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5話

 暗転した画面はすぐ元に戻り、またユーリの部屋が画面に映った。

 ユーリの部屋はベッドしかない、質素に過ぎる狭い部屋だ。

 ポッポロも言っていたが、他に融通できる部屋が無いらしい。


「ま、こいつらかなり貧しい生活してるみたいだしな」


 この狭い部屋や集落の様子を見る限り、貧しいことは十分想像できた。


「それよりもステータスってどうなってんだ?」


 しかし現実でないのだから、悠里にとって部屋の良し悪しなどどうでもいい。

 そんな事より気になるのはステータスだ。

 やっと自キャラが自由に動かせるようになったのだ。

 どんな状態なのかと、悠里はすぐに確認を始めた。



 ユーリ レベル1


 HP 25

 MP 5


 ちから   7

 たいりょく 6

 すばやさ  6

 かしこさ  12

 うん    10


 こうげき 7

 ぼうぎょ 8


 E ただのふく




「レベル1か。そりゃいいけど……力が7、体力と素早さは6か。賢さが12。魔法使いタイプか? ……いや、MPが5しかねぇ。なんだこのバランス。つーか攻撃低っ」


 使用可能な魔法も確認したが、何も表示されていない。

 やはり魔法使いではないようだ。


「装備はただの服だけか。……普通布の服とかじゃねぇの? なんだよただの服って」


 ぶちぶちと文句を言いながら、次に悠里はアイテムを確認する。


「薬草が5個。最初からこんなに回復アイテム持ってるの、珍しいな? つーか武器くれよ武器。素手じゃん。って金もないのか。武器が買えねぇ……」


 ほぼ裸一貫の状態だ。

 悠里は文句を言うが、しかしRPGならよくある事。

 無一文というのは珍しいが、悠里は口ほどには気にしていなかった。 


「一旦セーブしとくか。セーブ、セーブ……が、ねぇ」


 システムを開いても、セーブらしきものが無い。

 そう言えば昔はセーブ機能が無く、パスワードをノートに書き取って保存していたらしい。

 悠里は嫌な予感を覚えつつも、まさかなと想像を振り払った。


「そんじゃ外探索するか――お?」


 粗方情報は見終わった。なら次にするのは探索だろう。

 部屋を出ようとしたユーリ。

 しかし丁度良く、部屋に一人の兎人間が入ってきた。


≪あっ おはようございます ユーリさま!≫


 ポッポロだった。

 昨日言っていたが、ポッポロがユーリの世話役になったらしい。


≪きょうは しゅうらくの あんないを させてもらいます! もし きになった ばしょがあったら いってくださいね!≫


 随分張り切っている様子が伝わってくる。

 ポッポロは女性とのこと。ドット絵だが、微笑ましい様子に好感が持てた。


≪では いきましょう!≫


 ここからはオートでイベントが進む。歩くとポッポロの耳がぴょこぴょこ動いて愛嬌があった。

 ポッポロは変わり映えのしない地下を歩き、ユーリに丁寧に説明をする。

 悠里は道具屋と武器防具屋、訓練場、そして地上に出る階段の位置だけ覚えて、後は適当にイベントを眺めた。


≪ユーリさま。 どこか いきたいばしょは ありますか?≫


 すべてを回った後、ポッポロが聞いてくる。



   はい  いいえ



「ま、そうだよな」


 悠里は迷うことなく”はい”を選択した。



  ⇒はい  いいえ



≪では わたしも おともします!≫


「あー、こっから自分で行動するのか」


 ポッポロが自分の後ろに並び、ユーリに付いて来るようになった。

 ただ仲間扱いではないらしく、システムを開いてもステータスは見えなかった。


「外に出てみたかったけど、今は駄目って言われたから、フラグが立ってないんだろうな」


 先ほどの案内で、ポッポロに外には出られませんと釘を刺されてしまった。

 出口に続く階段も兎兵士に守られていたから、今は無理だろう。


「じゃ、その辺の部屋に入ってみるか」


 家探しはRPGの基本である。悠里は近くの部屋に入ってみようとする。


「あ? じゃあその隣――も駄目か。これ他の部屋には入れないタイプか……」


 が、入れなかった。鍵でもかかっている設定なのだろう。

 あちこち探す手間が無いのは良い。しかし少しがっかりするのはゲーマーの性か。 


「それじゃ金も無いし、訓練場一択か。訓練場行こう。ってこれダッシュとか無いのな。遅っせぇ」


 なら目指すは訓練場のみだ。


 ユーリはポッポロを伴って、真っすぐに訓練場を目指す。

 そこでは訓練をしている兎兵士達がちょこちょこと動いていた。

 生意気にも皆武器と防具を装備している。しかし基本兎なので強そうに見えなかった。


「ちょっとこいつらに話しかけてみるか」


 それはともかくまず行動だ。訓練している兎兵士に話しかけてみる。

 まず最初に話しかけたのは中央で一人立っていた、ピンク色の兎兵士だった。


≪お? ゆうしゃさまか。 どうした?≫



   はい  いいえ



 またこの選択肢である。

 ただこれは分かりやすい部類だ。


「これ”はい”を選ぶと戦闘になるんだろうな。ちょっと”いいえ”選んでみるか」



   はい ⇒いいえ



≪そりゃすでじゃ くんれんできねぇよ。 あーこれ つかっていいぜ。 おれの おふるだけどな≫


 すると、軽快なBGMと共にメッセージウィンドウが現れた。


 ”ユーリは ぼっけん を てにいれた!”


