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第93話。風竜の長ミンティ・ラナクリフが鞠絵にと持ってきた小箱の中身。鞠絵が驚愕したその中身とは…?

第93話です。

「マ・リエ、開けてみたらどうだ?」

 声をかけてきたのは珍しく、いつもは寡黙なダグだった。

「ダグ」

「せっかく風竜の長殿が、夜をも寝ずに飛んで持ってきてくださったものだろう」

「あ」

 そうだ。どうしてそれに気づかなかったのだろう。

 私がはっとしてラナクリフ様を見ると、彼女は小さな肩をちょんとすくめてみせて、てへ、と笑った。

 ダグに言われて初めて気づいたけれど、その笑顔は疲れて見えた。きっと、通達があってから準備をして、急いで飛んできてくださったのだわ。

「すみませんラナ…ミンティ、ちゃん」

「うん」

 まだ言いづらそうに私がそう呼ぶと、彼女は疲れた顔で嬉しそうに笑った。

「お疲れでしょうに…そんなことにも気づかずに、私」

「いいのよ気にしないで。私はただ、可愛いって評判の聖銀ちゃんに少しでも早く会いたくて、いてもたっても居られなかっただけなんだから」

 この方は…きっと、とても懐が大きくて、優しい御方なのだ。

「マ・リエ、この箱には強い結界が張られているようだ」

 ルイに続いて、タニアも頷く。

「そうですね。きっと姫様にしか開けられないのではないでしょうか」

「私もそう思うわ。だから、開けてみて…マ・リエ」

 サラにも促されて、私は頷きそっと箱を指でなぞってみた。

 箱は単純に一辺だけ金具で留められていて、宝箱やオルゴールのように上に押し開けるタイプのもののようだ。少し力をこめてみると、何の抵抗もなくすっとフタが持ち上がる。

 風竜が開けていないとすれば、聖銀竜だけが開けられるというのは本当のことのようね。

 ゆっくりと開けてみると、その中には綿を内包した真紅のビロードが敷き詰められていた。

 そして、中央に静かに収められていたものは。

「これは…!」

 白銀色の、手のひらサイズのウロコが一枚、ビロードの上に輝いていた。

『姉上だ…!これは、姉上のウロコだ…!』

 ナギが私の中で叫ぶ。

 やだ、これは本当のことなの?

 残りのウロコを探さなければと思っていた矢先に、二枚目のウロコに出会えるなんて。

 私はそっと真紅のビロードから白銀色のウロコを取り出して、右手のひらの上に乗せ、その上から左手をかぶせた。ウロコからあたたかな魔力が流れ出てきて、手のひらをあたためる。

『姉上…あたたかい…』

 気持ちよさそうに、ナギがローズクォーツ色の瞳を細めた。

「なに?何が入っていたのかな聖銀ちゃん?」

 その場にいた私以外の全員の疑問を、ラナクリフ様が代弁した。私は左手をどけて、右手のひらの上のウロコを皆に見せる。

「これは、…はっ!」

「ウロコ…のようですね。しかも…ってこれは…!」

 さすがに真竜のリヴェレッタ様とスーリエ様にはすぐに分かったらしい。ラナクリフ様は言葉には出さずに、ただじっとウロコを見つめていた。

「これは…竜のウロコ?それも白銀色だなんて、もしかして」

 サラがユニコーンと雷虎を代表して声を上げるのに、私は答えた。

「そうよ、これは聖銀竜のウロコ。おばば様からもらったのと同じ、私と融合したナギのお姉さん、ナユのウロコよ」

「やっぱり!」

「そうだったのか」

「あのウロコ以外にもあったとは…」

「この中には、創世の頃に封印された、数々の情報が眠っているのよ」

「なんと姫様、それは確かに封印のかかった宝箱に入っているにふさわしいものですね」

「そうね。私にとっても特別な宝だわ」

 さっきラナクリフ様は、他の長も持っている、と言っていた。

 ということは、明日までに集まってくるだろう竜の長たちの何人かが持ってきてくれれば、もっとナユのウロコが集まるということだ。

 楽しみね、ナギ。

 情報も必要だけれど、それだけナユの言葉が聞けるということだものね。

『そうだな』

 私の中でまた眠そうにしながらも、ナギは嬉しそうだった。(続く)

第93話までお読みいただき、ありがとうございます。

ほかにもウロコが集まってくるのでしょうか。

また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。

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