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Jam On The Rock〜頭のイカれたギルドマスターとその仲間が家族になる話〜  作者: 81MONSTER
-忌まわしき古竜の血-
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第四節【呼吸を合わせて】



「パパ上ッ!」


「パパ、倒れた~ッ!」


 目の前で、レウスが倒れた。


 目の前が、真っ暗になった。どうしたら良いのか解らなくなって、不安が胸の中を埋めていく。どうしようもない程の恐怖が、心を満たしていく。レウスの存在に、どれだけ支えられていたのかが解る。押し寄せる負の感情が、悪い想像ばかりを連想させている。


「レウスさんが、死んじゃう……どうしよう?」


 涙目で、ハウゾウに問い掛ける。


「ママ上。弱気になっては、駄目でござる!」


 こんな時でも、ハウゾウは凛々(りり)しい。自分なんかよりも、よっぽど大人だと感心させられてしまう。


「ママがパパ、担いで歩けなんに!」


 ハウタの言葉に従って、レウスを背にする。


 背中全体に、レウスの温もりが伝わって、胸の鼓動が早鐘を打つ。


「……重いっ」


 一歩目を踏み出した途端、倒れてしまった。


「大丈夫でござるか?」


 ハウゾウは、何て可愛らしいんだろう。


「ママ、根性なしなんに」


 性格が余りよろしくないみたいだけど、ハウタも可愛らしい。


 このままレウスの温もりに包まれて、自分も眠りたい衝動に襲われる。それがとても素敵な思い付きの様に感じて、思わず目を閉じてしまう。昨夜からの疲労の所為(せい)なのか、レウスの温もりに癒されてしまった所為(せい)なのか、急激な睡魔が全身を麻痺させていく。


 甘い微睡(まどろ)みの中、ハウゾウ達の声が遠く響いているけど、すぐに意識の底に沈んでしまった。



   ●



 目覚めると、何故(なぜ)か裸だった。


 薄闇の中で、同じく裸でレウスと密着する様に縛られている。


 混乱よりも、恥ずかしさよりも、嬉しさの方が勝っている自分はきっと最低な女だ。少しでも、長くこのままで居たいと思う程、自分は駄目な女なのだ。出逢(であ)ったばかりなのに、レウスに恋をしている。初めて()った時に、(すで)に恋に()ちてしまったのだ。


 レウスと向い合せの為、唇が触れれるほどに顔が近い。異常に跳ね上がる心拍が、いけない衝動を自分に(もたら)す。


 周囲には、誰も居ない。そう言えば、ハウゾウやハウタも居ない。


 出来るだけ意識しない様に、レウスから視線を()らすがどうしても、目に入ってしまう。


 どうしたって、レウスを見てしまう。


「何で、裸なの?」


「ご、ごめんなさいっ……」


 いつの間にか、レウスが目を覚ましている。


 至近距離で見詰められて、死んでしまうくらい恥ずかしい。しかも、お互い裸だ。


「ハウゾウ達が、近くに隠れてるね。気配で、解るんだ」


 優しく笑うレウスが、めちゃくちゃ格好いい。


「何で捕まったか知らないけど、何とかなるよ」


 月だけが、自分たちを見ている。


 見える範囲内には誰も居ないけど、人の気配は感じている。


「ねぇ。もっかい、闇の能力(ちから)を使う体力、残ってる?」


 真顔で問い掛けられて、呼吸が止まるぐらい胸が締め付けられた。


「出来るけど……上手く、使えるかな?」


「大丈夫。俺が、ちゃんとリードするから、呼吸を合わせて」


 密着してる所為(せい)で、レウスの息遣(いきづか)いが感じられた。


 レウスに言われる(まま)に、能力(ちから)を開放させる。レウスの力強い呼吸が、不安な心を温かく包み込んでくれる錯覚を呼び起こす。


 全身を、不思議な感覚が包み込んでいる。


 闇の装束が、自分だけではなくレウスをも包み込んでいる。


「やっぱり、思った通りだ」


 優しく笑うレウスが、凄く好きだ。


 自分たちを縛っている縄を、レウスはいとも簡単に切る。


「動かないでッ……何もしなければ、殺さないッ!」


 気付けば、若い女が居た。


「信用、出来ねぇな。まずは、刀と服を返せ。話は、それからだッ!」


 立ち上がるレウスを、恥ずかしくて直視できなかった。


「フルチンで、(すご)まれても恐くないわよ?」


 両手で顔を覆うけど、少しだけ気になる。


 気付けば、武装した男達が集まってきている。


「あなた達の目的は、何?」


 殺気立つ男達。


 一触即発の空気だ。


「俺は仕事で、邪竜を倒しに来ただけだ。アンタらに、用はない。邪魔するってんなら、ぶっ殺すけどな?」


 相手を刺激するような事を、平然と言うレウスに不安を覚えた。


 思わず視線を向けるけど、とんでもない物が目に入って、慌てて眼を伏せる。


 そんな自分には、興味がないと言った風に男達は構えている。


「随分と威勢が良いみたいだけど、この人数を相手に勝てるの?」


「やるってんなら、いつでも良いぜ?」


 男の一人が、前に出ようとする。


 だが、女が手で制する。


「坊やに、服と刀を返してやんな」


「レゼ、どういうつもりだ?」


 男の一人が、女に問い掛ける。


 額に竜の刺青(タトゥー)が、彫られている。


「どうもこうもない。私達は、舐められてるのよ?」


「だったら何故(なぜ)、向こうの要求を呑むんだ?」


 不思議だと言った風に、男が問う。


「だから、決闘すんのさ。ダリア、アンタが坊やに教えてやんなッ!」


「なるほど、そういう事か」


 男は好戦的に笑った。



   ●



「俺が勝ったら、解放してくれんだな?」


 刀を入念に確認しながら、レウスが問い掛ける。


「約束するわ。だけど、ダリアは強いわよ?」


「あ~……気にすんな。五秒で、勝てる」


 レウスが空を見ている。


 その視線の先には、二頭の子竜が飛んでいる。


余所見(よそみ)とは、余裕だな?」


 ダリアがレウスに、殴り掛かる。


 だけど、レウスの顔を拳が()り抜けたと思ったら、ダリアは地に伏している。


「五秒、()らなかったね?」


 驚愕の表情を張り付けながら、レゼが何かを言いたげにレウスを見ている。


「何か、言いたそうだね。良いよ、言いな?」


 ハウゾウ達が、急降下してレウスに絡みつく。


 二人の笑い声が、楽しげだ。


「力を貸して欲しい」


「嫌だ」


 即答だった。


「ハクビ、行こうか?」


 歩を進めるレウスに、駆け足で歩み寄る。


 ハウタが笑顔で、飛び付いてくる。物凄く、ふわふわしている。


 ハウゾウも、飛び付いてきた。少しだけ、ごわごわしている。


「待て!」


 ダリアが立ち上がると、レウスに歩み寄る。


「まだ、やる気?」


 面倒だと言った顔で、レウスが問い掛ける。


「お前、強いな。気に入った!」


 拳を前に、差し出す。


 それを無言で見ていたレウスが、溜め息をついた。


「腹が減った。何か食わせてくれたら、話ぐらいなら聞いてやる」






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