表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

65/68

彼女の訪問

「どういうこと! どうして吉田先輩は警察に連行されたのよ! 」


 吉田達サッカー部員が警察に連行された次の日の放課後。


 吉田の彼女の桃花が生徒会長に乗り込む。彼女の剣幕から必死さが伝わる。


「なんだなんだ騒がしいな」


 架純は嫌悪感を示す。いつも通り生徒会室で書類整理をしていた。副会長の仕事だ。

 

 そんな時、ドアをノックもせずに乱暴に開ける音がする。そこには顔を真っ赤にして怒っている桃花がいた。快く受け入れることは不可能だろう。


「なんで! 警察を呼んだの! しかも生徒会が! なんで生徒会がいじめを解決しないのよ! 」


 怒りが爆発している。相当頭にきているようだ。怒鳴り声が生徒会室に響く。


「そ、それは吉田先輩はいじめという犯罪を犯していたからね。しかも過激な暴力も奮っていた。だから警察に通報した。ただそれだけだよ」


 わずかに桃花の威圧に圧倒されながらも負けずに、晴斗は理由を説明する。


 その言葉を聞いた瞬間、桃花は鬼の形相に変わる。まるで般若の面を被っているかのようだった。


「あんたら最低なクズどもね! 警察を呼ぶなんて! なんで生徒会が敢えて警察に通報するの? そもそもなぜいじめを防止しないの! バカなの!!」


 生徒会役員に向かって桃花は罵声を浴びせる。


 しかし誰も何も言わず黙ったままだ。反論する者はいない。


 それを見た桃花は余計に腹を立てる。


「何よ! 何か言いなさいよ! まさか図星なわけ? あーあ、これじゃ生徒会失格じゃない!」


 生徒会役員に失望した桃花は踵を返して去ろうとする。


 だがその行く手を遮るように架純が立ち塞がる。


「やれやれ彼氏も彼氏なら。彼女も彼女だな」


 呆れながら大袈裟にため息を漏らす。そして冷たい目線を桃花に向ける。


「な、舐めた態度取らないでくれる! 」


 桃花は立ち止まり睨みつける。その眼差しには殺気が込められている。


 そんなことはお構いなしに架純は続ける。


「別に舐めてないけどさ。ただお前の彼氏、吉田は悪いことをした。それだけは理解しろ。」


 桃花は一瞬驚いた表情を見せる。しかしすぐにまた元の顔に戻る。


「そうやって罪を擦り付けるつもり? 本当に卑怯な奴らね! 」


 再び桃花は怒りをぶつけてくる。もう完全に冷静さを欠いている。


「違う。これは事実だ。生徒会長の晴斗が悪いことだと判断したんだ。その結果として警察を呼んだ。あたし達の生徒会長の判断を否定することは許さんぞ! 」


「そうそう。それはつまり生徒会への宣戦布告になるからね」


 架純に続き、祐希も桃花に対して牽制する。


「そうだね。それにうちの生徒会は前会長の力も借りることができる。前会長の生徒からの信用はあなたも知ってるよね? 」


 千里も続けて話す。


「そうなれば、玲香達生徒会以外にも他にも多くの生徒達を敵にするけど。大丈夫? 」


 玲香も話に加わる。


「くっ」


 桃花は後ずさる。先ほどまでの勢いは衰える。桃花は今の状況を理解したのか少しだけ落ち着きを取り戻す。


 しかしそれでもまだ怒りは収まらないようだ。悔しくて歯ぎしりする音が聞こえるほど強く噛み締めている。


「ど、どうしてこうなるのよ…。なんで…」


 捨て台詞を残して桃花は生徒会室を出て行った。目に大粒の涙を溜めながら。いくつもの涙が床に落下する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