表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/51

21話

 ”ユーリは スケイルメイル を てにいれた!”

 ”ユーリは りゅうのかぶと を てにいれた!”

 ”ユーリは ドラゴンローブ を てにいれた!”


「これでドラゴン装備全部揃ったな。結構防御上がったなー。ポッポロンはまだ微妙に紙だけど、これはしょうがねぇ」


 竜人兵を四日かけて倒し、全ての素材を集めきった悠里。

 最後に手に入れた素材でスケイルメイル等の防具を作って貰い、早速ユーリとポッポロンに装備させていた。


「んで。こっからどうするかって話だけど」


 高くなったのは防御だけだが、レベルも上がった事もあり、戦闘はかなり安定し始めていた。

 この集落の皆に話しかけてみたが、次のイベントを臭わす会話は何もない。

 なので悠里の頭には、遠出という言葉が浮かんでいた。


「なんか外歩いてると、北の方だけ割とエンカウントするんだよなー。何かある気がするんだが」


 西や東、南ではあまり遭遇しない敵に、どうしてか北だけは遭遇することが多かった。

 むろん悠里の気のせいだという可能性もある。

 しかし防具が揃った今、残る手掛かりはそれだけだった。


「携帯食もかなりあるし、たぶん行けるだろ。うん。行ってみっか」


 最初効果が分からなかった携帯食。

 しかし素材集めをしながら確認して、既に効果は分かっていた。


「回復の薬は今6つもあるしな。携帯食の仕様がもうちょいマシだったら、ポッポロンのMPも安心なんだけど」


 携帯食の効果。それは二つあった。


 一つはMPの15回復だ。

 これが竜人兵一体倒すと、加工の手間はあるが漏れなく付いて来るのだ。

 これには悠里も「神アイテムじゃねーか!」と喜んだ。


 もう一つは、バッドステータス”くうふく”の回復。

 ある程度行動すると、ポッポロンは”くうふく”状態になる。

 こうなると、携帯食を食べるまで行動にマイナス補正がかかってしまうのだ。

 これには悠里も「システムが細けぇ!」と叫んだ。


 だが、それ以上に悠里が憤慨したことがある。

 それは、携帯食を使えない状況があるという事だ。


 まず戦闘中。食ってる場合か! という事なのだろう。

 だが戦闘中に使えないアイテムと言うのはRPGにはままある。

 なので、そこに悠里はあまり反応を見せなかった。


 彼が憤慨したのは、もう一つの使用不可の条件。

 それは”まんぷく”状態だ。

 ステータスに表示されないこの状態。携帯食を食べ過ぎると、どうやら”まんぷく”状態となり、携帯食が使えなくなるようなのだ。

 ”くうふく”状態からでも、携帯食は2つが限界だ。

 これに悠里は、


「なんで空腹表示があるのに満腹表示がねぇんだよ! というか止めろこの満腹度システム! ローグライクじゃねぇんだぞ!」


 と、大層ご立腹であった。

 

 とは言え厳しいMP事情に余裕ができたのも確か。

 なので悠里は保留にしていた、北の調査に乗り出すことにした。


≪ユーリさん。 これを もっていって ください≫


 外に出ようとすると、いつものようにポッポロンが話しかけてくる。


 ”ユーリは かいふくのくすり を 3つ てにいれた!”


「これマジで助かる。これで回復薬9個。相当余裕あるぞ」


 集落を出る際、ポッポロンが必ず渡してくれる回復薬。

 HP30回復という効果は、ユーリの行動範囲を確実に広げてくれた。

 受けるダメージが少なくなった今は使う事を控え、有事に備えて溜めていた。


≪では いきましょう!≫


 アイテムは十分。防具も完璧。


「うし。じゃあ行けるとこまで行ってみますかね」


 暗転し、また表示される、親の顔より見た荒野。

 悠里は戸惑いなく十字キーを操作し、上方向へ向かい始めた。


 ”りゅうじんへいA が あらわれた!”

 ”りゅうじんへいB が あらわれた!”


「ふっふっふ。新防具で固くなった俺達に、お前達はもう相手にならんぞ?」


 ”ユーリは ぼうぎょを かためた!”

 ”ポッポロンは アーススパイクを となえはじめた!”

