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打ち上げ

「また~会いましょう~」


 陽キャの男子がカラオケでアニソンを流行りの曲を熱唱する。


(なぜ俺が打ち上げに。しかも2次会に)


 晴斗は周囲を見渡しながら、胸中で自身を疑うように呟いた。


 時は遡り、2時間ほど前。


「よ~し! 今日はクラスで打ち上げをしようぜ~」


 クラスのお調子者の陽キャが帰りのホームルーム終了後、クラスメイト全員に呼び掛けた。


 当然、陽キャ達は同じ波動を放つため、好意的に同意する。類は友を呼ぶだ。


 陽キャに触発され、スクールカースト中間の生徒も参加を表明する。あれよあれよと人数が集まる。


「ねぇねぇ晴君も参加するよね? 」


 目を輝かせながら、祐希が晴斗を打ち上げに誘う。


 晴斗は参加するつもりはなかった。陰キャなため陽キャのためのイベントである打ち上げなど眩しい。


「どうなの? もしかして参加しないの? 」


 あからさまに祐希は気分が落ちる。返事がないことに不審に思い、結果として悪い未来を想像したのだろう。


 流石に申し訳ない気持ちを覚えた晴斗は渋々打ち上げに足を運んだ。


 祐希を悲しませたくなかった。そのためには、打ち上げに行くのが妥当な判断だった。


 打ち上げの場所は中華料理専門のバイキングだった。


 そこでは、基本的に祐希と過ごした。祐希がべったり密着し、離れなかった。


 2次会を開催する話になった。


 流石に晴斗は帰宅するつもりだった。


 だが、またもや晴斗は祐希に誘われてしまった。


 当然、拒否できず今に至る。


「どう? 晴君楽しい? 」


 オレンジジュースの入ったコップを手に持ち、祐希が晴斗の隣に腰を下ろす。


 周囲は祭りのように騒いでいる。テンションマックスだ。


 普段大人しいクラスメイトもテンションが高い。


「まあぼちぼちかな。あまり慣れてないんだよね打ち上げとか」


 晴斗は正直な気持ちを吐露する。


 実際、1次会の食事会からそわそわして落ち着かない。


「そっか! じゃあ、私が晴君を楽しませてあげるよ。一生の思い出になるくらいに! 」


 満面の笑みを浮かべ、祐希は晴斗の肩に頭を置いた。


「私達2人で楽しもうね! 2人だけの世界を作ってね! 」


 甘い吐息が晴斗の肩に降りかかる。それだけで晴斗の鼓動はドクンドクン加速する。


「だ。大丈夫? クラスメイトの前で男子の肩に頭なんか置いて? 」


 落ち着かず、身体が熱いながらも尋ねる。


「ふふっ。大丈夫だよ! みんな騒ぐことに夢中だから」


 祐希の言う通り、周囲のクラスメイト達は大騒がし。晴斗と祐希に目も暮れない。

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