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第5話 わたくしの証言者

「「お、恐れながら申し上げます」」





 振り向くと、そこには、フローラ様とコルネリア様がいらっしゃいました。


 お2人とも、真っ青な顔色で、少し震えていらっしゃいます。わたくしの危機と見て、勇気を振り絞って、お越しくださったのでしょう。



 わたくしは胸が熱くなりました。そして、『嫌がられるかもしれませんが、お2人には、後ほど証言をお願いするしかありませんね』などと考えていた自分が恥ずかしくなりました。





「ホルヴェーク子爵が娘フローラにございます」


「シリングス子爵が娘コルネリアにございます」


「発言を許す。申せ」




 最初に語り始めたのはフローラ様でございました。



「確かに、校舎裏に、カトリーナ様をお呼びし、エミリア様と私どもが一緒になって、お話をしたことはございます。が、決して、危害を加えようとしたわけではございません。


 実は、カトリーナ様は、婚約者のいらっしゃる殿方にも、お近づきになろうとなさることがございました。


 女生徒の総代でもいらっしゃる、エミリア様は、貴族家の者として、淑女としての心得を教えて差し上げようとなさいました。しかし、やんわりとお話ししても通じませんし、お手紙を差し上げても通じません。


 それでカトリーナ様をお呼びし、お話をしたのでございます」




 髪を入れず、コルネリア様が続きます。



「また、確かに、カトリーナ様は、階段から落ちてケガをなさいました。ただ、それも、エミリア様に突き飛ばされたからではございません。


 あの日、カトリーナ様はエミリア様に階段で呼び止められたのですが、『無闇むやみに上階へ行かないように』とおっしゃるエミリア様のお言葉に、いつものように反発なさり、憎まれ口を発されたあげく、言い負かされてしまわれました。


 すると、カトリーナ様はご立腹され、あろうことか、エミリア様に跳びかかって行かれたのです。そして、ひらりと体をかわされたエミリア様の脇をすり抜け、そのまま階段を落ちて行かれました。


 ですから、カトリーナ様のお怪我は『突き落とされた』のではなく、自ら『落ちた』ことが原因でございます」




「教科書や服の件につきましては、生活している階も違いますのに、どのようにして行なったとおっしゃるのでしょうか? 失礼とは存じますが、逆にお聞かせ願いたいぐらいでございます」




「エミリア様は、言いにくいことでも、相手に面と向かってお話しすることの出来る、勇気のあるお方。教科書を汚したり、服を破いたり、といった陰湿なことをするお方ではございません。


 これは、私ども以外の者にお聞きいただいても、エミリア様をよく知る方なら、皆、そうおっしゃるはずでございます」




「たしかに、いくら聞き分けがなかったとはいえ、上級生が、多数で下級生を囲んでしまったり、言い争いの延長だったとはいえ、階段を落ちて行かれたカトリーナ様の治療を下級生に任せてしまったりしたことは、責められても致し方ございません。


 しかし、これは、エミリア様だけの責任ではなく、私どもも同罪でございます。もし、エミリア様を罪に問われるとおっしゃるのであれば、私どもにも同様の罰をお与えくださいますよう、お願い申し上げます」






「ホルヴェーク嬢、そちの話に間違いはないか?」


「間違いございません」


「シリングス嬢、そちの話に間違いはないか?」


「神に誓って、間違いございません」





 わたくしは、涙がこぼれ落ちそうなのを耐えるのに、必死でございました。


 わたくしは、本当に素晴らしい友人に恵まれました。


 お2人の友情に報いるためにも、この戦、勝って無罪を勝ち取らなければなりません。


 そう、これは、わたくしとあの女、カトリーナとの、『人生を賭けた戦』なのです。












 確かに、これは『わたくしの人生を賭けた戦』のスタートだった。


 それにしても、あの時、わたくしは面白いことを考えたものだ。


 根本は合っている。




 まあ、それ以外は、ほとんど見当外れだったのだけれども……。










 ついに皇帝による断罪が行われる。果たして断罪されたのは誰か? 次回は『断罪』。お楽しみに!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 反論の証言に対して、ぶりぶりぶっりっこなカトリーナはどう出るのだろうか。 それにしてもいい友人◎
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