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Jam On The Rock〜頭のイカれたギルドマスターとその仲間が家族になる話〜  作者: 81MONSTER
-忌まわしき古竜の血-
3/9

第三節【竜の息吹】



 どうも、変だった。


 ハクビが気に()って、仕方がなかった。


 偶然、通り掛かった時、ハクビは闇の装束に覆われていた。月光に照らし出されたハクビが、不謹慎だがとても綺麗に見えた。だけど、それ以上に哀しそうに映った。力の暴走に苦しんでいるのは、見ていてすぐに理解(わか)った。


 その苦しみは、誰よりも理解できるつもりだ。自分も、そうだから。


 ――だから、放っとけなかった。


 どうにかして、助けてあげたかった。力の暴走から、救い出してやりたかった。自分はバウルの様に、他人の力を(しず)める(すべ)を持っていない。だから、力を使い果たすまで、付き合ってやる事しか出来ない。正直、体力が持つかどうかなんて、解らなかった。下手をすれば共倒れも有り得た。だけど、関係ない。持てる全てを出してでも、助けてあげたかった。自分と同じ苦しみを抱えている彼女を、見捨てる事がどうしても出来なかった。


 連日のレウスとの組手が、力の()なし方を教えてくれた。如何(いか)にして、最小限の動きで、力を受け流せるのかが、身体が(すで)に理解してくれていた。以前までとは、格段に違っていた。夜明けまでの間に、力尽きるどころか余力を残していた。


 ハクビを抱きかかえて歩いている時、出来るだけ意識しない様にしていたが、気に()って仕方がなかった。そんな不確かな感情を悟られまいと、わざと素っ気ない態度を取っていた。


 だけど、気になって視線を送ると、決まってハクビもこちらを見ている。内心では物凄く焦ってはいたが、それ以上にハクビも慌てていた。それが、無性に可愛らしく思えた。彼女と、離れたくない。ずっと、自分の傍に置いておきたいと、身勝手な感情が心の中を埋めている。


「パパ上、ママ上の事が、好きでござるか?」


 心の中を見透かしているのか、ハウゾウが問い掛ける。人懐っこい笑顔が、可愛らしい。


「パパ、お顔が真っ赤なんに!」


 ハウタが茶化す。


 何故(なぜ)か異様に距離を空けた所から、ハクビがこちらをガン見している。(まばた)き一つもしないその様が、ほんの少しだけ不気味である。


「お前ら、黙ってろ。ハクビ、そんな所に居たら、置いて行くぞ?」


 誤魔化すようにして、歩を進める。


御意(ぎょい)でござる!」


「パパ、ごまかしたぁ!」


「……ご、ごめんなさいッ!」


 三者三様の返答と共に、後を着いて来る。


 ハウゾウは黒狼竜(こくろうりゅう)で、ハウタは白猫竜(はくびりゅう)の子供である。両親は以前、自分が狩った。卵を始末しようとした時に、二人とも(かえ)ってしまった。刷り込み効果で、自分を親だと思っている。殺さなかったと言うよりも、殺せなかった。


 ――滅竜士(めつりゅうし)に、感情は不要だ。


 祖父の言葉に反するが、ハウゾウ達は自分に取って、掛け替えのない家族だ。決して、失いたくない存在だ。そこに今、ハクビが入ろうとしている。これまでの自分には、決して考えられない事であった。


 孤独が常だったのに、今は独りになる事に恐怖を憶えている。



   ●



 闇の装束(ドレスコード)が、ハクビを彩っている。暗幕(あんまく)のドレスに包まれた彼女は、矢張り美しい。だけど、どうしても寂しそうな表情になる。


 意図的に能力(ちから)を使える様だが、感情の起伏に左右されている気がする。昨夜の戦闘(ダンス)理解(わか)った事と言えば、非常に強い力がハクビを支配していると言う事だ。上手く制御できれば、自分の中に流れる古竜の特性(ちから)(あわ)せられる気がする。


「パパ上、拙者(せっしゃ)も助太刀するでござるッ!」


 羽を広げたハウゾウが、炎の吐息(ブレス)を吐いている。


 気付いた時には、囲まれていた。昨夜、ハクビの集落を襲った連中と同じかどうかは解らないが、只の山賊ではないようだ。


「ハウタ、見てても良い?」


 ハウタは傍観(ぼうかん)を決めているが、いつもの事である。


「……あのっ。私に、出来る事……ありますか?」


 強い力を持っているが、ハクビは弱気で自信がない。


「全員、好きにしろッ!」


 古竜の能力(ちから)を、解放する。


 全身を竜鱗(りゅうりん)が覆う。ゆっくりと、呼吸を整える。周囲の空気が、(どよ)めいているのが解る。敵の数は、十を超えているのは、最初の時点で気付いている。数で押せば、勝てるとでも思ったのだろう。


