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第62話。皆で黒鋼竜の領地へ向かう鞠絵たち。そこに出てきたのは…。

第62話です。

「わかりました。では皆さんの準備ができたら、すぐに」

「では明日にでも」

 リヴェレッタ様がそう言って手を挙げる。

「私とダラスでお付きの方々を乗せましょう。鞍をつければ二人でも乗れます。マ・リエ殿はスーリエ殿に乗って先頭を行ってもらい、黒鋼様にその御姿を見てもらいましょう」

「はい」

 その作戦で果たしてうまくいくのか、私を見ても黒鋼が聖銀竜との混じりものだと判断してくれなかったら喧嘩になるんじゃないかと心配だ。

 けれど、もうこうなったら行くしかないよね。

 リヴェレッタ様は見ればわかる、と言っていて、今まで確かに真竜も亜竜もそうだったけれど、神竜とは初めて会うしなあ。

 ああ、ダメダメ。

 肝心の私がこんなに不安になっていたら。

 私は頭を打ち振って、悪い考えを振り払った。

 しっかりしなくちゃ。

 きっと大丈夫、分かってもらえるわ。

 そして翌日の朝、私はスーリエ様に、サラとタニアはリヴェレッタ様に、ルイとダグはダラス様に乗って、炎竜の領地を出発した。

「マ・リエ殿、大丈夫ですか?」

 スーリエ様が私を気遣って、そっと飛んでくれているのが分かって、私は微笑んではい、と答えた。

「リヴェレッタ様の背中と同じように広くて、速いのに安定感があります。問題ありませんから、もっと飛びやすいように飛んでいただいて大丈夫ですよ?」

「ふふ、私の背中のほうが炎殿より乗り心地がいいでしょう」

 スーリエ様は得意気に顎を上げ、ゆったりと翼を動かした。

「こうして飛ぶのが、コツなのですよ」

 そうなんですね。ありがとうございます、スーリエ様。

 彼の両脇にはリヴェレッタ様とダラス様が、それぞれ赤くて大きな翼を広げている。ダラス様のほうが少し大きいようだ。

 その背には、四人ほどが乗れる鞍が首と翼の付け根に回したベルトで結びつけられていて、それぞれ二人ずつが乗っている。

「黒鋼竜様ならばもっと乗れるのですがね」

「そうなんですか。大きい、と言っていましたもんね」

「大きな雄だと、我々の雌の倍近い大きさがありますよ」

「ええっそんなに!?すごいですね」

「黒鋼竜様は神金竜様と聖銀竜様を御守りするために存在していますからね。時にはその体を張って、我が身で御守りすることもあります。体は大きいに越したことはないのですよ」

「そうなんですね」

 それは初めて聞いたなあ。体を張って守るだなんて、黒鋼竜は神金竜と聖銀竜のボディガードってことなのね。すごい。

 そんな話をしているうちに、かなりの高度までやってきた。背中には落ちないよう、また気圧の変化に耐えられるよう結界が張ってあるし、少しは慣れてきたとはいえ、こんな高さまでくるとさすがに緊張する。

「あそこの峰に街が見えますでしょう。その中央にあるのが黒鋼様のお住まいです」

 高い峰の上のほう、開けたところに確かに大きめの街が見えた。高い塀があり、更に上のほうに続いているのが黒鋼の住む領域であるらしい。

 確かにこれは、竜でなければ来ることは難しいわね。住んでいる人たちは少し下のほうとはいえ、やはり翼もつ者たちなのだというし。

 黒鋼竜の住処の近くにやって来ると、いきなり黒いものが建物から飛び出してきて、私たちの進路を塞いだ。巨大なそれは太陽を背にして、威嚇するように翼を広げたものだから、私たちはすっかりとその影に包まれた。

 私たちを乗せてきてくれた真竜のうち、最も大きいのはダラス様だ。彼の二倍まではいかないが、巨大な黒い竜が二頭、私たちの前に浮かんでいた。大きくて、怖い…!

 今までの亜竜や真竜たちとはけた違いの力を感じる。

 そのうちの一頭が、姿に見合う大きな声で吠えるように言ったものだから、私はビクッとして思わず首をすくめた。

「貴様たち、何をしに来た!ここを黒鋼竜の領空と知ってのことか!」

「黒鋼様、聖銀竜様をお連れしたのです、ご覧ください!」

「なんだと!?」

「この御方は聖銀竜様との混じりものであらせられます!おばば殿にお取り次ぎを!」

 これが…黒鋼竜。

 私は恐れ圧倒されながら、感動もしていた。

 とうとう、ここまで来たのだと。

 ナギ、黒鋼竜に会ったよ。ナギ!

 私の中のナギは、黒鋼という単語にうっすらと瞳を開けた。けれど歓迎してくれるとばかり思っていた黒鋼竜たちは、首を打ち振り怒りの声を上げたのだ。

「何を言う、聖銀竜様に混じりものなんかいるはずがないだろう!帰れ帰れ!帰らないと言うのなら、力づくで追い払うぞ!」

「ま、待ってください、彼女を見ていただければ分かると思うのです!」

「どうせ目くらましをかけてるんだろう!この偽物が!ブレスを吐くぞ!?」

 あれ…なんだか黒鋼竜の言動が、子供っぽいような気がするけど…。

「お、お待ちください、どうか…!」

 五頭の大型竜が上空で言い争い続けるのに、私は焦った。黒鋼竜たちは口を大きく開け、その奥にちらちらと炎が揺れ始めるのが見えた。まさか、本当に火炎ブレスを吐く気なの?

 彼らはそのまま私たちに迫ってくる。

 私のことがわからないの?それともここから追い払おうと頭に血が上っているから、見ようともしていないのかもしれない。

 黒鋼竜に押される形で、スーリエ様が少しのけぞる。結界があるとはいえ、私は首の付け根から振り落とされる恐怖に、彼の首元の毛に強くしがみついた。

 怖い。怖い。

 どうしたらいいの。

 どうしたら、分かってもらえるの。(続く)

第62話までお読みいただき、ありがとうございます。

先週の金曜日は体調不良のため、upすることができず申し訳ございませんでした。

鞠絵さんたちは黒鋼竜にわかってもらえるのでしょうか。

また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。

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