「ぼっけん? あ、木剣か? 普通、木の剣じゃねぇの? ぼっけんじゃピンとこねぇよ」


 言いつつ装備するためウィンドウを開く。


「ってコレ、ぼっけん-2? 何でマイナス補正……あ、こいつのお古だからか」


 疑問を口にしながら自己解決する悠里。

 なんだか妙なところにこだわりのあるゲームのようだ。


「そんなとこに力を入れるくらいなら、もっと別のところに入れてくれよ。つーかダッシュくれよ、ダッシュ」


 文句を言いつつ木剣-2を装備して、他の兎兵士にも話しかける。

 彼らは訓練に励んでいて、今訓練中です、などとそっけない。

 仕方なく、悠里はまた木剣をくれた兎兵士に話しかけた。


≪どうした? ここで くんれん していくか?≫



   はい  いいえ



「あ、なるほど。さっきの木剣はフラグか。貰った後にコイツに話しかけると、訓練ができるんだな」


 悠里は迷いなく”はい”を選択する。



  ⇒はい  いいえ



≪よーし。 ならこのおれが じきじきに あいてしてやるぜ!≫


 一瞬フラッシュが入り、兎兵士との戦闘に入った。

 背景は黒塗りで、画面真ん中に武装した兎兵士が構えを取っている。


 ”バンポッポ が あらわれた!”


「やっぱこいつも鳩かよ。まぁでもちょっとはマシだな」


 どうやらターン制のバトルのようだ。

 自キャラのコマンドを見てみると、”たたかう” ”ぼうぎょ” ”どうぐ” ”にげる”が表示されている。

 だが今の状況では戦う以外に無い。

 悠里は”たたかう”を選択した。


 ”ユーリの こうげき! バンポッポは ダメージを うけなかった!”


「え?」


 ”バンポッポの こうげき! ユーリは 11のダメージを うけた!”


「いや、ちょっと待て。え、何これ? 負けイベか?」


 自分の攻撃のダメージは0だ。

 しかし相手の攻撃でHPの半分近くを持って行かれた。

 悠里が負けイベントと口にするのも無理もなかった。


「いや、これどうやっても勝てねぇじゃん。うーん……どうすっか。とりあえず、このまま戦ってみるか」


 これは模擬戦だ。やられたところで死にはしないだろう。

 そう思い、悠里はまた”たたかう”を選択した。


 ”ユーリの こうげき! バンポッポは ダメージを うけなかった!”

 ”バンポッポの こうげき! ユーリは 10のダメージを うけた!”

 ”バンポッポの こうげき! ユーリは 12のダメージを うけた!”

 ”ユーリは たおれてしまった!”


「は!? いやいやちょっと待て! こいつ今二回攻撃してきたぞ!?」


 悠里は思わず身を乗り出した。

 昨今のRPGでは、強敵が一回の行動で複数回の攻撃をしてくる、というのは別段珍しくもないことだ。

 しかし序盤の戦闘で二回行動をしてくるキャラなどいただろうか。


「バランスおかしいだろ! つーか、じゃあどうやってレベル上げするんだよ!?」


 こんなもの倒せるわけがない。悠里は声を荒げた。


 ”ユーリは 5の けいけんちを もらった!”


 しかし、次に流れたこのメッセージに、悠里はあっと気が付いた。


「あ、負けても経験値が入るのか。いや、ここが訓練場だからかな? とにかく、一応レベル上げはできるようになってるんだな」


 そんなシステムは初めて見るが、まあ納得はできた。

 また訓練場の風景に戻ってきた画面を見ると、倒れたユーリをバンポッポが笑っていた。


≪はっはっは。 でんせつのゆうしゃ ってのも こんなもんか。 たいしたこと ねーな≫

≪バンポッポさん やりすぎですよ!≫


 ポッポロが窘めているが、どこ吹く風のようだ。


≪ま ゆうしゃさまは そこでねてな。 はっはっは≫


 メッセージウィンドウが閉じ、バンポッポとの会話はそこで終わった。


「全然戦えねぇな。敵にダメージ与えらんねぇじゃん。こんなゲームぜってぇ売れねぇ」


 文句を言いつつ、悠里はどうするか考える。

 やられてしまい、HPは1になっている。

 しかしレベルを上げるには、恐らくここで戦うしかない。


「あ、薬草あったんだったな。1個使ってみるか」


 思い出して使ってみると、HPが全回復した。

 ならば当然もう一度戦ってみようかと考える。


「でもバンポッポ強すぎ問題があるからな……。別の奴と戦えねーかな。もっかい話しかけてみるか」


 もっと弱い奴はいないかと、周囲の兎兵士達にもう一度話しかけてみる。

 しかしやっぱり返ってきたのは、訓練中だからというすげない返事だった。


「もっかいバンポッポと戦ってみるか……」


 結局バンポッポに話しかけ、また同じようにボコボコにされた。

 バンポッポには再び笑われたが、しかし経験を5入手し、レベルが2に上がった。


「ステータス……全然上がらねぇ」


 上がったのはHPが3、力と体力が1だけだった。

 ユーリ レベル2


 HP 28

 MP 5


 ちから   8

 たいりょく 7

 すばやさ  6

 かしこさ  12

 うん    10


 こうげき 10

 ぼうぎょ 8


 E ただのふく

 E ぼっけん-2

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