 全身を魔力が(みなぎ)っていく。呼吸と共に、魔力が増大する。体内に流れる古竜の血は、特殊な呼吸法で能力(ちから)が増大する。


 【竜の息吹(いぶき)】によって、更に肉体は覚醒(かくせい)する。


 周囲を取り囲んでいる連中は、一様に黒いフードを(かぶ)っている。手には、ナイフがあった。暗殺者のみで構成されているギルドが()ると、祖父から聞いた事がある。【アサシン・ファング】とか言ったか。構成員は、千を超えている。敵に回すのは、得策ではないが、仇為(あだな)すなら容赦しない。


 ――ハクビを傷付けると言うなら、ぶっ殺す。


 無数の斬撃が、男達を襲い掛かる。


 意外にも、初撃(オープニング・ヒット)はハクビが決めた。相手が反応するよりも速く、動いていた。一瞬で距離を詰めて、破竜刀(はりゅうとう)を引き抜く。魔力の籠った刃が、闇色の斬撃を放つ。三人を同時に切り裂いて、体内で練り込んだ魔力を放つ。


 炎の吐息(ブレス)を男達の一団に向けて、吐き出した頃には背後を取られていた。背筋に悪寒を感じて、破竜刀を振り向き様に放つ。


 破竜刀の刃は、鋼鉄よりも硬い竜の皮膚ですら切り裂く。それにも関わらずに、男はナイフで受け止めている。剣先から、相手の体幹が伝わる。魔力の量や相手の力量を、理解する。


「貴様、滅竜士か?」


 低い、感情の(こも)らない声。


「だったら、どうする?」


 周囲でハウゾウとハクビが、交戦しているのが気配で理解(わか)った。他の連中は、大して強くはない。任せていても、問題なさそうだ。


 だが、目の前の男は別格だ。バウルほどではないが、かなり強い。


「捕まえれば、高値で売れるだろうな」


「随分と、舐めてくれるな?」


 人買いの業者は、この世に唸るほど存在する。


 奴等(やつら)は自分やハクビの様な存在を、高値で買い付けると祖父から聞いている。胸糞(むなくそ)の悪い話だ。


「随分と、荒い剣捌(けんさば)きだな?」


 (わざ)と大振りに、破竜刀を振るっている。古竜の特性(ちから)の一つに、呼吸法が()る。血中に流れる古竜の血は、通常よりも多くの酸素を運んでくれる。その為、呼吸の仕方を意識すれば、体内に酸素を蓄積(ちくせき)する事が出来る。(ゆえ)に、長時間の無呼吸運動が、可能に()る。


 大きく旋回させながら、破竜刀を荒くぶん(まわ)している。速度(スピード)が乗っている為、軌道が荒くとも反撃の隙は生まれない。相手は一方的に、防戦を強いられる。バウルの様に、防御(ディフェンス)事態に圧を掛けてこちらの暴風域を()じ開けれれば別だ。


 ――勝敗を分けるのは、ほんの一呼吸の差や。


 組手を終えて、治療を施している最中にバウルが言っていた。


 一呼吸している僅かな時間や、それを支配している時間次第で勝負は決まる。特に実力が拮抗していたり、自分よりも格上の相手だと、一呼吸の差が勝敗を決定させる。


 一呼吸――()れは、滅竜士に取っては、大きな意味を持つ。【竜の息吹(いぶき)】によって一呼吸で大量の酸素と共に、周囲の魔力を取り込む為、攻撃の拍子(リズム)を容易に狂わせる事が可能になる。


 レウスは呼吸と共に、大きく旋回させていた剣撃を、コンパクトに(まと)め初めていた。一撃の威力は軽くなるが、軌道が複雑になる上に、速度が格段に跳ね上がる。


 更に、体内では大きな魔力が練り上げられ、攻撃態勢が整っている。


 古竜の吐息は、闇の属性を持っている。暗幕の吐息(ブレス)は、視界を阻むだけでは済まない。体内の血中酸素を奪う。()まりそれは、呼吸を奪う事に等しい。呼吸を支配する者は、勝敗を容易に支配する。


 レウスの剣撃を腹に受け、男は地に伏した。


「あ~、疲れた……」


 二日間、不眠不休で連戦している。


 そろそろ、寝たい。


 ハクビ達に視線を送ると、無事に事を終えていた。安堵の所為(せい)なのか、急激な睡魔が押し寄せて倒れていた。






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