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第83話。おばばに謎に思っていることを聞く鞠絵。只人たちは何故竜のタマゴを欲しがるのか、なのに竜たちはなぜ只人たちを滅ぼそうとはしないのか?

第83話です。

 私は皆に囲まれた隙間から出て、おばば様に話しかけた。

「おばば様、お聞きしたいことがあります」

「はい、なんでしょう」

「あの、疑問に思ったのですが…只人は何故、竜のタマゴを欲しがるのでしょうか」

 あの後聞いたのだが、炎竜のタマゴを盗んだのも只人だったとのことだし。

 おばば様はひとつ頷き、それは…と話し始めた。

「只人は何も持たないがゆえに、この界で最も強い竜の力をわが物としたいのだと思われます。しかし、真竜…いや亜竜ですら、大人は飼いならすことはできないゆえ、タマゴから育てて飼いならそうと思うのでしょう。確かにタマゴから孵せば、幼い竜には隷属紋が打てますが、亜竜ならともかく大人になった真竜には隷属紋なぞ効きませぬ。隷属紋を弾き飛ばされて殺されたという話も聞きます」

「…そうなんですね…」

 なんという、人間ゆえの強欲だろう。

 国王などが自分の強さを誇示したくて、タマゴを盗もうとするなんて。

「只人は大した力も持たないのに、他の生命に対して悪さばかりしているようなイメージがあります。それなのに竜たちは只人を滅ぼそうとは思わなかったのでしょうか」

 おばば様はふっと微笑んで、ひとつ頷いた。

「只人は我らの遠き祖先でありますゆえな」

「祖先?」

 そういえば、キアのところで聞いたこの世界の成り立ちの話にあったような。

 私が青銀色の髪を揺らして首を傾げると、おばば様はまたひとつ頷いた。

「我らは遠き昔、竜と只人が融合して更なる力を得て、混じりものとなった者たちの子孫でござります。聖銀竜には混じりものはおりませんでしたが、神金竜と黒鋼竜は混じりものとなってその力を発揮し、その血を残したのです。ですから、只人は我らの祖先なのですよ。どんなに困ったことをされても、滅ぼそうなどとは思いませぬ。それに只人は魔道具などを作る才能に優れており、それは我々にとっても恩恵となっておりますし…」

 それにこんな話もあります、とおばば様は話してくれた。

 遠き昔、エリクとシャーリーという只人の魔道具師兄妹が結界を作れる道具を作りだし、ほころびから漏れる邪気を結界で防いで、多くの命を守ったという。

 そして最後は自分たちの命を魔力に変え、命尽きるまで結界を守って死んだ。

 その魔道具の結界は、竜や結界魔法を使える種族のものに比べると弱く、範囲も小さいものであったけれど、結界魔法を使えない種族にとっては大いなる救いとなったのだそうだ。

 そういうこともあるから、只人は厄介だと思いこそすれ滅ぼそうとは思わないのだ、と。

 只人も、この世界のためにがんばっている人もいるのね。

 それはよくわかったわ。

 あ、そうだ。

 さっきのおばば様の話の中では、聖銀竜だけが混じりものとならなかった。その理由はなんなんだろう。

 不思議に思っておばば様に問うてみた。

「聖銀竜は、もととなった銀竜自体が混じりものとなるのに相性のよい人間がいなかったと伝え聞いております。他の二竜と同じように神の力をいただいたので、聖銀竜となってその力をふるうことはできましたが、混じりものとなることはありませんでした。ですからあなた様のことを信じない者がいても、仕方のないことなのです」

 なるほど、混じりものとなるには確かに相性は必要だものね。

 人間の魂の力を得なくても、銀竜は神の力だけでほころびを封じ維持する力を持っていたんだ。

「神金竜はほころびを閉じるため、元の竜以上の力が必要となり、神が只人に話をもちかけて融合したと伝え聞いております。我ら黒竜は与えられた少ない神の力だけでは彼らを守ることが困難だったので、更なる力を得るため只人と融合して混じりものとなったのです」

「神さまが只人にもちかけたのですか?」

 私はおばば様の説明のその部分に驚いて、ナギと同じローズクォーツ色の瞳を見開いた。

「はい。そうして神のはからいで生まれた創世最初の神金竜はヴァレリア・ヴァレリーという御方で、元は古代アトラス王国の女王であらせられた只人です」

 えっあのアトラス帝国と同じ名前!?

「アトラス帝国の前身でございますね。この世界の成り立ちの話を御存じですか?」

「はい」

 確か、キアのところで聞いた話よね。

 私はミシャの話を思い出しながら話してみた。(続く)

第83話までお読みいただき、ありがとうございます。

ヴァレリア・ヴァレリーとは一体。

また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。

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