第349話。マ・リエの歌によって、親子竜三頭の邪気ははらわれた。両親の姿は立派な炎竜に戻ったが、子竜の姿は…。驚きあわてる子竜に対して、マ・リエはもう一度歌うか迷うが…。
第349話です。
私の歌とともに、輝く浄化の光が周囲に広がっていった。
私の背中に広がる、大きな純白の翼の中から、ヴァイオリンとフルートの音色が響き渡り、私の力を更に増幅してくれている。
地上に広がる、オーロラのような光のカーテンが私から広がっていき、三頭の親子の竜を包み込んだ。そのカーテンの光は親子ばかりでなく、輝きながらふわふわと丘陵地帯全体に広がって、その先の森や川、草原や町にまで流れてゆく。
まるで大地が、光の祝福を受けているかのようだった。
その場にいた竜や人々、動物や虫、草木に至るまで、すべてが輝いているように見えた。
光のカーテンに包まれた者たちは、その心地よさにうっとりと瞳を閉じ、草木ですらゆらゆらと、喜びに揺れているようだった。
やがて歌が終わり、光がおさまると、皆はふうっ…と、意図せずため息をつく。
これで、三頭の親子竜の邪気ははらわれた。
そう、見守っていた炎竜たちは信じ、彼らを見て…はっと息をのんだ。
邪気の消え去った両親の竜は、もとの鮮やかでムラのない真紅の体に戻っていた。
しかし。
子竜の体は、死にかけた珊瑚のような、ほとんど濃い部分のない白っちゃけた薄い桃色だったのだ。
それも、皮膚のほとんどが、濁った白に薄い桃色があちこちに散らされているようなまだらで、とても炎竜には見えなかった。
真竜としても、どの種族かわからないような姿だ。子竜がどんな扱いを受けていたのかよくわかるその姿に、炎竜たちは痛ましげな視線を向けた。中には涙を浮かべて目を背ける者すらいた。
炎竜の長、リヴェレッタ様が思わずつぶやく。
「なんと…ひどい…」
「えっ…」
子竜は己に向けられる視線と、リヴェレッタのその呟きに、初めて己の姿に気が付いたようだった。
「あっ…ぼく…」
子竜は己が体と、両親やその仲間たちとを見比べて、戸惑ったように眉を寄せた。自分が親や仲間たちと全く違う姿であると、気づいたのだろう。
ざわざわと、炎竜たちの中にざわめきが広がってゆく。
「ああ…なんということだ…」
「こんなのって…こんなのって」
「あまりに、ひどい…」
「そんなに、ひどいの? ぼくの体、そんなに変なの?」
おろおろと、子竜が両親を見上げる。救いを求めるようなその視線に、両親は黙って我が子を抱きしめて泣き出した。
全身で我が子を守るように。その姿を隠すように。すべての視線から守るように。
私…失敗したの?
この子をちゃんとした炎竜の姿に、戻してあげられなかった。
こんなことは初めてで、混乱する私の肩を、ルイの鼻づらが優しく撫でる。
どうしよう、そうだもう一度歌ってみたら?
今度は違う歌詞で…そうしたら、元の炎竜の姿に戻してあげられる?
「マ・リエ、よく見るんだ」
ルイが力強い言葉でそう語り掛けてくる。(続く)
第349話までお読みいただき、ありがとうございます。
ルイはマ・リエに、何を見ろと言ったのでしょうか。
また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。




