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第80話。着替えの際、光竜ハリー・スーリエの姉ヘレナと出会う鞠絵。おなかにタマゴがあるという彼女が語ったこととは…。

第80話です。

『どうした、マ・リエ?』

 ううん、なんでもない。きっと気のせいよ。

 でもちょっと気になった私は、やがて控えめなノックと共に部屋にやって来た真竜の女性に聞いてみたのだが、少し眉を潜めた彼女に山脈の向こうは荒野で誰も住んでいません、と言われたのだった。

「それよりも意識が戻られて良かったです。皆さんそれはもう心配しておられましたよ」

「す…すみません。だいぶ疲れていたみたいで…」

「そんな、謝られることではありませんよ。では皆さんをお呼びいたしますね。それとももう少し、お一人でいられますか?」

 私は首を横に振った。急に倒れたりして、今も皆心配しているだろうし、ナギとの話も終わったから、もう一人でいなくてもいい。

「いいえ、もう大丈夫ですから、私が行きます。皆のところに案内していただけますか?」

「それではお着替えをご用意いたしましょうか。お休みになっている間もそのままでしたから…汗をかきましたでしょう」

 そういえば、黒鋼竜の領地にやってきて着替えを借りてから、ベッドに休んでいる間もずっとそのままの恰好だった。

 私は有難く申し出を受け入れて着替えさせてもらうことにした。一度部屋を出た彼女が服を用意してまた来てくれたが、別の女性が水の入った桶とタオルを持って一緒に部屋に入ってきた。

 あれ、この方は白金色の長いストレートの髪をしてる。

 光竜だ。

 スーリエ様に似ているような…。もしかして。

「あの、もしかして…あなたはスーリエ様のお姉さま、ですか?」

 そう問うてみると、彼女はにっこり笑ってはい、と頷いた。

「私はハリーの姉、ヘレナと申します。聖銀様にはお初にお目にかかります。ハリーが無作法をいたしておりませんでしょうか」

「ええっとんでもない…私はあの方にはお世話になりっぱなしで。いつも有難く思っています。スーリエ様は心配してらっしゃいましたよ」

 するとヘレナ様は、綺麗なラインを描く眉をハの字にして苦笑し、そっと自らのお腹に手を当てた。

「そうでしょうね…手紙にも返事を出せず、心配をかけてしまっているのはわかっておりました。しかしお腹にタマゴができてからずっと具合が悪くて臥せっていたものですから…」

 つわり?竜にもつわりってあるんだ。

 私が首を傾げていると、もう一人の真竜の女性が説明してくれた。

「同じ竜同士でも、属性が違えば具合が悪くなることもあります。ヘレナの旦那様はとても強い黒鋼竜ですから、ヘレナの力が彼の力に少し負けてしまって、バランスが悪くなってしまったのでしょう。ヘレナは少し前まで自室で臥せっていたのですが、先程出てきてハリー様にお会いし、私と一緒に聖銀様のお世話がしたいと申し出たものですから」

「そうなのですね。お体のほうはもう大丈夫なのですか?」

 私がそう問うてみると、ヘレナ様は頷いてまたお腹を撫でた。

「はい。実は数時間ほど前に、急にお腹の中のタマゴが熱くなりまして。力がみなぎるような感じと申しますか…。そうしましたら、私の体にもその力が巡って、調子がとてもよくなったのです」

 あっもしかして。

 ナギの呼びかけのせい?

 この方のお腹の中のタマゴにもあの光が届いて、黒鋼竜のタマゴになったんだろうか。

 まだ産まれてもいないのに、お母さんに力を分け与えるなんてすごいな。

「ですからもうすっかり起き上がることができて、ハリーとも会うことができました。聖銀様にお目にかかれて光栄です」

「そんな」

 そうか、この人はナギの呼びかけも、散っていった光のことも知らないのだものね。

 ヘレナ様はそれはもういい笑顔で、手にしたタオルを桶の中のお湯に浸した。(続く)

第80話までお読みいただき、ありがとうございます。

鞠絵さんの力のおかげで、ヘレナの体調がよくなって良かったですね。

また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。

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