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罪の鬼神と過ちの女神  作者: 坂本 天
第2章 白銀の願い
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向かう前の最終準備


 作戦会議も終わり、万全の準備を期すためにそれぞれが思う場所へと向かった。

 会議が終わったのが午前十時すぎくらい。目的の古代遺跡に向かうのは正午なのでまだ時間には余裕がある。

 

 ということで、俺は現在まだ生きているラフォレの町の武具鍛冶屋に来ていた。ここもそれなりに損傷はあったものの、冒険者や衛兵さんたちの力になれるならと替えの武器のよういやらをしてくれたのだ。

 

 それにしても、ラフォレの町はそれなりに大きい町のようで、比例するように武具店の大きさや品ぞろえも豊富だった。壁に掛けられた大槌やバトルアクス。他にも長槍やロングソードなどなど種類は様々だ。しかし――。


「……やっぱり刀ってあんまりないものなのかな」


 この世界に転生してから、前世では主武器となっていた刀を見たことがない。ガレス曰く、王都や東の国にはあるようだが、基本的にはあまり売られるものではないらしい。


 最悪、どうにか手に入れる術はカーミラから教えられているし、それが無理でも王都で手に入れればいい。

 一応、キャメロットに行く父さんに頼んでおくべきだったかと思ったが、そんなことは後の祭りだ。

 いろいろと考えた後、はぁとため息が漏れる。


「なんだぼうず、お気に召すもんはなかったか?」


 店の奥からこの店の店主らしき男が、俺のため息に反応し顔を出してきた。

 見た目的にはおそらく六十くらいの年配で、スキンヘッドに少し長めの顎髭が生えている。雰囲気は親方だったり師匠と言ってしまいたくなるような感じだ。


「あ、いやその、刀はおいてないんだなあと思いまして」


「刀? なんでまたそんな珍しいもんを」


「え? ああっと、ちょっと使ってみたいなーって」


 前世で使ってたからです、とは言えないし仮に言ったところでどうせ信じてもらえないので適当にごまかしておく。


「ふうん、なるほどねえ……」


 すると、店主は少し立派な顎髭を指でさするような動作をし、しばし考える。数秒の沈黙の後、老店主は口を開いた。


「オーダーメイドってんなら作ってやらんこともないぞ。もちろん、素材や代金は自腹だがな。それに、お前さん救出作戦に参加するんだろ? 今から始めても多分出発までには間に合わないがどうする?」


 おお、まじか。まさかこんなところで刀を手に入れられるなんて、願ってもない申し出だった。


「本当ですか! ぜひお願いします!」


「今回は町のためにってことで代金はなしでいい。だからまずは素材だな。ぼうず、何か刀の材料になりそうな鉱石なんかは持ってねえか?」


「ああ、それならいいものが」


 俺は腰に掛けてある小さなバックパックから、この前の石の魔物からの戦利品を取り出す。手に収まっているそれは、相変わらず鈍く黒光りしている。


「おお……そいつはストーンゴーレムの核じゃねえか」


「知ってるんですか?」


「知ってるも何も、ストーンゴーレムの核はここらで取れる武器の素材じゃ最高クラスの品だ。これで作った武器は対熱性能や耐久力に優れ、それでいて軽い。その分、手に入れるのは簡単じゃあないんだがな。よくそんなもん持ってたな」


 カーミラに言われるがまま討伐したら、偶然手に入れられたものなのだが、まさかそれほどまでに優秀なアイテムだとは思わなかった。まさか、これも見据えて狩らせたのか……? とはさすがに考えすぎではあるだろうけど、そうじゃないならなんとも恐ろしいやつだ。


「あはは……。まあ、とりあえずこれでお願いします」


 最高クラスの素材なら相当強い刀が出来るに違いない。そう期待を込めて黒く光る魔物の核を店長に託した。


「まかせとけ。最高の刀に仕上げてやる……それと、代わりと言っちゃなんだが、一つ頼みを聞いてくれねえか」




 あっという間に時間は過ぎ去り、出発の時刻となった。

 目標の遺跡は、ラフォレの町から南西に進んだところにあるそうで、俺が入ってきた北門とは真逆の位置に、今回の作戦に参加する冒険者や町の衛兵たちが集結していた。衛兵は町の防衛的に全員を出撃させるわけにはいかないため、全衛兵の半数が参加する形だ。


 全員がそろったのを確認した隊長のゲイルは出発の合図をし、救出のための作戦が開始された。


――――


 時は遡り、アルトリウスがラフォレの町に到着したのと同時刻。

 ディモンド邸では、一時的にルーズヴェルトたちが抜けたため、カーミラが屋敷防衛の準備をしていた。



「カーミラちゃん。何するの?」


「魔物の襲撃に備えて結界を張ります。まあ、来るかはわからないので一応の用心ですけどね」


「へえ~。そんなこともできるのね。それじゃ、お願いね」


「はい、まかせてください――氷結界」


 そう告げ、カーミラは氷の魔力を上空に放つ。白く光るそれはどんどん上昇していき、天井にぶつかったかのように弾けて全方位に広がった。地面に達すると、屋敷を中心に半球状に包み込んだ結界が一瞬だけひかり、その後色を失い透明となった。

