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第63話。大人の黒鋼竜が出てきて鞠絵が聖銀竜との混じりものだと知り、ようやく若者たちもそれを知って大あわて。

第63話です。

 その時ダラス様の背中に乗ってやはり鞍にしがみついているルイが、私に向かって叫んだ。

「マ・リエ、帝国軍でやったように、命令してみたらどうだ!?」

 それは…可能かもしれない。

 でも命令なんてしたくない。

 だって私たちはここに、情報を聞くためにお願いに来ているのよ。それなのに、ナギの力を使って命令なんてしたくない。

 でも、このままでは力づくで追い払われてしまいそうだ。そうなったらきっと、チャンスは二度とないだろう。これが最初で最後なんだ。

 それなら…いっそ。

 いいえ…だめよ。

 黒鋼竜に私の声が効くかもわからないのに、信頼関係が崩れてしまうわ。

 私が迷っているうちに、上空でもめているのを何事かと思ったのだろう。下の建物からもう一頭が飛び出してきて、黒鋼二頭のさらに背後で翼を広げた。

 手前の二頭よりもっと大きい。もしかして、この二頭はまだ若いのだろうか。子供っぽかったし。

 この人が大人?だとしたら、話を聞いてもらえるかもしれない。

「何事か。おばば様の具合がよくないというのに…お前たち、何をしている」

 声も低い。二頭の黒鋼竜はあわてて頭を下げて、上司と思われる巨大な黒鋼竜に対し、もごもごと説明した。

「この者たちが、自分たちが乗せてきたのは聖銀様だと言って譲らないものですから…」

「これでも、穏便に済まそうと話していたのです」

 穏便?

 どこらへんが?

 ブレスを吐こうとするのが穏便?

 私と竜の背中に乗った者たちは目を点にし、三頭の真竜は半眼になって、じっとりと黒鋼竜の若者二頭を睨んだ。

「なんだと、聖銀様の?」

「はい、こちらの光竜に乗っている娘だとかで…」

 二頭の若者竜は、大人の竜に向かってそう説明し、やはり私を見ようともしなかった。

「ほう…ん?んん?」

 後から来た大人の竜は、私をじっと見るなりぱっかりと、大きな口を開けた。

「せ…っせ…っせ…っ」

「せ?」

「せ」

「はい?」

「せせ、聖銀様ではないか…っ!!」

「えっ?」

 若者たちは驚きはしたが、すぐに半笑いになってまたまたあ、というように羽ばたいた。ちょっと、凄い風が来るんですけど。落ちたらどうするんです。

 大人の黒鋼は若者たちに向かって振り返り、この大ばかもの!と叫んで、ゴン!ゴン!と一頭につき一つずつゲンコツを食らわせた。

「痛!痛いですよ!」

「目が覚めたところできちんと見ろ!いや、見させていただけ!」

 殴られた頭をさすりながら、若者たちが口を尖らせた。

 やっぱり私を見ようともせずに。

「えっだって、前に来たヤツも偽物だったし」

「この大たわけが!いいから、きちんと、見ろッ!!」

 空中で怒鳴られて、若者二頭は渋々といった感じで私をちらり、と見た。しばし見ていた彼らの黒い瞳が、徐々に大きく見開かれていく。ごめんね、ちょっと面白い。

「せっ」

「せ」

「せ、せ、せ、せせせせせせ」

「っいぎん、さま!?!?!」

「あわわわわわ」

「聖銀様だ…ほんとに、ほんとにいた…」

「たわけ、いらした、だろう!」

 三頭の黒鋼たちのあわてぶりが、申し訳ないけどおかしくて、私は唇の端をぎゅっと引き締めて口角が上がってしまうのを必死で止めた。

「も、申し訳ございません、聖銀様とは露知らず」

「まさか混じりものとしてお戻りになられたとは」

「お…おばば様に!すぐに我らが頭領にお会いください!」

 三頭の巨大な黒鋼竜たちは、わたわたとあわてふためいていたが、やがて大人の竜が若者二頭の頭を掴んで私に向かって下げさせ、自らも頭を垂れた。空中で。

「失礼をいたしました。聖銀様。お連れくださった真竜の方々にもお詫び申し上げます。どうぞ、こちらへおいでください」

 私は大きな彼らに向かって、負けないように声を張り上げた。

「皆も一緒でかまわないでしょうか。わざわざ私を心配して、ついてきてくれた仲間たちです」

「勿論です。ぜひどうぞ」

「本当に、すみませんでした」

「いいですよ。分かっていただけて良かったです。もう頭を上げてください(空中で)」

「はい、ありがとうございます聖銀様」

 私たちは黒鋼竜に導かれて、彼らの住む建物の合間にある広場へと下りていった。

 わあ、広い。体の大きな黒鋼竜が使う場所らしく、広場も建物もとても大きい。

 広場には噴水などはなく、黒鋼竜が離着陸しやすいようにただ広くなっている。けれどよく見れば、その端には小さな花が植えられていて、そよ風に吹かれて健気に揺れていた。

 そよ風?

 ここは高い峰の上。寒くて風が強いはずだ。

 この広場へ下りてくる時、ある時点を通り過ぎた時にかすかな違和感があった。あれは結界を抜けたということなのかな?

 きっと、黒鋼竜と共にでなければ通り抜けられない結界があったのだ。(続く)

第63話までお読みいただき、ありがとうございます。

鞠絵が聖銀竜との混じりものだと知った黒鋼竜たちは。

また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。

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