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第39話。久しぶりにユニコーンの村に帰ってきた鞠絵の夕飯にと、ミシャが天ぷらを作って振る舞ってくれる。タニアも大喜び。

第39話です。

「さあ、どうぞ」

 大きな水竜の首のところに、私が座る椅子が括り付けられている。安全用にベルトもついてるし、掴まるところもちゃんと用意してくれていて、これなら空中でも安心していられそうだ。

 でもこれって…まるで遊園地のジェットコースターの椅子みたいだな、と私はちょっと可笑しくなった。

 平たくなってくれたエデルに断って椅子に登り座ってみると、水色のたてがみと金色の角がすぐ近くでキラキラしていて綺麗だった。

 銀ならぬ水色の竜の背に乗って、私は水竜の砦を出発した。ユニコーンたちも風魔法を併用して疾走してついてくる。タニアは虎の姿になれば相当なスピードで走れるけれど、ユニコーンと違ってそう長くは走れないので、私の後ろに椅子をつけてもらってヒト型になり一緒に乗っていた。

 エデルはユニコーンたちとスピードを合わせて飛んでくれて、途中の街と以前行商で立ち寄った街で一泊しつつ、なんと二晩でユニコーンの村へと辿り着いた。すごい、早い。

 皆で村長のところへ報告に行き、少し休憩したエデルが砦へ戻っていくのを見送ってから、私はタニアと一緒に自分の家に戻った。

 ああ…疲れたなあ。

 ここが今の私のおうちなんだ。

 帰ってきた、って感じがする。なんだかほっとしたらお腹がすいたなあ。でもこれから何か作るにしても、材料が何もないし。

 タニアには悪いけど、パン屋さんに行ってパンを買ってきて食べようかな。

 ぐう~と鳴るお腹を抱えてそんなことを考えていたら、ドアをノックする音がした。

「マ・リエ?いる?」

 ミシャの声だ。私ははあい、と返事をして、ドアを開けた。

 そこにはやっぱりミシャが立っていて、その両側には彼女の長いスカートにくっついたキアとケリーがいた。

 彼女たちとは夕方ユニコーンの村に帰ってきたとき、皆が総出で出迎えてくれたから会ってはいるけど、私はもう一度きちんと挨拶をした。

「ミシャ、久しぶり。キアとケリーも元気そうね、良かった」

「マ・リエ、あなたもね。ずっと心配していたのよ」

「あたしもマ・リエおねえちゃんに会いたかった!」

「おれも」

「まあ、嬉しいわ。ありがとう。私も皆にずっと会いたくて、寂しかったのよ。それに…キア、ケリー、あなた達にはぜひ御礼を言いたいの。ありがとうね」

「?おれたち、何もしてないよ?」

「あたしも」

「うん。でも、あなた達は私が苦しい時、心の支えになってくれたの。だからありがとう」

「?そう?」

 ハテナマークをたくさん飛ばしている子供たちの頭を撫でて、ミシャが微笑んだ。

「この子たちがあなたの役にたったのなら嬉しいわ。ところでマ・リエ、今晩の食事を用意したのだけれど、うちで一緒にどうかしら?」

「えっ」

 それは願ったり叶ったりだけど…ザインに断りなしでお邪魔しちゃっていいのかな?

 そう聞こうとしたら、ミシャが先に話してくれた。

「ザインもそうしなさいって。ね、ご馳走を作ったのよ、ぜひ食べにきてちょうだい。そこの雷虎の…タニアさんも一緒に」

「タニアでいいです。姫様、今日はお言葉に甘えましょうよ」

「…そうね。ありがとうミシャ、正直今日はもう疲れていて、何の支度もできそうになかったの。助かるわ。それではお夕飯を頂きに伺わせてもらうわね」

 タニアも連れて行ってみるといい香りがしていて、戸口でザインが笑顔で出迎えてくれた。

「お帰りマ・リエ。疲れたろう、今夜はミシャが作ったメシを食べて、ゆっくりしてくれ」

 あら、この匂いは…。

 テーブルの上に並べられていたのは、なんと天ぷらだった。

「ミシャ…!」

「私だって主婦ですもの。いつまでも怖がってなんかいられないわ。子供たちにも食べさせてやりたくて、これでももう何回か作ったのよ。街から買ってきた植物油を、あなたが分けてくれたから」

 あれは天ぷらを作れって意味じゃなく、ミシャが欲しがったから分けただけなのだけど…そう。彼女なりに、頑張ったのね。

 あのトラウマを乗り越えたなんて、親ってやっぱりすごいわ。

「キアも怖くなかった?」

 そう聞いてみると、キアは手を後ろに組んで少しもじもじしたが、やがてこくり、と頷いた。

「うん。最初は怖かったけど、お母さんが天ぷらを作るって言ったらお鍋には近づかないようにしたの。ほんとはマ・リエおねえちゃんがいないのに、またお母さんに何かあったらって思ったら怖くって…お母さんが心配だったから、天ぷらはやめてって言ったの。でもお母さんが大丈夫、作れるわって言ったから…」

