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白中晴斗を幸せにする会

野末 祐希『いじめ傍観者のクラスメイト達の大半が晴君に謝罪しに来たよ。おそらく、野山君みたいなひどい仕打ちを受けたくないからだろうね」


雫 架純『そうか。警察を呼んだ晴斗に恐怖を覚えて、次は自身の身を守るために晴斗に謝罪か。単純な奴らだ』


橘 千里『本当だね。単細胞過ぎて笑っちゃう』


山本 玲香『玲香も同感』


 レインのグループ内でトークのやりとりが繰り広げられる。グループ名は『白中晴斗を幸せにする会』だ。最近、晴斗に都合の良いようなことが起こっているのも、彼女達がこのグループで情報共有していたためだ。野山の件でももちろん情報共有は成されていた。


雫 架純『晴斗はどんな対応をしていた? 」

 

 すぐに3つの既読がつく。異常な速さだ。


野末 祐希『素っ気なく許してた。でも完全には許してないと思う。やっぱり思うところがありそうかな』


橘 千里『私は見てなかったけど、どうせ無表情だったんでしょ?』


野末 祐希『うん。それはもう無愛想な顔付きで許したと思う』


橘 千里『やっぱり……。でもいじめが受けた被害者だからね。白中君は。いくら傍観者だからって、謝罪されて簡単には許せないと思う』


山本 玲香『そうだよね! だって許したら調子に乗るもん!』


雫 架純『それは間違いないな。簡単に許してくれたと奴らは安心もするだろう』


橘 千里『それならいじめの傍観者達にはこれからも冷や冷やしながら学校生活を送ってもらおうかな」


野末 祐希『うん。私はそのつもりだよ』


雫 架純『あたしもだ』


山本 玲香『玲香も!』


 3人の気持ちは同じであった。自分達だけが得をして、晴斗だけが損をするなんてことはさせない。そんなことを思いながらトークを続けていく。


橘 千里『うちも同じ気持ち。ただ白中君には謝っても素っ気なく対応してと伝えないと。白中君は優しいから何度も謝罪を受けると本気で対応しそうだからね』


野末 祐希『わかった。私から伝えるよ』


山本 玲香『お願い』


 そしてしばらくトークが続き、解散となる。


「晴君。1つ伝えたいことがあるの」


 グループのトークが終了すると、祐希はすぐに晴斗の席に足を運ぶ。


「ん? 何だ?」


スマホを机に置き、頬杖をつきながら晴斗は視線を向ける。


「実はさっき……」


 祐希は先程あった出来事を全て話した。いじめのこと。そのことでクラスメイト達が晴斗に謝罪したこと。だが、それで決して許してはいけないということ。


 全てを話し終えると、祐希は真剣な眼差しで晴斗を見つめる。


「だから、あまり気を許すとまた同じことを繰り返すかもしれない。だから、あんまり期待を持たせちゃダメだと思うんだ……。これは他の3人も言ってたことだから」


 他の3人とは架純、千里、玲香を指す。


「……なるほどな。確かに言う通りかもな。あいつらが僕に謝罪してきたのは多分架純達の力を恐れてのことだろ。それに謝れば許されると思ってるところがあるはずだ。現に僕は許すとは一言も言っていないからな。まぁ、あの時も言ったが二度とこんなことが起こらないようにしてくれればいいんだけどな」


 晴斗の言葉を聞き、祐希は安堵のため息を漏らす。良かった。これならまだ希望はある。


「晴君が納得してくれてよかった。じゃあ、対応の方は宜しくね。もし不明な点があったら、いつでも私に聞いてね」


 喜びまたはいじわるな表情が混じった微笑みを祐希は浮かべた。計画通りといったように。

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