19話
≪ユーリさん ありがとうございます≫
高い経験値に喜んでいた悠里。
しかし荒野に戻ってきた途端メッセージウィンドウが開き、ポッポロンとの会話が始まった。
≪でも にげたぼくを どうして……≫
はい いいえ
「またこの選択肢か……。何で助けに来たかとか、そういう意味だろうけど。どっち選んでも意味わからんぞコレ」
困った時は”はい”を押す。
悠里もまたその通例に倣う。
⇒はい いいえ
≪…… …… ……≫
「あ、やっちまった?」
返ってきたのは沈黙だった。
少し不安になる悠里。
しかしすぐポッポロンから反応があった。
≪この たおした りゅうぞくから なにか つくれるかも しれませんね≫
「お、マジで? 鱗とか剥いで何か作るんかな」
≪ぼくたちだけでは はこべないので みんなにてつだって もらいましょう≫
自分達を襲ってきた敵を返り討ちにした上、素材にする。
精魂逞しいことだ。
悠里はほんの少しだけ竜人兵に同情した。
その後、残りの回復の薬をユーリに使い、集落へ戻り始めた悠里。
ポッポロンがいるため爆速ではなくなり、ゆっくりと東へと戻っていく。
道中夜になってしまったが、しかし敵に遭うことなく、無事に集落へ辿り着く。
戻った二人はオート進行で大部屋へと連れて行かれ、グーポッポの前で立ち止まった。
どうやら経緯を説明しているらしかった。
≪かしこまりました。 それではみなで そのりゅうぞくを ここへ はこびましょう≫
グーポッポのセリフの後、周囲の兵達が揃って出ていく。
竜人兵を回収しに行ったようだ。
≪ユーリさまも おつかれでしょう。 どうかゆっくり おやすみください≫
会話が終わると画面が暗転する。
その後に表示されたのも、また同じ大部屋だった。
≪ユーリさま。 さくやは ゆっくり ねむれましたでしょうか≫
「一瞬だったけどな」
もう日が変わっているようだ。
今大部屋にはグーポッポと、三人の兎人間しかいなかった。
「一晩しか経ってねぇけど、まさかもう何かできたとか?」
悠里の期待に応えるように、メッセージウィンドウに文字が流れる。
≪かいしゅうした りゅうぞくから このようなぼうぐを つくってみました。 ユーリさま ぜひ おつかいください≫
”ユーリ は スケイルガード を 2つ てにいれた!”
「おっ、やっぱ鱗を使ったんだな。これでもうちょい楽に戦えるか?」
竜人兵の攻撃は、防御なしには耐えられなかった。
だが防御力が上がればユーリも攻撃に移れるかもしれない。
そうなればもっと楽になるだろう。
≪もっと そざいがあれば べつのものが つくれるかも しれません≫
どうやらもっと竜人兵を倒せば、色々と何かが作れるらしい。
この時悠里は竜人兵を狩りまくろうと決めた。
≪このしゅうらくふきんで りゅうぞくを たおされましたら こちらのおとこに もうしつけください。 かいしゅうに むかいます≫
「あ、この辺限定か。でも勝手に回収してくれるのはいいな。こういう場合アイテム欄圧迫したりするのもあるから、地味に助かるわ」
回収はオートでやってくれるらしい。
変なところでユーザーフレンドリーである。
「よし。じゃあまずこの、盾、だよな? 事故が怖いから防御力上がるのは助かる。特にポッポロン。ただそれでもまだ二匹以上来られるときついかもな……ポッポロンの一撃に期待するかぁ?」
グーポッポの話が終わった途端、悠里は早速装備を開く。
手に入れた盾の能力は高く、未だに木の盾装備のポッポロンは、防御力が5も上昇した。
それだけではない。
「この2つ、+補正が2も付いてるな。もともとポッポロンが装備してた奴も補正ついてるし、ここで作ったものって+が付きやすいとか?」
補正値がかなり高いことに悠里は気が付いていた。
最初にいた集落では、木の盾に+1の補正があっただけ。
