44話
”ユーリは ぼうぎょを かためた!”
「ギャオオオオオッ!」
もう、どれだけの時間が経っていたのだろう。
”キグリギスの こうげき!”
”ユーリは 10のダメージを うけた!”
力任せに腕を振るうも、勇者は幾度となくその堅固な防御で我が爪を弾いた。
「カァッ!!」
”キグリギスは こおりつくいきを はきだした!”
芯まで凍る極寒の息を吹きかけようと、勇者は巌のようにびくともしない。
”ユーリは かいふくのくすり+を つかった!”
”ユーリの HPが 40かいふくした!”
捨て身の攻撃を繰り出そうと、
”キグリギスの ぶちかまし!”
自慢の尻尾を叩きつけようと、
”キグリギスは しっぽを おおきく ふりまわした!”
雷鳴轟く紫電の息を浴びせようと。
”キグリギスは らいめいのいきを はきだした!”
勇者は。
”ユーリの こうげき!”
”キグリギスに 67のダメージを あたえた!”
「ガハッ!?」
何度でも我に立ち向かい、その剣を我が体に突き立てた。
”ユーリは ぼうぎょを かためた!”
「グオオオオアアーッ!!」
仲間を失ったと言うのに衰えぬ輝き。
既に光を失った我の目にすら、その者の姿は眩しく映った。
”キグリギスの こうげき!”
「ギャオオオオオッ!!」
あまりの眩しさに笑みすら浮かぶ。
”ユーリの こうげき!”
敵だと言うのに、なぜか嬉しさすら込み上げる。
”キグリギスは はげしいほのおを はきだした!”
神によって運命を翻弄され続けてきた。
神の掌の上で踊らされ続けてきた。
”ユーリは ぼうぎょ を かためた!”
”キグリギスの ぶちかまし!”
見たくも無い運命を見せつけられ、生きる気力すら奪われてきた。
「ガアアアアアッ!」
だが今この時、この時間だけは神の力すら到底及ばぬ。
”キグリギスの こうげき!”
思うがまま力を振るう我を、一体誰が止める事叶おう?
”ユーリの こうげき!”
この勇者の輝きを、一体誰が消す事叶おう?
「グ――オオオオオッ!!」
”キグリギスは しっぽを おおきく ふりまわした!”
こんなにも愉快な事があるだろうか!
”ユーリの こうげき!”
「ガハァッ!」
我は!
”キグリギスの こうげき!”
私は!
”ユーリの こうげき!”
神の傀儡などではない!
”キグリギスの ぶちかまし!”
「ウオオオオオオッ!!」
神の首輪に繋がれた奴隷でもないッ!
”ユーリの こうげき!”
私は! 私は!! 私は――っ!!
”ユーリの こうげき!”
「……ク、ハハハハハッ」
私はこの瞬間――
”ユーリの こうげき!”
紛れもなく、人であったぞ……ッ!
”キグリギスに 69のダメージを あたえた!”
「見事」
”ユーリは キグリギスを たおした!”




