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情報拡散

「ねぇねぇ。昨日、クラスの野山君が風紀委員の雫さんに告白したらしいよ」


「え!? 本当に! ショック! 私、野山君のこと狙ってたのに」


「安心して。野山君フラれたらしいから! 」


「本当に! それは安心した」


 2人の女子の話がきっかけに情報は一気に拡散される。


「おいおい。さっきの女子の会話を耳にしたか? 」


「ああ。当然だ。まさか野山が告白した上、フラれるとは。前代未聞だな」


「あの超絶イケメンでもフラれるのか」


 クラスメイト達は野山のフラれた事実を話題のおかずにする。


 当然、野山の耳に入り、苛立ちを隠せない。だが、怒鳴り声をあげたりはしない。そうすれば、野山のイメージは悪いものになり、スクールカーストも低下してしまう。


 そのために、居心地悪そうに静観するしかない。この行動が正解だ。


「周囲は盛り上がってるみたいだけど。雫さん、告白をフッたのは本当なの? 」


 いつも通り晴斗の席近くに佇む祐希が疑問を投げ掛ける。


「ああ。本当だ。昨日、告白されたが、躊躇なく断った。すぐに告白の返事は必要ないと言われたがな。全然好意を抱いてなかったからな。そんな猶予は必要なかった」


 声を落とさずに、周囲に聞こえるように架純は答える。


「そうなんだ。それは可哀そうだね。好意がないなら仕方ないけど。好きでもない相手と付き合うのが1番失礼だからね」


 千里は野山の気持ち推量し、心を痛める。同情しているようだ。


 ざわざわ。


 架純の言葉を聞き、周囲の声がより喧騒になる。


 架純の予想外の言葉に野山は戸惑いの顔を示す。まさか、架純から証言のある言葉を発するとは思わなかったのだろう。完全に虚をつかれたみたいだ。


「お、おい。わざわざ口にしなくてもよかったんじゃないか? 」


 流石に気の毒になり、晴斗は軽く架純をたしなめる。やりすぎだと感じた。


「安心しろ晴斗。もう余計なことはしない。ただ1つ罰を与えただけだ。いじめを傍観していた上、楽しんでいた愚かな人間にな」


 架純は真顔で返答する。一切、罪悪感など覚えていない表情で。


(こぇぇぇ~~~。でもありがとうー-)


 恐怖と同時に感謝もする。架純は晴斗のために意図的に野山をフッた事実を口にしたのだから。晴斗は容易に理解することができた。


「さて、周囲は騒がしいが、あたし達は気にせず楽しい会話をしようか! 」


 空気を一変させるように、架純は両手を合わせる。


 パンっと心地よい音が晴斗の鼓膜を刺激する。


「それで、ヨムカクに関する話なんだが。晴斗は今日のラブコメランキングをチェックしているか? 」


 平然と架純から話題を変更した。

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