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Jam On The Rock〜頭のイカれたギルドマスターとその仲間が家族になる話〜  作者: 81MONSTER
-忌まわしき古竜の血-
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第六節【大僧正バウル】



 激しい力のぶつかり合いの中、レウスの力が大きく膨らんでいるのが解った。


 それと同時に、ハデスの力もまた、強大に膨れ上がっていく。このままでは、レウスが勝ったとしても無事ではいられない。どうにかして、レウスの手助けがしたかった。昨夜のように、自分の力をレウスに宿すことが出来れば、勝機が見付かるかもしれない。レウスの挙動を見逃さない様に、しっかりと目を凝らす。激しい砂埃の所為(せい)で姿は見えないが、レウスの気配を感じとる事ができた。


 呼吸を整えて、レウスの呼吸を意識して力を()り込む。


 ――レウスが好きだった。


 出逢って間もないが、レウスが心の奥に居る。初めて出逢った時に、既に惹かれていた。暴走する力を、レウスは全て受け止めてくれた。最初は哀しみばかりが、心を埋めていた。闇がレウスに牙を()くたびに、罪悪感が膨らんでいった。その最中、レウスはずっと優しく話し掛けてくれた。少しずつ、少しずつ、心が安らいでいた。気付けば、レウスが心の中を満たしている。


 レウスには本当に、心から感謝している。レウスの力に()りたい。レウスの(ため)なら、何だってしてあげたい。レウスを想えば想うほどに、心の中が温かいものが広がっていく。レウスが自分には、必要だ。レウスを求める気持ちが、どんどん強く()る。


 だけど、レウスは素っ気ない態度ばかりで、不安や悲しみが押し寄せる。それなのに時折、見せる優しさが、堪らなく心地良い。気になってこっそり視線を送ると、いつも自分を見ている。目が合うたびに、恥ずかしくて目を逸らしてしまう。本当は嬉しくて、嬉しくて、仕方がない。どうして、こんなにも好きなのだろう。


 レウスを想いながら、闇を(まと)う。闇が無数の筋と()ってレウスへと、伸びている。飛散して、レウスを包み込む。


「出来たッ……」


 拮抗していた力が、闇の力が加わった事によって、次第に傾いていく。レウスに軍配が上がっている。砂埃が激しさを増して、姿が見えないが、レウスの力を強く感じている。


 闇を通じて、レウスの鼓動や動きが伝わってくる。まるで、レウスと感覚を共有しているかの様に、錯覚してしまう。本当に、不思議な感覚で()る。


 見えないけれど、イメージとして状況が()えるのだ。


 激しい力が、ぶつかり合う。ハデスの力が、少しずつだが弱まっている。レウスの勝利が、目前かと思われた時だった。


 ――唐突に、それは起きた。


 遥か先の壇上から、巨大な力が地面を通して、物凄い勢いで疾走(はし)り抜けてきた。その刹那に、レウスの足元の地面が隆起して、勢い良く土砂が吹き上がる。気付けば砂埃が晴れていた。空高く飛ばされたレウスからは、何の力も感じられない。どうやら、意識を失っている様だった。


「パパ上ッ!」


「パパッ!」


 ハウゾウとハウタが、空中でレウスを受け止めるのを見て、胸中を安堵(あんど)が満たす。


「そこのお嬢さん、投降しなさい。大人しく降伏すれば、危害を加えないと約束しよう」


 気付けば、バウルがそこに居た。



   ●



「どうして、邪魔をするッ!」


 牢獄の中で、レウスが激しい口調で問い掛けている。いつもと様子が違う所為(せい)か、急に不安な気持ちが満たしていく。


 なぜかハウゾウ達が、自分の膝の上で丸まりながら、可愛らしい寝息を立てている。ふわふわしていて、気持ちを紛らわせてくれている。


「邪竜を討伐しろと、言った(はず)や。折角、邪竜の封印を解きに来たのに、台無しにしたいのか?」


 真顔で答えるバウル。


 初めて()うが、レウスが言っていた印象(イメージ)とは少し違った。全身から、哀しそうな雰囲気(オーラ)が伝わってくる。なのに、同時に優しさや厳しさも、強く感じる事ができた。少しだけ、レウスに似た物を感じる。


「ふざけるなッ! あんな化物が、復活してみろ。絶対に、大事になる。俺には、荷が重すぎるッ!」


「おいおい。やる前から諦めて、どうするつもりや? 何事も恐がらずに、ぶつかって行く事が大切やと思わん? 龍鳳石を失ったらそれこそ、邪竜を討てなくなる事は明白。ならば、私が復活させた方が、賢くはないか?」


「アンタなら、龍鳳石がなくとも勝てるんだろう?」


 尚も食い下がるレウスが、父親にプレゼントを強請(ねだ)る子供のように見えたのは自分だけだろうか。


 ハクビの心は、いつの間にか平常心を取り戻していた。ギルドマスターだけ()って、バウルは堂々としている。自信と威厳に満ちている。其処(そこ)に居るだけで、不思議と安心感を抱かせてくれる。レウスが慕う理由が、理解(わか)った気がする。


 本人には慕っている意識は無いかもしれないが、親子の会話の様に聞こえて微笑(ほほえ)ましい。


「勝てる――楽勝や」


 満面の笑みには、一点の曇りもない。


 自信に満ち溢れている。


「だったら――」


「断る。これは、お前さんに与えた仕事や。自分の責を、しっかりと果しなさい」


 呵呵大笑(かかたいしょう)の声を響かせながら、バウルは去っていった。


 バウルの背を見送りながら、レウスは溜め息をついている。


「もういい。寝るッ!」


「寝ちゃうの?」


 簡素なベットに横たわると、レウスは眼を()じる。


 まるで、不貞寝(ふてね)だ。


「ハクビも寝て、しっかりと魔力を回復させてッ!」


「えっ……?」


 途端に、鼓動が跳ね上がる。


「邪竜を(たお)すには、ハクビの協力が必要だ。だから、ちゃんと寝て」


 そうじゃない。


 ハクビの抱いた感情に、レウスは気付いていない。


「……あ、あのっ。寝るって……」


 ベットは、一つしかない。


 それも、シングルサイズだ。


「今さら何、恥ずかしがってるの?」


 確かに、裸で寄り添っていたけど、それとこれは別だ。


 それに、あの時の事を思い出して、余計に意識してしまう。


「ママ上、ちゃんと眠るでござるよ」


 いつの間にか目を覚ましたハウゾウが、笑顔でこちらを見ている。


 邪念のない純粋な笑顔に()てられて、意を決する。


「……失礼、しますっ!」


「ハウタ、真ん中が良い~!」


 遠慮がちに、レウスの横に潜り込む。


 ハウタが間に入っているので、少しだけ隙間が生まれる。内心では、少し残念に感じて余計に恥ずかしさが増した。


 落ち着かなかったが、疲れの所為で不思議とすぐに眠りに()ちていた。






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