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第340話。暗黒神竜エレサーレを痛めつけていた、金の鎖を操っていた皇帝の杖についた魔石から、苦し気な声が聞こえてきて、マ・リエは驚く。石の中に封じられた、その声の主の訴えかけてくることとは…。

第340話です。

 ルイが口でくわえた鎖が、まるで意思を持つかのようにのたうち回り、ルイは思わず鎖を口から離した。すると鎖は邪竜と、その周りを回っているエレサーレだったすすの方に向かい始めたのだ。

 鎖の端が結び付けられていた杖もまた、強い力で引っ張られたが、マ・リエがしっかりと抱きしめていたため、彼女の手元で引き留められた。

 ルイはあわてて鎖をくわえ直して引き戻そうとする。鎖は蛇のようにのたうち回って抵抗した。

「な…なんで?」

 鎖を操っていたはずの邪竜の触手は、マ・リエの歌で浄化され消えているはずだ。それなのに何故、鎖は動こうとするのか?

『…シ、テ…』

 杖を抱え、ルイと一緒に鎖を引っ張っていたマ・リエの頭の中に、その声が響いてきて、彼女は手を止めた。

 思わず声がしてきたと思しき杖を見ると、その声は杖のてっぺんについている黒い魔石から響いてくるようだった。

『…シ、テ…。コロ、シテ…ワタシ、ヲ…』

「魔石の中から声が…」

「えっ? なんだって?」

「声がするわ。あなたは誰? もしかして、石の中に封じられているの?」

 マ・リエの声が聞こえたのか、石の中から途切れ途切れの言葉が返ってきた。

『…ディ…ガリ、アス…ワタシ、ハ、ディガリ、アス…』

「えっ?」

『コロシ、テ…コノママ、デハ…アレニ、アヤツラレ…ミナ、コワシテ、シマウ…』

「あなたは邪竜に…皇帝に操られているの?」

『ワタシ、ガ、コウテイニ…ナッタ、トキ…アレニ、カラダヲ、ウバワレタ…ソシテ、ハハヲ、キョウダイヲ、コノテで…コロシ、タ…』

「あなたが皇帝になったとき、ですって?」

『ソウダ…イクサデ、オオクノ、イノチヲ…ウバッタ…モウ、モウイヤダ…コレイジョウハ、モウイヤダ…タノム、ワタシヲ…コロシテ…アヤツラレル、ワタシヲ…コロシテ…』

 魔石の中にうっすらと、動く影のようなものが見えた。

 マ・リエは息をのんだ。

 まさかそこにいるのは…本当の、皇帝ディガリアスの魂だというのか?

『リュウニ、ノリウツルトキ…アレハワタシノ、タマシイヲ…コノイシニ、ウツシタ…コノクサリをアヤツル、タメニ…』

「なんてこと、そうだったのね」

『ツエノ、ウロコ…シンキンリュウノ、ウロコデ…クサリ、アヤツル…』

 苦しそうに、石の中の影はマ・リエに言葉を伝えた。

 影が封じられている魔石の下についているウロコは、神金竜ヴァレリアのものであること。

 そのウロコを扱える者は、神金竜ヴァレリアの血を引く者だけであること。

 黄金の鎖は、エレサーレを攻撃する前は、まだ人間である体を邪気から守るために使われていたこと。

 その鎖を操るため、本来の皇帝ディガリアスの魂は、邪竜の意思をこめた邪気のトゲの杭を食い込まされ、石の中に封じられたこと。

 つまり、本来の皇帝ディガリアスは、神金竜ヴァレリアの血を引いていることになる。

 それにも驚きだったが、彼が抗えないと知ったマ・リエの胸の中に、怒りとともに悲しみがふつふつと湧き上がってくる。(続く)


第340話までお読みいただき、ありがとうございます。

本来の皇帝の苦しみを聞いたマ・リエは、どうするのでしょうか。

また次のお話もお読みいただけたら嬉しいです。

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