 

「よし。これで大丈夫です」


「消えたように見えたけど大丈夫なの?」


「はい。不可視状態になっただけで実際には存在しています。この結界はそう簡単には魔物を通しませんが、準備するのに越したことはありませんから、もう少し手を加えておきましょうか」


 再び氷の魔力を発動し、今度は地面に展開する。およそ四十体ほどの氷像が一瞬にして形作られ、軍隊のようにそれぞれの武器を携えていた。それからすぐ、カーミラの指示によって東西南北それぞれ十体ずつに分かれていった。


「カーミラちゃん。これは?」


「ええっと、私の魔力で作った氷の戦士たちです。対魔物用なので、もしルーズヴェルトさんが戻ってきても間違って襲うことはありません」


「それはすごいわね。さすがカーミラちゃん、私の娘なだけあるわ」


「いえいえ、私なんかまだまだで……」


 今でこそカーミラは一級レベルの魔法を扱えているが、かつてはほとんど魔法を使いこなせてはいなかったが、邪神を倒すための英雄たりえる人物を探している三千年もの間に修練を重ねここまでの力となったのだ。それもすべて、あの邪神を倒すという使命のため……。

 二度と、あの人の足を引っ張らないために……。


「……? どうかしたの?」


 考えて黙っていたからか、この世界の母親であるローザが顔をのぞき込んでいた。そこでカーミラは首を振り、


「ああ、いえ。なんでもないです。それじゃあ、今度はふもとの村にも、同様の結界と氷戦士たちを配置してきますね」


「え、ええ。それじゃ、わたしはシロちゃんのところに行ってるわね」


 シロ、とはアルトリウスが森で助けた白髪の少女だ。でも助けたはずのアルトリウスにはちっとも懐かず、逆に私やローザには少しだけだけど笑顔を向けてくれる。

 身寄りもなく、見つけた時はすごくボロボロで、魔物に襲われたと聞いた時はよく生き延びていたものだと思った。屋敷に連れてきてからは、お風呂に入れたり髪を切ったりと身の回りの整理をし、そうしたらすごく可愛くなったのだ。

 それから数日たった今も、相変わらずアルトリウスには心を開いた様子はないけど、時間が経って慣れればいつかは顔を向けてくれると信じている。


 だけど、数日前のあの子の言葉は……。

 数日前の、シロをこの家で引き取っていいと許可が出た時の日のことを思い出す。




 屋敷へと戻ったカーミラはシロがいる二階の一室へと駆けていった。


「シロちゃん、何か思い出すことは出来ましたか?」


「……ううん。まだ、何も」


「そうですか……。どこから来たのかでも分かればよかったんですけどね……」


 多少なりとも情報があれば、その情報をもとにこの子を元の場所に帰してあげることもできる。そして、その情報はこの子の失われた記憶が頼りとなってくるのだ。

 でも失った記憶というのはそう簡単に戻るものではないというのは分かっている。だから、あくまでこれはただの確認作業みたいなものだ。

 なにより、理由は分からないけど彼女には何とも言えない親近感というか、近しいものを感じたのだ。それがなにかを知るために、彼女とはまだ一緒にいたい。それは関係なく、単純にこの子が好ましいと思っているというのもあるが。


「ごめんなさい……」


「……え?」


 予想していなかった言葉に、思わず変な声が漏れた。

 シロちゃんの顔を見ると、わずかに瞳に涙が浮かんでいた。そして、震える声で言葉を続けた。


「……シロが、ちゃんとできてたら……おねえちゃんも困らなかったでしょ……?」


 瞳を潤ませながら自分が悪いんだという彼女に、カーミラは声を大にしながら否定する。


「そうじゃないです! シロちゃんは何も悪くありません、悪いわけがありません!」


「そう、なのかな……?」


「そうです! どこから来たのか思い出せなくても、私たちがあなたの居場所を絶対に見つけ出して見せます!」


「……はは。ありがとう、おねえちゃん」


 涙を指で拭いながら、笑顔を向けて感謝を伝えたシロに、カーミラは「当たり前のことですから」と優しく言った。


「……でも、おねえちゃんもどこから来たの?」


 突然のその言葉に「え?」と言葉をこぼす。多分、さっきまではどこに行っていたのかという意味の質問だろうと考えを巡らせ、


「えっと、私はふもとの村に行ってて……」


「ううん。そうじゃなくて――」


 考えた結果を言おうとすると、どうやら違ったらしく言葉をかぶせるように首を横に振るシロ。


「――おねえちゃんの正体、人間じゃないでしょ?」



 私の正体を見破った……いや、まるで知っていたように言ってのけるシロに私は戦慄した。

 すぐに考えを巡らした。なんでそんなことを知っているのか。まさか、邪神の手先……?

 いや、だとしたらおかしい。この子からはちっとも邪悪な力を感じないのだ。少しでも邪神の力が加わっているなら私が分からないわけがない。


 それなら、彼女の正体はいったい……。



 数日前のことが頭によぎり、シロの本当の正体がわからない今はあの子のことも注意しないといけないのかもしれない。さすがに考えすぎであってほしいけど、最悪の場合も考えておきたい。


「はい。結界があるとはいえ、一応、気を付けてくださいね」




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