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第344話。炎竜たちが何故ここにいたのかということを語る、炎竜の長リヴェレッタ。邪竜のもとになっていた子竜の父竜が、マ・リエにとある願い事をする。それに驚くマ・リエだったが…。

第344話です。

 リヴェレッタ様は、頭を上げることなく淡々と答えた。

「何か我等にも手伝えることはないかと、こちらに控えておりました。あの子の両親にも、仲間の炎竜たちにも、子どもがここにいるかもしれないと話したため、来られる者は全員こちらに来ております」

 そうだったのね。それで、こんなにたくさんの炎竜たちが来ていたし、あの子が地面に激突するのも防げたのね。

 それはとても助かったわ。

 とりあえずほっとする私に向かって、続けて話し始めたのは子竜の父親だった。

 それも、とんでもないことを。

「聖銀様…どうか、お許しください。あのような暴挙、さぞお怒りのことと存じます。けれど…どうか、どうかお許しいただけないでしょうか」

「えっ?」

 父竜は続けた。

「このたびのこと、タマゴを奪われた私どもに責任があります。死をもって償えとおっしゃるのなら、あの子ではなく私の命でお許しください」

 なっなに、何を言っているの?

 父竜のあまりの発言に、わたわたと焦るばかりで言葉が出てこない私に、ルイが静かに話しかけてきた。

「マ・リエ」

「えっなに?」

「もしかしたら…彼らはあの子竜が乗っ取られて、操られていたことを知らないんじゃないか?」

「あっ…」

「あの子竜がただ、マ・リエを襲ったと思っているんじゃないか?」

 な…なるほど、それならリヴェレッタ様たちの言葉もわかるわ。

 炎竜たちは、ここから私たちと邪竜の戦いを見ていたのだから、子竜が邪気をまとい、只人に何か悪いことを吹き込まれて私を襲っているように見えても仕方がないわよね。

 そして…私が怒って、ここまで追いかけてきたのだと思っているのだわ。

 ちがうわ、それは違うの。

 私がそう言葉を発する前に、その声は聞こえた。

「…もう…いい。…殺し…てよ」

「えっ?」

 物騒な言葉ではあったが、その声はとても弱々しかった。

 まだ大人になりきっていない、子どもの声。

 けれどはっきりとした意思を感じさせる声だった。

 目線を上げると、炎竜の母竜に抱きかかえられた、邪気にまみれた子竜が、意識を取り戻していた。

 開いたその瞳は、百年近くも邪気の中に沈められていたとは思えないほど、美しく澄んでいた。

 さっきの声は、きっとこの子の声なんだわ。

「何を言うの」

 子竜に向かって進み出る私が口を開くより前に、子竜を抱き締めた母竜が泣きそうな声で言った。

「やっと…やっと会えたのに…」

「そうとも、これからじゃないか。家族みんなでようやく、一緒に暮らせるんだ」

 地に伏せていた父竜も、体を起こして子竜に駆け寄り、その肩を抱く。

 両親ともに、子どもが邪気まみれなのも、それが己に移ってくるのも、まったく気にしていないようだった。

「か…ぞく、って、なに?」

 たどたどしい口調で、親の口にした家族という言葉を綴る子竜は、ゆっくりと首を横に振った。(続く)

第344話までお読みいただき、ありがとうございます。

家族という言葉すら知らない子竜は、このあと…。

また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。

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