9話
「わっかんねぇ……。何かありそうな気がするんだけどなぁ。何でさっきMPが2上がったんだ?」
悠里は首を捻っていた。
ポッポロ先生に魔法の集中講義を受け始めたユーリ。すると一度目になんとMPが2も上がり、悠里は魔法を使えるようになったからかと喜んだ。
しかしその後は、MPは1上がるかどうかという、今までと同じ結果に終わる。
なぜ最初だけ2上がったのか、悠里はさっぱり分からなかった。
”ユーリは 3の けいけんちを もらった!”
”ユーリの かしこさ が 1あがった!”
「MP上がらなかったか。んー……。もうちょいで日が変わりそうだな。訓練場行くか」
朝から講義を受け続けて、今は5回目だ。
朝に3回、昼食を食べた後に2回。
そろそろ日が変わるだろうと、悠里はポッポロの部屋を出た。
「結局上がったMPは4か。24超えたから、これでロクブラ3回撃てるな。木剣も-3になったし、魔法撃てるだけ撃って終わろう」
講義を受ける前にステータスを開いてMPを確認した悠里。
しかしいつの間にか、木剣のマイナス補正が悪化していることにも気がついた。
元々ついていた-2の補正が、ついに-3になっていたのだ。
もう攻撃力が1しか上がらない状態だ。
「-3ってもう木の枝通り越してるだろ。スポーツチャンバラだ、これじゃ。痛くねぇだろ相手鎧着てるんだし。魔法が強くて良かったわ」
そんなことを言いつつ訓練場に入る。
すると、ユーリがオートで進み始めた。
「おっ。イベントか?」
画面を見ていると、訓練場の中央にバンポッポが立っている。
後ろには兵士達もずらりと並んでいた。
≪きたな ユーリ。 おまえに はなしがある≫
バンポッポがユーリに近づく。
≪まず おまえに これをやろう≫
”ユーリは ぼっけん を てにいれた!”
”ユーリは かわのよろい を てにいれた!”
”ユーリは てつのたて を てにいれた!”
「お、お! 革の鎧と鉄の盾! よっしゃ、やっと来た! 木剣は、ちょっとよく分からねぇけど、マイナス補正のない奴だろうな。でも何で急にくれたんだ? バンポッポに結構ダメージ与えたからか?」
ずっと欲しかった防具が貰えたのは嬉しい。
しかし何かそれらしいフラグがあったかと、悠里は不思議に思った。
≪おれたちも ここからは ほんきでやらせてもらう。 おまえもえんりょせず ほんきでこい。 いいな≫
「げ、もしかしてバンポッポ強化フラグか? あー、もしかして俺、やっちまったか……?」
ぼやきつつユーリにアイテムを装備させる。
貰った装備はいずれも補正無しのものだった。
「んー……。取り合えず、装備が変わってどのくらい強化されたか、プロポッポと戦ってみるかぁ。とその前に、他の奴らにもフラグ立ったか見てみるか」
今まで戦えたのはバンポッポとプロポッポだけだった。
他に何か変わったかと、悠里は周囲の兵士達にも話しかけてみる。
≪ユーリさま どうでしょう。 わたしともいっせん いかがですか≫
「おっ! こいつもフラグ立ってる!」
≪わるいが てかげんはしねーぜ。 かかってこいや!≫
「こいつもだ! あれ、もしかして全員か?」
悠里はその場にいた兵士全員に話しかける。
すると全員が全員、手合わせできるように変わっていた。
今まで戦闘できたのはたったの二人だったのに、それが急に増えた。
悠里は誰と戦おうか、少し悩む。
「……プロポッポにするか。どんくらい強くなったか知りたいし」
結局強さが分かっていて勝ったこともある、ベージュの兎兵士――プロポッポに話しかける。
≪ユーリさん。 ぼくもほんきで いかせてもらいます≫
「お、プロポッポもセリフ変わってんな。変なとこ細かいよな、このゲーム。そんなのよりダッシュが欲しいんだけどな」
”プロポッポ が あらわれた!”
悠里はここに来る前は、ロックブラストを撃って終わるつもりだった。
しかしフラグが立ったことで、兵士も強化されたかもしれない。
それがどれだけなのか、悠里は知りたいと思っていた。
「とりあえず殴って様子見てみるか」
悠里は”たたかう”を選択する。
”ユーリの こうげき! プロポッポに 4のダメージを あたえた!”
”プロポッポの こうげき! ユーリは 3のダメージを うけた!”
「あれ? 何か前と変わんねーな? いや、違うか。こっちの装備が強くなったから、変わらないように感じるだけか」
木剣はマイナス補正がなくなり、革の鎧と鉄の盾で防御が高くなった。
プロポッポも強くなっているようだが、そのおかげで与えるダメージも受けるダメージも変わらないのだろう。
結局プロポッポとの戦闘は、前と同じくらいのダメージを受けただけで終わった。
”ユーリは プロポッポを たおした!”
”ユーリは 47の けいけんちを もらった!”
「あっ、経験値が前より高くなってる。やっぱプロポッポも強くなってんだな。ステータスが上がってるけど、HPだけ変わらない感じか。これだったら他の兎もいけるかな」
HPは半分を少し切った程度。これなら魔法の発動まで持ちそうだ。
悠里は他の兵士に声をかけ、戦いを始める。そしてロックブラストを選択した。
”ユーリは ロックブラストを となえはじめた!”
”ポッポーニの こうげき! ユーリは 3のダメージを うけた!”
”ポッポーニの こうげき! ユーリは 2のダメージを うけた!”
”ポッポーニの こうげき! ユーリは 3のダメージを うけた!”
「よっしゃ、こいつプロポッポと同じくらいの攻撃力だ。これなら耐えられる」
ユーリは兵士の攻撃を耐え続け、ロックブラストを発動する。
悠里の読み通り魔法は相手の兵士を一撃で倒し、すぐに戦闘が終わった。
”ユーリは ポッポーニ を たおした!”
”ユーリは 46の けいけんちを もらった!”
”ユーリは レベル11 に あがった!”
「お、レベル上がった。つーか、いつまでここでレベル上げしねぇとなんだ? 進行イベントがねぇんだよな」
ステータスが上がるメッセージをAボタンで送っていく。
すると、いつもは無かったメッセージが流れ、悠里は「おっ」と声を漏らした。
”ユーリの MP が 1あがった!”
「MPが上がった。何でだ? 今までレベル上がっても上昇無かったのに。魔法使ったからか?」
今まで戦闘では上がらなかったMPが上がったのだ。
うーんと悠里はうなり声をあげる。
「もしかして、戦闘で魔法使ってもMPって上がるのか? それじゃポッポロ先生の講義はいらなかったかもな……。って、そういや賢さは今んところ講義でしかあがってねぇな。そういう事か?」
悠里は悩みつつ、最後にバンポッポに挑んだ。
HPを回復する手段が無かったため、すぐにユーリは倒された。
「今日は時間を講義で使っちまったからな。明日はこっちで兵士達相手にレベル上げするか」
暗転していく画面を見ながら、悠里は思案声で呟いた。
ユーリ レベル11
HP 59
MP 26
ちから 21
たいりょく 18
すばやさ 15
かしこさ 20
うん 10
こうげき 20
ぼうぎょ 24
E かわのよろい
E ぼっけん
E てつのたて
E ポッポロのおまもり