第89話。お風呂に入ってくつろぎ、はしゃぐ鞠絵とタニアとサラ。どのようにお互いの絆を再確認したかというと…。
第89話です。
「そういえば、タニアは竜の強い魔力で酔っぱらうみたいで、最初に会ったときも私の魔力に酔っていたけれど、今は大丈夫みたいね?」
黒鋼竜たちに囲まれても酔わなかったし。
そう聞いてみると、タニアは肩をすくめるようにして少し照れくさそうに言った。
「そうですね、もう初めにお会いしたときはネコにマタタビ、お恥ずかしいところをお見せしちゃいましたが…今はだいぶ慣れました。それに、姫様の魔力には神気がかなり含まれているので、今は酔うというより気持ちがいいですね」
そうなのね。私の魔力が心地いいんだったら良かった。ユニコーンたちもそうなのかな?
サラに問うてみると、そうね、と微笑んで頷いた。
「今まで色んな竜に会ってわかったけれど、マ・リエの魔力は確かにとても心地がいいわ。傍にいて気持ちいい。あなたについてきているのはもちろんそれだけが理由ではないけれど…」
「私たちは姫様がだあい好きなのですよ!」
「ええっ」
それはとても嬉しい。
私も皆が…サラもタニアも、ルイもダグも…大好きだもの。
「だから、私…ずっと姫様と一緒にいるんです!」
ぎゅっ。
「きゃっ、む、胸が、胸が当たってるから離れて、タニア!」
や、柔らかいです。でも圧があって、このぐいぐい押しつけられてくる感じがなんとも恥ずかしい。
「いやでーす!ずっと一緒にいるうちに、姫様ご自身を好きになったんです。ですからこれからも一緒にいるっておっしゃってくださるまでは、こうしてくっついてます!」
「ずるいわタニア!私だって!私なんて、マ・リエがこちらの世界に来てすぐに出会っているんだから!抜け駆けは許さないわよ!」
反対側から、サラが私に抱き着いてくる。浴槽の中でお湯がばしゃばしゃっと跳ねて、タニアがきゃあ、と声を上げた。
「も、もう、サラまで何するの。二人とも、私も大好きよ。ルイやダグのことだって。だから皆には、ずっと私と一緒にいてほしい。お願いしてもいい?」
すると二人は私から顔を上げて、それから二人揃って声を上げた。
「「もちろん」です!!」
「きゃあ、嬉しい姫様。姫様からそんなふうに言っていただけて、タニアはお傍つき冥利に尽きます!」
「友人として、とても嬉しいわマ・リエ。きっとルイとダグも同じ気持ちよ」
二人とも…本当にありがとう。
この世界にやって来て、一人ぼっちになったと思ったとき、ユニコーンたちに出会った。不安で仕方ない私に優しく接してくれて、とても有難かった。
それから出会った人々も、私を受け入れてくれている。
この世界で、私はもう一人ぼっちなんかじゃないんだ。
「ありがとう」
私が照れくさそうに、それでも本心からそう言うと、二人は顔を見合わせてから私を見つめて微笑んでくれた。
大好きよ、本当に。
それから浴槽から上がってお湯をかぶり、脱衣所では二人が私の髪をタオルで拭いてくれた。またさんざんに褒められたのでちょっと恥ずかしい。
ユニコーンになった時の毛色のような、大地色のサラの髪だって、雷のような黄金色のタニアの髪だって、とても綺麗なのに。
そう私が言うと二人は顔を見合わせて、それから照れたように赤くなった。やだ、可愛い。
「さっぱりしたわね」
「気持ち良かったです」
「そうね」
お風呂から出れば、少しひんやりして感じる廊下がとても心地良かった。
部屋に戻って水を飲んで、お布団にもぐったとたんに私は寝落ちしたみたい。
そこまで自覚はなかったけれど、相当疲れていたんだなあ、私。(続く)
第89話までお読みいただき、ありがとうございます。
皆で入ったお風呂が気持ち良かったようでうらやましいですね。
また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。




