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生徒会室にて

「やぁ! 約束通り生徒会室に足を運んでくれたね」


 生徒会室の前で千里は待機していた。おそらく、晴斗を待っていたのだろう。


「わざわざ出迎えてくれたの? 」


「うん! 白中君は貴重な情報を提供してくれるお客さんだからね。これぐらいの、おもてなしは当然だよ」


 薄く微笑み、千里は生徒会室の戸を開く。


 様々な書類や備品で溢れる。学校の重要な情報が集中しているのだろう。


 生徒会室の真ん中に1つの机がある。そこに1人の男子生徒が腰を下ろす。


「君が白中晴斗君かな? 身の危険を感じ、勇敢に警察を呼んだ」


 男子生徒は立ち上がる。そのまま、晴斗に歩み寄る。


「初めまして。生徒会長の斎藤浩平だ。宜しく」


 浩平は軽く会釈する。会釈の姿勢は理想的であり、15度だけ身体を傾かせる。


「生徒会長? もしかして生徒会長が俺の話を聞くんですか? 」


 驚きを隠せない晴斗。いじめに関する話は千里が聞くとばかり思っていた。


「あぁそうだよ。学校の治安を維持する生徒会所属の者として、本校で起こったいじめについて情報をインプットするのは当然の仕事だ」


「大した話ではないですけど大丈夫ですか? 」


「それでも構わない。直感だが多分この学校にとっても君の話は重要だ。今後のいじめ再発防止対策にもなり得るのだから」


 真剣な目で浩平は晴斗を捉える。鋭い目は決して晴斗を解放しない。


(この人は本気で生徒会長という職務を全うしているのだろうな)


「それでいきなり本題に入ろう。橘、白中君の話に関するメモを頼む」


「かしこまりました! 」

 

 制服の胸ポケットから、千里はボールペンと小型のメモ帳を取り出す。


 1ページ目を開き、準備万端だ。


「まず、風紀委員の週報である程度知ってはいるが。君をいじめた生徒の名前を教えてくれないかな? 名字だけで構わない」


「…えっと。今泉、岸本、今水の3人の男子生徒です」


 名前を口にするだけで嫌悪感が生まれる。身体に鳥肌を生じるレベルだ。


 同伴していじめられた過去も強制的に脳内にフラッシュバックする。


「今泉、岸本、今水…っと」


 名字を呟きながら、メモするを手を千里は動かす。女の子らしい丸文字がメモ帳に記入される。


「なるほど。風紀委員の週報にメインで取り上げられた2人が岸本と今水。警察に連行されたのは今泉で間違いないかい? 」


「間違いないです」


「うん。次に、いじめの内容について。どんな危害を加えられた? 」


「…そうですね。…肩パンをされたり身体中を殴ったり蹴られたりされました。最終的に警察に連行された今泉に学生カバンで頭を殴打されました。その後は、皆さんがご存知の通りです」


 嫌な過去を回想しながら、事実を述べる。


 いじめの内容を言葉で紡ぐ度に、憎き今泉、岸本、今水の嬉々とした顔が頭から離れない。うざいほど頭にこびりつく。


「そうか。確か、学生カバンで頭を殴打され、流血し身の危険を感じて警察に電話したんだね。素晴らしい勇気と行動力だ。ちなみに、クラスメイト達はいじめを見て見ぬフリをしていたんだね」


 浩平は晴斗を称える。


「残念ながら1人も助けてくれませんでしたね。見て見ぬフリが大半で。酷い場合は、いじめられている姿を視認してバカにしたように笑みを溢していました」


 当時のクラスメイト達の顔は忘れない。関係ないフリをするために俯くクラスメイト。今泉、岸本、今水同様に楽しそうに笑みを絶やさなかったクラスメイト。


 各クラスメイト達の表情が脳に記憶として焼きつく。今泉達、いじめの加害者ほどではないが、大部分のクラスメイト達は晴斗にとって憎き人物達だ。


 これらの対象に祐希は含まれない。


「なるほど。本日は時間を割いてくれてありがとう。橘もメモは完了してるか? 」


「イエッサー! 完了しております」


 ビシッと千里は敬礼のポーズを決める。


「白中君。もし君に危害を加える人物が再び現れたら生徒会に遠慮なく頼って欲しい。全勢力を持ってその人物に罰を与えるからね」

  

 意味深な笑みを形成する浩平。不思議と不気味さもある。


「うん。遠慮なく言ってね。無理はダメだからね」


 なぜか、千里はサムズアップする。変人なのだろうか。


「ありがとうございます。その際は助けを求めますね」


 心に染みるものがあった。自身を心配してくれる存在。これまで皆無だった存在。


 そんな存在が居てくれるだけで心強い。


「遠慮はいらない。生徒会を自由に利用してくれ」


 生徒会は晴斗の仲間に加わった。そう表現しても過言ではないだろう。

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