第25話 ※皇弟ヴィルヘルムの野望
※閲覧注意です! 読む人によっては不快に感じるかもしれません。もし腹が立ってしょうがなくなったら、ブラバするか、最後の3行だけ読んでいただくと良いかと思います。
※「ら!」はわざとです。
世は皇弟ヴィルヘルムなるぞ、頭が高い。控えおろう!
ボクちん……じゃなかった。世は偉いんだぞ!
死んじゃったパパは元皇帝。ママは皇太后。お兄ちゃんは皇帝だ。みんな僕の言うことを聞いてくれる。
ああ、そういえば1人だけ文句を言ってくるヤツがいる。フェルディナントって言うヤツだ。みんなはパパの子だって言うんだけど、あんなのどっかで拾ってきた子に決まってる。
だって、ボクちんに文句を言うんだ。元皇帝にだって言われたことがないのに!
このあいだも、皇帝に「処して」って言ったんだけど、「役に立つから駄目」だって。ちぇ!
お兄ちゃんはこれまで、ボクちんのいうことは何でも聞いてくれてたのに。つまんないの!
とりあえず、何かして遊ぼう。
今日は、下民どもに石をぶつけて遊ぼうかな。でも、最近門の周りに下民どもが近寄らなくなっちゃったんだよな。
前にやった侍女を裸にしてムチで叩く遊びは面白かったんだけど、フェルディナントのヤツがママに言いつけるから止められちゃった。
あいつめ!
ボクちんが皇帝になったら絶対に処してやるんだ!
このあいだ、皇帝がお嫁さんをもらった。隣の国の姫だって。
ボクちんも姫がお嫁さんにほしいって皇太后に頼んだら、「良い相手を探してるから待ちなさい」だって!
ボクちんは、今ほしいのに! 面白くないの!
家来のハンスに言ったら「愛妾を持たれてはいかがでしょう」って言うんだ。
「『あいしょう』って何するんだ?」って聞いたら、「地位の低い娘が、高貴なお方にお情けいただくのでございます」だって。
うほ! そんないいものがあるんだ! 最近あそこがむずむずするし、ちょうどいいや。
じゃあ、早速『あいしょう』を選ぼうかな。
そういえば『エミリア・ローゼンブルグ』って女は、お兄ちゃんから罰せられた罪人だって聞いたぞ。フェルディナントと仲良くしてるって話も聞いたことがあるから、1人目はそいつだな。
それから、2人目は最近旦那が死んじゃったっていう『ロベルティーネ・ポルメルン』って女がいいな。若奥様で未亡人。うほ! そそるぅ!!
ん?
ハンス。どうした? 顔が引きつってるぞ。
なんでもない?
そうか。じゃあ早速、その2人のところに行って、「『あいしょう』にしてやるからありがたく思え」って言ってこい!
ほれ、ぐずぐずしないでさっさと行け。
意味がわからん。
皇帝が行方不明になっちゃった。
『あいしょう』①は、お兄ちゃんと一緒に行方不明だし、『あいしょう』②は、別の男と結婚するから駄目だって言ってきたんだ。
皇太后に『あいしょう』にしたいから、結婚するとか言ってる相手を「処して」って頼んだら、ママ倒れちゃった。
うーん。困ったぞ。
シャクに障るけど、フェルディナントのヤツが、お兄ちゃんを助けに行くって言うから、「ついでに『あいしょう』①も捕まえてこい!」って命令しておいた。
お前、少しぐらいは役に立てよな。
お兄ちゃんが死んじゃった。ママも死んじゃった。
じゃあ次はボクちんが皇帝だな。
皇帝は、自分のこと「ちん」って言うんだぜ。ボクちん、物知りだろう!
お兄ちゃんも前は「おれ」だったのに、途中から「ちん」って言ってた。でも、ボクちんは元々ボクちんだから、余裕だな。
そういえば、お兄ちゃんのお嫁さんの姫が未亡人になった。姫で若奥様で未亡人だぜ!
うほ! これは『あいしょう』にするしかないな! うーん楽しみだぜぃ。
なんか、皇帝って順番でなるのかと思ったら、『せんていこう』っておじさんたちが、選ぶんだって。そんなの聞いてないよ!
いつもは7人いるから決まるんだけど、今は6人しかいないから、ボクちんと生まれたばっかりのお兄ちゃんの子どもで、まっぷたつに割れちゃったらしい。
お兄ちゃんの子どもは、まだ赤ちゃんなのに、フェルディナントのヤツはあっちに付いた。やっぱりあいつは敵だ。
『あいしょう』も捕まえられないし、お兄ちゃんも死なせちゃったくせに、でかい顔をするなよ!
こうなったら戦争ら!
ふふん。さすがはボクちんだな。投票では票が割れちゃったけど、兵隊の数ではボクちんの力に勝てるわけがない。最初からこうやって決めれば面倒くさくなくて良かったのに。
ボクちんの味方は10万人。フェルディナントたちは6万人。見ただけで圧勝圧勝!
それ、下民ども、突撃だ!
やったれ!
処せ!
お、お、もう少しでフェルディナントの所だ!
それ行け!
もっと行け!
あと一息だ! ってうるさいな!
わ、なんか後ろから、鬼みたいなのが突撃してきた。
ハンス助けて!
やば。ハンス刺されちゃった!
でも、ハンスは、鬼みたいなヤツにしがみついたままだぞ!
ラッキー! 今のうちに逃げよう!
下民どもがいくら死んでも、ハンスが死んじゃっても、ボクちんさえ生きてれば、なんにも問題ない。はやくキールのおじさんの所に!
そう思ったとき、ボクちんは、すごい勢いでくるくる回った。
なんか一瞬、下の方に頭がない体が見えて……。
「敵将ヴィルヘルム討ち取ったり!」
ある意味被害者かもしれませんが、どう考えても一番の加害者だった皇弟ヴィルヘルムは、退場しました。では、フリードリヒ陣営を大勝利に導いた我らが皇兄フェルディナントは、果たしてどうなったのか。戦いの結末を、その後の人生を、新皇帝フリードリヒ5世が語ります。次回は、『皇帝フリードリヒ5世』。お楽しみに!




