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元生徒会長

「いや~いじめを撲滅するために警察を呼んだんだって。勇気ある行動だと思うよ。ご苦労ご苦労」


 生徒会長の仕事が忙しく、他の生徒会メンバーが帰宅した後も晴斗は学校に残っていた。


 そんな中、元生徒会長の浩平が生徒会室に拍手しながら、愉快そうに生徒会室に足を踏み入れる。


「生徒会長…。お疲れ様です」


 敬意を込めて、晴斗は軽く頭を下げる。


「おやおや現生徒会長は君なはずだけどな~。白中生徒会長! 」


 浩平の表情から楽しんで揶揄っているようだ。


「確かにそうかもしれません。でも…俺の中での生徒会長は齋藤先輩ですよ。認識は揺るがないです」


「嬉しいことを言ってくれるね。現生徒会長から、そのような言葉を頂けるとは非常に名誉なことだね」


 浩平は自分の顎に手を当てて、感慨深げにうんうんと首を縦に振る。


 そして、何かを思い出したかのように口を開く。


「それにしても白中生徒会長の目標に1歩近づいたんじゃないかい。演説で力説してたやつだよ。知ってるかい教師陣は今後より一層いじめ対策を強化する方針らしいよ」


 浩平は非常にご機嫌そうだ。鼻歌を交えながら、適当に生徒会室の空いた席に腰を下ろす。


「そうなんですか? それは初耳でした」


 晴斗は驚いた様子だ。晴斗は生徒会室にあるイスで姿勢を正し、浩平の話を聞く体勢になる。


「そうだよ。どうやら教師陣は世間の学校に対する評価を気にしてるらしい。まぁ当然だろうね。半年も経たずに2度も警察が介入すれば、学校のイメージダウンに繋がる。従って、来年度の入学する生徒の数が減少する可能性がある。それを避けるために学校側は必死になって対策を講じるわけさ。だから今年から来年にかけてはいじめ撲滅運動が強化されることになると思うよ。あくまで予測だけどね」


 浩平は両手を組んで、その上にあごを乗せる。まるでこれから起こる未来を見透かすように目を細める。


「そうですか。物事は順調に進んでるようですね。もしかしたら、近い未来で教師陣が多くのいじめを発見し、能動的に対処する光景が常識になるかもしれませんね。いじめを撲滅するために」


 嬉しさで自然と晴斗の表情が緩む。物事が進展するなり、喜びを知覚する性分だ。そんな晴斗を見て、浩平はクスッと笑みを浮かべる。


 晴斗の反応を見た浩平には、彼の心情を悟ることができたのだ。


「そういうことだから。これからも今の調子で生徒会長の仕事を務めてくれ。もし悩みがあれば何時でも相談に乗るからね。遠慮なしに接触して来なよ」


 「はい! その際はお力を借りることになりますが、宜しくお願いします」


 晴斗は大きく返事をした。


「じゃあ俺はそろそろ帰るとするかな。また会おう」


 浩平は立ち上がり、鞄を持って帰ろうとする。だが、ふと思い出したのか、晴斗の方へ振り返った。


「あっ忘れるところだった。生徒会の仕事も大事なだけど、恋愛にも一生懸命になった方が良いよ。恋愛の方が大変だろうから」


 ふっと笑みを溢し、それだけ言い残すと、浩平は足早に帰っていった。


(どういうことだろう? 恋愛を頑張る? この俺が? )


 浩平の言葉の意味が理解できず、1つの疑問が晴斗の胸中に残った。どれだけ頭を巡らせても解には辿り着けなかった。

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