メアリ「少し恥ずかしですけどそうですね。お姉様は

    気になる方はいらっしゃらないのですか?」

リリア「日頃から外に出ない私にはそんなヒトは

    いないわ。多分この先もずっとね。でも貴女

    くらいの別嬪さんになら、男の子から告白

    とかはされるんじゃないの?」

メアリ「たまにありますが、今は世界を安定させて

    いくことが優先ですから。ゆとりが出来たら

    誰かとお付き合いしたいです」


それこそ今は恋人などいないメアリ。しかし昔は

メアリにも甘い初恋をした時がありました。

今回はそんな思い出の日々をメアリの眼で覗いていくことにしましょう。


メアリ「あ、いた」


ここは海によって大陸から隔たれてしまった島。

『アグサリマ=カーガマ島』通称『楽園島』。

この島はリゾート地であるだけではなく新鮮な果物や

時期ハズレの物品などを購入することができる、

特別な島だった。


メアリ「ゼノ、久しぶりね」

ゼノ「久しぶりだね、メーちゃん」


彼はゼノ・ナベリウス。民宿を営んでいる彼は島1番のモテ男だった。端正な顔立ちに、おおらかな立ち振る舞い。彼に頼めば大体なんでも解決するなんていう

事実は誰でも知ってる。周りから見たら異常だけど、

これが彼の人柄を表していると言っても過言では

なかった。しかしそんな彼でもやっぱり欠点は

あった。


メアリ「さっき歩いてた女の子に聞いたけど、また

    振ったの?」

ゼノ「うん。我儘な悩みなのは承知してるんだけど、

   いくら熱心に告白されても、後からお互いに

   不幸せになんてしたくないからね。色々経験

   しておくことも大事かもしれないけど、今は

   この宿経営が楽しいから」


沢山の女の子からモテモテだというのに、当の本人に色恋沙汰とかそういう思想がほぼ無いに等しかった。

私にも彼は特に興味を示さない。必要最低限の会話で済ませようとする。そういう割には私をあだ名で

呼んでいいかと聞かれた時があった。あの時は腰を

抜かしそうになった。色々酷い会話の返し方を

されたりもするけど、そんな彼が好きな女の子たちの中に私はいた。


メアリ「貴方は宿を営むことが趣味なの?」

ゼノ「そうだね、というかそれ以外興味がないんだ」

メアリ「興味があるかないかで何でもかんでも

    済ませる節があるわよね貴方は…好きな

    食べ物とかはあるでしょ?」

ゼノ「最近は果実酒にハマってるよ」

メアリ「お酒か…あんまり得意じゃないんだよね」

ゼノ「そうなんだね」


うーんこの会話の続かなさ。会話のキャッチボールの

ボールが届く直前にビンタされてはたき落とされる。

兎に角会話を望まないなら、もっと他のアピールを

しないと!


ゼノ「それじゃあもう用はないかな?メーちゃんも

   買い物に来たんでしょ?楽しんでね」

メアリ「え!ちょっと待ってよゼノ!」


この日はゼノは裏側に行ってしまった。

ゼノをなんとか自分のものにしたいけど、これから

どうすればいいのだろうか。恋愛小説とか、

知り合いの既婚者のヒトとかにも色々聞いたのに、

なんだかしっくりこない。全部彼にとっては無駄な

気がした。


メアリ「ゼノ、貴方は最近ずっと受付から離れて

    ないんじゃない?」

ゼノ「お客さんがいるんだからしょうがないよね」

メアリ「…この際だから聞いてみるわね」

ゼノ「何だい?メーちゃん」

メアリ「貴方のタイプはどんなヒト?因みにちゃんと

    答えなかった場合消し炭にするわ」

ゼノ「急に物騒な話をしないで?!」

メアリ(当たり前でしょ!他の女の子たちも気に

    なってて私に哀願してきたんだから!)


かなりじっくり考えた結果出てきたゼノの答えに私は耳を疑った。


ゼノ「ママみたいなヒトかな」

メアリ「…は?」

ゼノ「ママはとても素敵だよ。優しいしご飯作って

   くれるし頭よしよししてくれるし。ママくらい

   素敵なヒトはこの世界に1人たりとも居るはず

   ないよね。まさかメーちゃんもママのことが

   好きなの?そうだよね、ママはそれくらい凄い

   ヒトだもん。今から会ってみる?メーちゃんは

   今日は暇だって言ってたでしょ」


生まれて初めて私はヒトに畏怖と嫌悪を示すかもしれない。これがヒトに対する『気持ち悪い』という感情

なのかと思った。まずい、勝手に右手に杖が

出てくる。コイツに対して防衛本能というか抹殺本能が出てくる。十人十色というけれど、コイツと分かり合える奴はこの世界(シチフク)にいるのだろうか。

分かりたくもない。


結局拗らせた彼の嗜好を見て私は必要時以外で顔を

見せなくなった。しかしそんな事もいずれ噂となって風に乗る。隠しきれなかったと言う方が正しいか。

他の女の子たちにも私との会話内容を盗み聞きして

いる子が居たらしくて(会話内容が衝撃すぎて気配に気づかなかった)、おかげで彼の評判は右肩下がりで

それと共にするように民宿の太鼓判もなくなった。

でもそれと同時に嬉しいこともあった。


女の子A「メアリさん、本当に災難でしたね」

女の子B「私たちが頼んだことでしたのに、まさか

     こんな事になるだなんて」

メアリ「全然気にしないでね。もうあの件は過去に

    流しちゃいましょう」

女の子C「そうですね!せめてこの島にいる時は

     ゆっくりしていってくださいね!」


そう。何故か知らないけど女の子たちに取り囲まれるようになったの。これを聞いて「いいなぁ」って思うヒトも「うっわ…」って思うヒトも居るんだろうけど

私は…


メアリ(は〜〜〜最高〜〜〜女の子って可愛い〜〜)


この通り女の子が大好きになった。可愛いからね。

逆に男性に対しては少し苦手意識があった。私によく

絡んでくるヒトは特に苦手になった。

私に色々いきなり話してくることに反射的に嫌悪感を

示すようになってしまった。申し訳ないけどね。

だからといって、私が積極的に避けたり、男は皆殺しとかは絶対にしない。時間を掛けて関わることが

大事だ。少なくとも私はそう思えるようになった。

それは女の子でも同じ。


メアリはこのなくなった初恋を、忘れることはないでしょう。


メアリ「今日も今日とて、世界市場には可愛い子が

    いっぱいだなぁ。…皆んなが嫌がらない

    程度にしておかないと…」


欲に忠実になるも自由ですが、程度を弁えることも

大事だと身に染みて学んだ波乱の初恋でした。




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