表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/51

8話

 ”ユーリの こうげき! プロポッポに 5のダメージを あたえた!”

 ”ユーリは プロポッポを たおした!”


 召喚されて7日目。ユーリはやっと一人の兵士を倒すことができた。


「よっしゃ。やっぱバンポッポ、この中で強い方みたいだな。そりゃ勝てねーわ」


 バンポッポに挑み、倒されること5日。

 6日目もまたバンポッポ道場かと思いつつ、念のため他の兵士にも話しかけてみると、セリフが変わった兵士が一人いた。


≪ユーリさん。 ぼくとも てあわせして もらえませんか≫


 今まで訓練中だとしか言わなかった兵士。しかしやっと一人にフラグが立ったのだ。

 ”はい”を選択し戦闘してみると、負けはしたが意外といい戦いができた。

 その時レベルも上がったため、今日また挑んでみたところ、何とか勝ちを得ることが出来たのだった。


 ”ユーリは 35の けいけんちを もらった!”

 ”ユーリは レベル10 に あがった!”


「お、やっぱ倒した方が経験値貰えるんだな。レベルも上がった」


 ステータスの伸びも悪くない。

 そこそこ戦えるようになってきたため、悠里はここにきてやっと楽しくなっていた。

 またそれには、このゲームの仕様が分かり始めたという理由もあった。 


≪くっそー…… もういっかい おねがいします!≫



   はい ⇒いいえ



「HPが持たねぇし無理だな。もう一回やられたら明日になるかもしれん」


 一つ目は、何度もHPが1になると暗転し、日が変わるということ。

 日が変わるとその日の行動は強制終了し、次の日へと移ってしまう。


 二つ目は、ゲーム内で時間経過があるということ。

 何か行動をすると時間が進む。訓練の途中でも部屋で休めることに気付いた悠里が色々試していたところ、初めてポッポロが昼食を渡してきて、そこで気付いたのだ。


 部屋で休めば時間によってHPが回復する。昼食を食べてもHPは少し回復する。

 これに気付いた悠里は、5つあった薬草が全部無駄になったと文句を言ったが、もう後の祭りである。

 気を取り直してそのまま進め、レベル上げに励んでいた。


 そして三つ目。


「それじゃポッポロ先生に魔法を教えてもらいに行くかね」


 MPや賢さに関しては、今のところポッポロに座学で教えて貰わないと伸びないということだった。


 一つ目と二つ目に気づいた悠里は、日が変わる前に何か他の行動ができるかと、集落を少し歩いてみた。

 するとドアが半開きになっている部屋があり、そこに入った途端、同行していたポッポロがこう話し始めたのだ。


≪ユーリさま。 よろしければ まほうを おおしえ しましょうか?≫



   はい  いいえ



 どうやらポッポロの部屋だったらしい。半開きのドアは、入れる部屋を示していたようだ。

 確かに自分の部屋も、いつもドアが半開きになっていた。

 とにもかくにも悠里は当然”はい”を選択した。


 今も画面内ではポッポロが耳をぴょこぴょこ動かしながら、部屋の中をゆっくり行ったり来たりしている。

 教師が本を手に、講義をしながら歩いているような動作だ。


 とは言えメッセージが何も表示されないため、何をしているかは悠里には分からない。

 ポッポロが行ったり来たりしているのを、数秒間眺めているだけだった。


 ”ユーリは 3の けいけんちを もらった!”

 ”ユーリの かしこさ が 1あがった!”


「お、賢さ上がった。MPは無しか。これランダムっぽいな」


 上がるか否かはランダムのようだが、しかし僅かでも経験が入ることと、時間の経過でHPが若干回復していることは、嬉しい仕様だった。


「よし、もっかいポッポロ先生にお願いして、最後にバンポッポ道場するか」


 1日1回は必ず、悠里はバンポッポに挑む。

 倒せずにやられるため経験値は渋い。しかしこれはもう儀式のようなものだった。

 最後にバンポッポに挑み、気絶させられてその日を終わる。それがユーリのルーチンになっていた。


 ”ユーリは 2の けいけんちを もらった!”

 ”ユーリの MP が 1あがった!”

 ”ユーリの かしこさ が 1あがった!”


 ”ユーリは ロックブラスト を おぼえた!”