木剣など-補正が付いていたくらいだったのだ。
もし+補正がランダムであれば、ゲーマーなら厳選作業が頭をチラつくだろう。
「ま、付いてたらラッキーくらいで考えるか。厳選とかめんどい。つーかセーブがねぇ」
だがそこまでこのゲームにのめり込んでいない悠里は、ありえないと軽く笑った。
そして三人並んでいる兎人間に話しかけてみた。
≪りゅうぞくの かいしゅうに むかいますか?≫
はい いいえ
「あ、こいつに話しかけると回収に向かうんだな。オッケオッケ」
はい ⇒いいえ
一番左の兎人間は回収班だったようだ。
それを確認した悠里は、次にその右隣の兎人間に話しかける。
≪りゅうぞくの ウロコは ひじょうにかたい。 それに まるみをおびていて ぶきを そらしてしまうのだ≫
「ほーん。でも普通に攻撃効いたけどな?」
≪まほうで こうげきしたあとは ウロコがこわれ こうげきがつうじる ようにはなるが。 まほうなしでも つうじる ぶきさえあれば……≫
「げっ、マジか」
豆知識を披露してくれる兎人間に、悠里は思わず声を漏らした。
確かに先程ユーリが攻撃したときは、魔法で攻撃した後だった。
もし先に攻撃していたらゲームオーバーだった可能性が高い。
改めてこのゲームのシビアさを感じた悠里は、
「やっぱ調整クソだわ」
やっぱりそう文句を言った。
その兎人間との会話はそれで終わったので、今度は最後、一番右の人物に話しかける。
≪つくれそうな ぼうぐは これだけだぜ≫
すると、そんなメッセージが出た後に、防具のラインナップが表示された。
スケイルガード うろこ1.5 かわ1
スケイルシールド うろこ3
スケイルメイル うろこ5 かわ0.5
りゅうのかぶと うろこ1 かわ1
ドラゴンベスト かわ3
ドラゴンローブ かわ6
けいたいしょく にく1
のこり うろこ0 かわ1 にく3
「色々作れんな。鱗と皮がいるのか。ってか携帯食って何だよ。回復アイテムか? んーっと……」
新要素に狼狽えながらも、悠里はざっと計算する。
「一体倒すと鱗と皮と肉が1ずつ増えんのかな?」
先程倒した竜人兵は3体。そして貰ったものがスケイルガード2つ。
それで残りが皮1つなのだから、必然的にそうなるだろう。
まあ肉が3の時点でほぼそうだと予想できるが。
「なんか小数点がついてるのもあるな……。こんな細かくする必要ある要素かコレ? それになんか……竜の兜だけ浮いてねぇ? ドラゴンヘルムじゃ駄目なんか?」
突っ込まずにいられない男、悠里。
だがとにかく、ラインナップを見れば欲しい物はすぐ決まった。
「まずシールドとベストだな。で、かぶと、メイル、ローブの番か。ポッポロンがシールド装備できりゃそれ優先だけど……まあ最初にシールド一個作って、装備できるか見てみりゃいいか」
優先順位はあれど、当然全部である。
やることが見えれば次は行動だ。
「とりあえず携帯食作ってみるか」
≪けいたいしょく だな! いくつ つくるんだ?≫
「……3つでオナシャス」
≪すこし じかんがかかるぜ! もうすこし あとで きてくれよな!≫
「ウッス」
どう効果があるか分からない道具を依頼しつつ、ユーリは大部屋を後にする。
悠里は竜人兵から素材をはぎ取るべく、集落の外へ直行した。
ユーリ レベル15 ポッポロン レベル11
HP 71 HP 41
MP 29 MP 55
ちから 24 ちから 9
たいりょく 25 たいりょく 10
すばやさ 19 すばやさ 17
かしこさ 21 かしこさ 32
うん 11 うん 7
こうげき 30 こうげき 12
ぼうぎょ 41 ぼうぎょ 29
E てつのよろい+1 E きのつえ
E バンポッポのけん E まほうのローブ+1
E スケイルガード+2 E スケイルガード+2
E てつのかぶと+1 E クロースアーマー+2
E ポッポロのおまもり
 




