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第67話。今はもういない姉ナユを想って涙をこぼすナギに、鞠絵は…。

第67話です。

 しばらく泣き続けていたわたしはようやく少し落ち着いてきて、やっとおばば様がわたしを抱き締めてくれていることに気づいた。

 それと同時に遠くから声が響いてきた。

「マ・リエ、マ・リエ!」

「姫様!どうなさったのですか!?」

「マ・リエ殿、大丈夫ですか!?」

 様々な声がぼんやりと聞こえてくる。その中でも、私の意識を戻した声は。

「マ・リエ!しっかりしろ!」

 あっ…ルイ。

 ルイが私を呼んでいる。

 戻らなきゃ。

「…え…ええ、だいじょう、ぶ。私は…戻ってきたわ」

「戻ってきた?」

 ゆっくりと、景色が見えるようになってきた。真っ先に目に入ったのは黒い服。おばば様が着ている服だ。私が泣き止んだので、おばば様は私を離して覗き込んできた。

 彼女の年齢を刻んだ顔が涙ごしにしっかり見えて、私はそれまでの自分がナギと入り混じっていたのだと知った。

「もう大丈夫ですかな?マ・リエ・ナギ様」

 優しい声。

 彼女はハンカチを取り出して、私の涙と鼻水を丁寧にぬぐってくれた。

 あっ、おばば様の胸元もびっしょり濡れてしまっている…ご、ごめんなさい。

「ナギ様と感情が混じり合ってしまったのですね。融合されている者の場合、そういうこともあるのです。お気になさいますな。ナユ様の弟君ナギ様のことは、一族に代々伝わっておりまする」

 そうかナユは…世界から突然消えてしまった弟のナギが、また戻ってくるとわかっていた彼女は、最後の一頭となっても頑張って長生きして、弟のことをこの一族に伝え続けたんだ。

 そう考えた瞬間、せっかくおばば様が拭いてくれた目から、ほろりとまた涙がこぼれ落ちた。

「マ・リエ」

 違う…今泣いてるのは私じゃない。ナギだ。

 そっと自らの内を覗き込んでみれば、ナギはそのローズクォーツ色の瞳からまだほろほろと涙を零していた。瞳の色が溶けて涙がピンク色になり、銀色のウロコの上を流れていくような錯覚を、私は不謹慎にも美しいと思ってしまった。

 そうだよね。一万年の時を超えて、今はもういないお姉さんの名前を聞いたんだもんね。

 無理もないよ。

 ナギは小さな声で、姉上…姉上と呟きながら、遠くを見つめてただ、涙を流していた。

 ごめんね、命を救ってもらったのに、私ナギのこと全然考えてなかった。ナギの家族のこと、元の世界に戻ってみたら一万年も経ってしまっていて、知り合いすら誰ひとり残っていない寂しさのこと、考えたこともなかった。

 融合した私の中でまどろみながら、一人ぼっちで悲しかったよね。

 違う世界に飛ばされてたった一人になった私だけど、私には仲間たちができた。でも元いた世界に戻れたナギは、逆に一人になってしまったんだよね。

『姉上…』

 ナギ、お姉さんのこと大好きだったんだね。

 わかるよ。

 私もお母さんのことが大好きだった。残してきてしまった小さなお仏壇や、お母さんのお墓のことが、今でも気になる時があるよ。

「私は大丈夫。まだ泣いているのは…私ではなくナギです。久しぶりに懐かしい名前を聞いたので…すみません」

 私の青銀色に光る髪を梳いてなだめてくれているおばば様の手が気持ちよくて、私はローズクォーツ色の涙をこぼす瞳を閉じた。そんな私におばば様が、そっと話しかけてくる。

「…マ・リエ様」

「はい」

「実はナギ様には、お連れしたい場所がございます。我らはどうしても、ナギ様に謝罪しなければなりませぬゆえ」

 謝罪?

 黒鋼竜が、聖銀竜であるナギに?

 それは…どういうこと?(続く)

第67話までお読みいただき、ありがとうございます。

黒鋼竜が謝罪したいこととはなんなのでしょう。

また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。

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