 ”りゅうじんへいAの こうげき! ユーリは 1のダメージを うけた!”

 ”りゅうじんへいBの こうげき! ユーリは ダメージを うけなかった!”


「おっ! ノーダメ!」


 ドラゴン装備に身を固めたユーリは、既に竜人兵の攻撃を通さないまでに防御力を上げていたようだ。


「ポッポロンももうちょい防御上がれば、ダブルで魔法使えるんだけどな」


 ”ポッポロンは アーススパイクを となえた!”

 ”りゅうじんへいAに 72のダメージを あたえた!”

 ”りゅうじんへいBに 65のダメージを あたえた!”


「ま、HP低いのはどうにもならんし、安全重視で行こう。こっちにゃ携帯食があるからな、ポッポロンのMP消費はある程度どうとでもなる。満腹度システムは糞」


 もう竜人兵と戦うのも慣れたものだ。

 敵全員にダメージを与えるアーススパイクは、ダメージこそロックブラストに劣るものの、消費MP6と中々効率が良い。

 詠唱ターン数がロックブラストと同じと言うのも悪くない点だった。


 ”ユーリの こうげき! りゅうじんへいAに 11のダメージを あたえた!”


「バンポッポ来い!」


 ”バンポッポのけんが にぶいかがやきを はなつ!”

 ”ユーリの こうげき! りゅうじんへいAに 12のダメージを あたえた!”

 ”りゅうじんへいAを たおした!”


「っし!」


 アーススパイクを放った後、ユーリの攻撃で止めを刺す。

 これで受けるダメージも消費MPも、最小限に抑えられる。


 ”ポッポロンは ぼうぎょを かためた!”

 ”りゅうじんへいAの こうげき! ユーリは 3のダメージを うけた!”


 防具を強化した今、竜人兵の攻撃を防御なしで受けても、ユーリへのダメージは軽い。

 このコンビの前では、以前苦戦した竜人兵の群れはもう、ただの経験値と化していた。


 ”ユーリたちは りゅうじんへいのむれ を たおした!”

 ”ユーリたちは 382の けいけんちを もらった!”


 ポッポロンの魔法の効果を知れたことも大きいだろう。

 単体大ダメージのロックブラスト。敵全体小攻撃のアーススパイク。

 敵全体を高確立で行動不能にするクエイクに、敵の攻撃を数ターンミスさせるマッドショット。

 そして、ポッポロンへの攻撃を40ダメージ程度肩代わりするアースウォール。


 使いどころが分からない魔法もあったが、効果を知れたことは戦術に幅を持たせてくれた。


「二体じゃもう相手にならねぇな。よし、さくさく行くか」


 かなりの余裕を持ちながら襲ってくる竜人兵を倒しるる、ユーリ達は真っすぐ上に向かって進んで行く。


≪すみません ユーリさん。 すこしきゅうけい しませんか≫

≪ユーリさん。 よなかのこうどうは きけんです。 きょうはここで やすみましょう≫


「なんか今回、ポッポロンがすげぇ話しかけてくるな。休憩の提案は今まで何回かあったけど、野営の提案は初めてだわ。マジで有能だわポッポロン。流石ポッポロの弟」


 すると珍しくポッポロンが度々提案をしてきて、休憩を取りながら進む事となった。

 その都度HPやMPが回復するため、アイテムの消費も抑えられる。

 悠里としてはこのイベントは助かるもので、ポッポロンへの好感度が非常に上がっていた。


 そうして無駄なアイテム消費が殆ど無いまま、万全の状態で二日ほど歩き詰めたユーリ達一行。

 彼らは荒野の中に建つあるものを見つけ、目前で一旦立ち止まった。


「……砦、か? あれ」


 荒野のど真ん中にある砦のようなドット絵。

 ただ、キャラと同じサイズのドット絵なので、規模や構造などは全く分からない。


「敵の砦かもな。北に進むと敵とのエンカウントが多かったし。まあとりあえず突っ込んでみるか。もう十分竜人兵相手には戦えてるしな」


 RPGなら、何か見つけたらとりあえず入ってみるのが基本だ。

 そしてそれは、悠里にとっても同じである。


 彼は迷いなく十字キーの上を押し込む。

 そして砦の中へ入って行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