「そう。キアも頑張ったんだね、偉かったね」

 金色の頭を撫でてそう誉めると、キアはえへ、と照れくさそうに笑ったものだから、あまりにも可愛くてぎゅっと抱き締めてしまった。

「マ・リエ、キアばっかりずるい。おれだってマ・リエがいない間、いろいろ頑張ってたんだからな!」

 ケリーがそう唇を尖らせたので、私は笑ってケリーも一緒に抱き込んだ。三人でぎゅうぎゅうしていると、横に立っていたタニアが私に抱き着いてくる。

「私も!私も混ぜてください!」

「きゃっタニア、ちょっと…苦しい!苦しいから離して!」

 四人できゃあきゃあしていると、ミシャが噴き出しながら私たちを促す。

「さあさあ、もうそのくらいにして。せっかく作った天ぷらが冷めてしまうわ」

「あっ!そうだった!天ぷら食べなきゃ!ね?」

「姫様、天ぷらって何ですか?」

「食材に粉とかつけて脂で揚げたものよ。今回は植物油だそうだから、前に豚の脂で作ったものよりさっぱりしていて食べやすいと思うわ」

「いい匂いですもんねえ~」

 くんくんと鼻を鳴らすタニアも一緒に卓を囲み、揚げたての天ぷらをひとくち。

 サクッ、と口の中で音がして、ふわあといい香りが鼻に抜けた。美味しい。これはお芋ね。

「んんん、美味しいです~天ぷら、最高です~」

 タニアが頬を膨らませて大喜びで食べている。私は木の芽や魚も食べてから、うん、と頷いた。

「素晴らしいわミシャ。どれも外側はカラッと揚がってて、油っぽくもないしとてもいいお味。腕を上げたわね」

「まあ、天ぷらをマ・リエに誉めてもらえるなんて嬉しいわ。タニアもありがとう。たくさん食べてね」

「おかあさんの天ぷらおいしー!」

「天ぷらばかりではなく、他の料理も食べるんだぞ」

 サラダやさっぱりした肉料理、具材たっぷりのスープなども用意されていて、どれも料理上手なミシャらしく素晴らしい味だったものだから、私もタニアもお腹がパンパンになるまでいっぱい食べてしまった。

「ああ…美味しかった。ご馳走様でした」

「ご馳走様でした、ミシャ」

「二人とも、よく食べてくれて嬉しいわ。キアとケリーもいつもよりたくさん食べたわね。やっぱりマ・リエがいてくれると楽しくて、食が進むわね。今日はタニアも来てくれているし」

「明日からは自分で作ろうと思うけれど、今晩は本当に助かったわ。ありがとうミシャ、ザイン。キアとケリーもね」

「あたし、マ・リエおねえちゃんと一緒にごはん食べられて嬉しかった!」

「おれも。なあ、また明日も食べに来なよ」

「そんなに毎日は甘えられないわ」

「うちは構わないけれど…」

 片づけをしながら皆でそんな話をしていたら夜も更けてきて、キアとケリーがあくびを噛み殺し始めたので、私たちは御暇することにした。

「今晩は本当に楽しかったわ。それじゃお休みなさい」

「お休みなさい」

「姫様、すごいご馳走でしたね!私、初めて食べる料理ばかりでした!」

 タニアは大喜びで、膨れたお腹を撫でている。帰路につきながら私たちは、あれも美味しかった、あれも…と夢中になって話をした。天ぷらは私のもといた国のものだけど、あとはユニコーンの村の郷土料理ばかりだったから、タニアには珍しかったろう。

「マ・リエ!帰ってきたのね」

 家に帰りつくと、隣の家からサラが出てきた。少し遅れて、反対隣の家からはルイが顔を覗かせる。

「マ・リエ。どこに行っていたんだ。帰ってきたばかりだっていうのに、こんな夜更けまで…一言くらい、声をかけていってくれ。心配するだろう」

「ごめんなさい、ルイ」

 それをまあまあ、となだめたサラが、私が持っていた灯りを受け取ってくれた。

「声がしたから出てきたのだけど」

「オレも」

「サラ、こんな夜更けにどうしたの?」

「本当は今夜夕食を一緒にどうかと思っていたんだけど、聞きに来たら家の灯りが消えていたものだから。どこかに行っていたの?」

「うちもだ。うちは父さんと二人だから大したものは作れないが、どうかと思ってな」

「そうだったのね。二人ともごめんなさい。実はミシャのところでお夕飯をご馳走になってきたの」

「まあ、それならいいのよ。うちはまだ作る前だったし。ルイのところもそうでしょ?」

「ああ」

「じゃあ明日の朝はうちがサンドイッチでも差し入れに来るわね」

 じんわりと、人の温かみが身に染みた。皆、なんて優しい人たちなんだろう。私の家に何も食料がないことを知っていて、誘いに来てくれたんだ。

 明日の朝ごはんのことだって、本当に助かる。買い物に行くにしても、朝ごはんはどうしようか悩んでいたところだったから。

 私は今までも、色々な人に助けられてきたからこそ、こうしてやっていけるんだなあと、しみじみ思った。

 この家だって、私がいない間サラの母親のシルやミシャが掃除して整えておいてくれたからこそ、こうしてまたすぐに心地よく住めるんだし。

 そうだ、シルにも明日、ちゃんと御礼を言わなくちゃ。

 お世話になったルイのお父さんのルードにも。ダグは親御さんからは独立して住んでいるから、ご挨拶はしなくていいかな?

 灯りをサラが持って照らしてくれていたから、難なくドアの鍵を開けられた私とタニアは、サラとルイに御礼とお休みを言って家屋に入った。

 さすがに二人分の寝床を作るにはもう遅くて、私たちは一つのベッドで二人で眠った。タニアは虎だけれど女性だし、私は小柄だからそれでも十分だった。(続く)

第39話までお読みいただき、ありがとうございます。

久しぶりの天ぷらは美味しいでしょうね。私も食べたいです。

また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。

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