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13話

 一旦トイレに行った後、悠里は冷蔵庫からケーキを取り出し、素手でガブリと食いついた。


「くっそ……。マジでテンション下がったわ。誰だこんなシナリオ書いた奴」


 粗方集落を調べて回ったが、生存者はいなかった。

 ポッポロが死んでしまったこともあって、悠里のやる気はダダ下がりだった。


「次はじゃあ、ポッポロの弟を探すわけだな。……頼まれてる以上仕方ねぇ、続けるか」


 出口を守っていた兎兵士も、もういない。

 今まで通れなかった門をくぐり、ユーリは外の世界へ足を踏み出す。

 階段を上ると一旦暗転する。

 次に画面に映し出されたのは、一面の荒野だった。


「これ、砂漠か? いや、ただの荒れ地かな? なんもねぇ。目印になるもんもねぇ。あ、そうだ」


 何の面白味もない茶色一色のマップに、悠里のテンションはさらに下がる。

 だがとりあえずと、悠里は”どうぐ”から持ち物ウィンドウを開いた。


「魔力磁石を使って……」


 ポッポロからもらった魔力磁石を使ってみる。

 すると、


 ”にしの ほうがくを しめしている”


 システムメッセージにこの一言だけが表示された。


「これだけか。じゃあとにかく左に行ってみるか」


 何もない荒野を進み始めるユーリ。

 敵か何かが出るだろう。悠里はそう思っていたが、意外なことにエンカウントは何もなかった。

 ずっと左へと進むが、代り映えのない荒野が続くばかりですぐに暇になる。

 焦れた悠里はまた魔力磁石を使ってみた。


 ”せいほくせいの ほうがくを しめしている”


「お、微妙に変わってる。西北西ね。っつーか、妙に細かいなこれ。北西なら分かるけど、西北西ってどうなんだ」


 褒めているのか貶しているのか分からないセリフを吐きつつ、悠里は今度は西北西の方角を目指す。

 西北西に進んでも荒野ばかりというのは変わらなかったが、しかし何かがあると分かると多少はやる気が出る。

 道中暗くなり、夜になった。だが敵も出ないのだから、ユーリは休まず歩き続ける。

 その結果、次の朝にはある場所へとたどり着いていた。


 ”まりょくじしゃくは このばしょを しめしているようだ”


「この場所? 何もねぇけど……調べてみるか」


 メッセージは変わったが、マップは依然としてただの荒野だ。

 とりあえず”しらべる”を選択し、ユーリに足元を調べさせる。

 すると突然、足元にぽっかりと穴が開いたのだ。


 ”なんと! あしもとに おおきなあなが あいた!”

 ”ユーリ は あなに おっこちてしまった!”


「あー、地下に住んでるから入り口を隠してたんだな。ってか、落っこちてしまったって、すげーマヌケだな。落ちてしまった、ならまだしも」


 ”すってんころりん すっとんとん!”


「うるせぇな! そんな明るくねぇだろ今の状況! おむすびか俺は!」


 ヒューンという効果音と共に、暗い穴の中へ落ちていくユーリ。

 そのまま下へ落ちていくと、どこかで見たような地下の広い空間が現れる。

 ついでにユーリは大勢の兎兵士に囲まれてしまった。


≪なんだ こいつは!?≫

≪てきしゅうか!?≫



   はい  いいえ



「いや”はい”じゃねぇだろ! クソっ、この意味不明な選択肢止めろよ。出てくるなら必要な時に出てこいや。つーかこれ、俺が敵かどうか答えても意味なくねぇか?」


 ポッポロ達の事を思い出し嫌な気分になりつつも、当然悠里は”いいえ”を選択する。



   はい ⇒いいえ



≪まってください≫


 すると、ユーリを取り囲んでいた兎兵士の後ろから、一人の兎人間が歩いて来た。

 ポッポロと同じ垂れ耳で、茶色の兎人間だった。


「お、こいつじゃねぇ? ポッポロの弟って」


 ドット絵だと分かりにくいが、確かにポッポロに良く似ていた。


≪このかたから ねえさんのまりょくを かんじます≫


 茶色の兎人間が、そう言いながらユーリの前に立つ。


≪あなたは……?≫



   はい  いいえ



「いや会話になってねぇって。そりゃ”はい”なんだろうけどさ。間違って”いいえ”選んだらどうすんだよ」



  ⇒はい  いいえ



 選択肢が表示されるタイミングが全く分からない。

 悠里は少し苛つきながら、今度は当然”はい”を選択した。


≪その まりょくじしゃくは ねえさんが もっていた……≫


「あ、確かに魔力磁石見せれば、ポッポロの関係者だってすぐ分かるな。話が早い」


 やはりポッポロの弟だったようだ。

 彼はユーリを取り囲んでいる兎兵士達に振り返り、彼らを説得し始めた。


≪みなさん。 このかたはおそらく てきではありません。 すこしはなしを きくことにしましょう≫


 とりあえず、ユーリの事を敵ではないと判断したようだ。

 ゆっくりと画面が暗転していく。

 次に表示されたのは、前の集落にあったような、簡素な大部屋だった。

 いつの間にか沢山の兎人間が集まっている。皆でユーリの話を聞いているようだった。


≪そうですか…… ねえさんのいた しゅうらくは やつらに……≫


 ドット絵では分かりにくいが、弟の落胆ぶりは悠里にも伝わってきた。

 これが現実であれば、かける言葉もないだろう。


「でも、なんで一緒に暮らしてなかったんだろうな。離れ離れにでもなったのか?」


 不思議に思っていると、今度は別の兎人間がユーリに話しかけてくる。


≪ユーリどの。 はなしによれば あなたは われわれをすくうために このちにきたという ことですな≫


 前の集落にいたブーポッポのような、老いた兎人間だ。

 たぶんこれが、この集落の長なんだろう。


≪このしゅうらくも いつやつらに おそわれるか わからん……。 ユーリどのにも てをかして もらえると ありがたいのじゃが……≫ 



   はい  いいえ



「ま、そう来るよな」



  ⇒はい  いいえ



≪おお…… ありがとう ございます≫


 長の兎人間はそう感謝を述べた後、ポッポロの弟の方を向く。


≪ポッポロン。 ポッポロのことは ひじょうに ざんねんじゃった≫


「あ、こいつポッポロンって言うのか」


 メッセージウィンドウに表示された名前に、つい声が漏れる。


「ポッポロと殆ど名前同じじゃん。そういや双子なんだっけ。双子で名前似てると混乱しそうだけど、どうなんだろうな」


≪じゃがこうして ユーリどのが たすかった。 おまえが あねのいしをつぎ ユーリどのを たすけるのじゃ≫

≪……はい≫


「ポッポロン、何か言いたそうだな。まあ実質、俺がポッポロを見殺しにした感じだしなぁ……」


 返事の前の沈黙が妙に気になってしまう。

 だがそんな悠里の考えなどお構いなしに、また画面は暗転し、黒一色になってしまった。

 ユーリ レベル13


 HP 64

 MP 28


 ちから   23

 たいりょく 21

 すばやさ  17

 かしこさ  20

 うん    10


 こうげき 29

 ぼうぎょ 26


 E かわのよろい

 E バンポッポのけん

 E てつのたて

 E ポッポロのおまもり

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