「来た! やっと来た魔法!」


 ポッポロ先生の講義が終わり、表示されたシステムメッセージ。その最後に表示されたのは、悠里が待ち望んだものだった。

 思わず身を乗り出す。


「……でも何でロクブラなんだよ。普通火の魔法じゃねぇの? ロックブラストって大地の魔法だろ? なんかすげー地味だな」


 が、すぐに脱力した。

 悠里はブチブチと言いながらもロックブラストの性能を確認する。


「消費MP8か……。最初の魔法にしては高ぇな? 3回しか使えねーじゃん。威力が高けりゃいいけど最初の魔法だしなぁ。とりあえずバンポッポ道場で試し打ちするか」


 使える魔法一覧には、”ロックブラスト MP8”としか書かれていない。

 属性があるのかとか、威力はとか、全てが謎に包まれている。


 ならバンポッポにぶち込めばいい。そう思いながら、ユーリは訓練場を目指した。


≪どうした? ここで くんれん していくか?≫



   はい  いいえ



「今日こそ倒してやるぜ。道場破りだコラッ」



  ⇒はい  いいえ



≪よーし。 なら このおれが じきじきにあいて してやるぜ!≫


 ”バンポッポ が あらわれた!”


 もう何度も見た、鎧を着たピンクの兎兵士が画面に登場する。

 いつもならコマンドには”たたかう” ”ぼうぎょ” ”どうぐ” ”にげる”しかなかったが――


「お、魔法がある。よし、それじゃ早速使ってみるか」


 悠里は”まほう”を選択し、ロックブラストを選択する。

 すると、システムメッセージが勝手に流れ始めた。


 ”ユーリは ロックブラストを となえはじめた!”

 ”バンポッポの こうげき! ユーリは 6のダメージを うけた!”

 ”バンポッポの こうげき! ユーリは 5のダメージを うけた!”

 ”バンポッポの こうげき! ユーリは 5のダメージを うけた!”

 ”バンポッポの こうげき! ユーリは 7のダメージを うけた!”

 ”バンポッポの こうげき! ユーリは 6のダメージを うけた!”


「ちょ、ちょっと待て! 待て待て! 何これ!? 何でこんな――あ、もしかして詠唱か? ……詠唱時間取られんの!?」


 突然タコ殴りにあうユーリに、悠里は慌てる。

 もう5回もダメージを受けた。バンポッポはたまに2回行動を取ってくるため、そうと考えるともう最低3回は行動されている。


「おいおい、これ使いどころ無くねぇ? こんな時間取られる魔法、選択したらその時点で終わりじゃん。やっぱバランス崩壊してるわこのゲーム」


 もうHPの半分が削られてしまった。

 魔法を選択したのは失敗だった。というか、魔法自体が罠だった。


 ”バンポッポ の こうげき! ユーリ は 7のダメージを うけた!”


 これは駄目だ。悠里は鼻から深いため息を吐く。

 悠里はもう、魔法には何の期待も持っていなかった。


 ”ユーリは ロックブラストを となえた!”

 ”バンポッポに 47のダメージを あたえた!”


「――は?」


 だからだろう。

 次のメッセージが流れた時、悠里は一瞬言葉を失った。


「え、47!? 普通の攻撃じゃ3とか4なのに、47!? え!? 何、ロクブラすげぇじゃん! 逆方向にバランス崩壊してるわコレ!」


 通常攻撃の、約12、3回分の威力だ。

 それほどのダメージを叩き出すとは思っていなかった悠里。

 彼のテンションは急激に上がり、手の平がくるくる回る。


「こんなにダメ出るなら、防御上げてロクブラ撃っとけばいいな。今は木剣しかねぇから攻撃低すぎるし。そっちの方がたぶん楽だわ。あー防具何とかしてぇなぁ」


 ”バンポッポの こうげき! ユーリは 6のダメージを うけた!”

 ”ユーリは たおれてしまった!”


 もう一度ロックブラストを選択した悠里だったが、魔法が発動するまで持たず、ユーリはそのままやられてしまった。

 ただこれは悠里の想像の範疇だ。


 ”ユーリは 17の けいけんちを もらった!”


「まだ着てんのがただの服だしなぁ。誰か鎧を俺にくれ。あとMPも問題だな。とりあえず、明日からポッポロ先生に集中講義してもらうか」


≪はっはっは。 でんせつの ゆうしゃってのも こんなもんか。 たいしたこと ねーな≫


 そしてまた暗転していく画面。

 彼はそんな画面を見ながらも、すでに次どう行動するかを考えていた。

 ユーリ レベル10


 HP 57

 MP 21


 ちから   20

 たいりょく 17

 すばやさ  15

 かしこさ  17

 うん    10


 こうげき 17

 ぼうぎょ 16


 E ただのふく

 E ぼっけん-3

 E きのたて+1

 E ポッポロのおまもり

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